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隠しきれない02

「あーきたきた!こちらでーす」

「おつかれさまです」

「じゃあまた乾杯しましょうか〜」

とりあえずビールを2つ頼んで、席に着く。
隣室で泊まっている花さんには、行くとき声かけてもらえますかとお願いしていた。

私にはこういうところがある。
ひとりでどこにでも行けるのに、他人に任せてしまうズルいところが。


ホテル内のバーなので、おおよその時間を決めて直接お店に集まり、自由に飲み始めるスタイルになったようだ。

花さんと私を含めて6人。
それぞれが頼んだお酒と少しの食べ物。ポテトやアヒージョなども並ぶテーブルで、もっぱら減っているのは枝豆やナッツの盛り合わせ。

もっぱら会話を盛り上げてくれる同僚の向かい側に座って、ひと安心している自分がいる。






先月の納涼会が発生した時点で軽く話には聞いていた。
花さんは酔うと他人の恋バナを聞きたがるらしい。
まぁ若い女性が集まるとそうですよね〜なんて幹事のおじさんがでっぷりした腹で朗らかに教えてくれた。

だからなんとなく予想はついていたが、花さんの鉄板らしい元カレのダメっぷり具合について一通り盛り上がった。

恋バナなんて10年以上も遠ざかっているので、話を振られればいつもの、妹の婚活事情について話すことにしている。

私より可愛らしい妹の、婚活アプリでの出会った瞬間からこれはないなと思った人の特徴や、いい感じに進んでいた人から元カノとよりを戻すことになったから…といった絶対嘘やろと伝わってくるやんわりお断りの連絡がきたときの苛立ち。

話をしているうちに、人ごとだからこそ楽しめる軽やかな笑いに包まれた。


と本当か嘘か分からないような会話で盛り上がっていると、視線を感じる先をちらっと盗み見てしまった。
…正確には、フォンさんがこちらを見ている姿を。


目があって彼は微笑もうとしたようだったが、困ったような表情をしているような頬の動きで、うまく笑えているとは思えなかった。



よく目が合ってしまうなと思っていた。

花さんと一緒にお店に入ってきたとき。ビールを手にして席に着いたとき。何か食べますか、ナッツいただきます、なんて会話をしているとき。
そのあとも、饒舌に話をしている花さんや同僚に相槌を打ちながら笑っているとき。

見ないようにしているのに、視線を感じずにはいられないのだ。
するとまだ見てるかと気になり、また目線を向けてしまう。




(たぶんつづく)

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