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たったひとつの冴えない武器

小説をちゃんと書き始めて、丸1年が経ちました。

ほんの数文字で伝えられる言葉を物語にのせて、何十万字もかけて伝える行為は、とんでもない所業です。小説家って、正気じゃないと思います。

言葉ではない芸術、言葉がなくても伝わる信頼関係、とても素敵なことだと思う。言葉がいらないことは、なんだかとても善いことのように描かれがちだ。

でも私たち物書きは、言葉にしか頼れない。世の中に張り合う術が、これひとつしかない。あるときは頼りなく無力にも思える、ただの言語。たったひとつの冴えない武器で、私たちは戦っている。

ときに人を傷つける刃になり、ときに心をほぐす温もりになり、ときに涙を流させる情景にもなる。

言葉のせいで喧嘩して、言葉で気持ちを伝えて仲直りして。言葉で愛を伝えて、言葉で別れを告げた。

いつのまにか、そんな千変万化の魅力に取り憑かれていた。

広義でいえば、芸術も文学も、漫画も小説も結局はおんなじだ。伝えたいことを伝えるための手段が違うだけ。

画家にとっての筆が、演奏家にとっての楽器が、私にとって言葉なのだ。今日も言葉に依存して、言葉のために生きていくよ。

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