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隠しきれない01

彼女がはじめて挨拶に来たときのことをよく思い出す

「精進します」
と言っていた
たぶん緊張していたんだと思う



「自分あの…中国の方の…」
「いや…あ…フォンです、よろしくお願いします」

みたいな挨拶をしたと思う
ぶわっと顔が熱くなったことしか覚えていない


あれから2年経って同じ場所で働くようになった


先月の納涼会の前、明日の飲み会行くんですか、とつい声をかけてしまった
いやたぶんハッキリ聞き取れるほど言葉にできなかった
「明日」も「飲み会」ももごもごしてしまっただろうか
彼女の聞き返す表情につい、あ…あの来月の四ツ谷の勤務行くんですか、と言い直してしまった

パッと明るくなった彼女の表情を見て、やはり飲み会のことは切り出さなくて良かった、と胸をなでおろした

「来月の四ツ谷への出勤日、たくさんシフト出しちゃいました」
と笑っている
勤務地はどこのキャンパスだとか、朝早いので勤務時間を調整もらったとか、近くに何があるから寄りたいとか、ひとつ話題を降ると三倍以上の回答が返ってくる
そのひとつひとつの言葉に返答したいと思っているのに、どうしても苦笑いみたいな反応しかできない


飲み会のことは聞きにくい
今年度はじめての職場での飲み会に、彼女が来たら話がしたいなんて思っている心の内が見透かされてそうで

けれど明るくテンポよく言葉を投げかけてくる彼女と、楽しげに会話する自分の姿が想像できない


(たぶんつづく)



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