ユタカ窯5

一点物を超えて唯一無二のデザインを目指す意味

以前こんな記事を書きました。

自分がデザインや企画をした作品やサービスがUIやUXを超えた価値をもたらすことを追求しているといった内容です。

その他に僕が目指すデザインがあります。

それは

一点物をさらに超えた「唯一無二のデザイン」を目指すことです。


一点物と唯一無二のデザインの違い


僕が考える一点物唯一無二のデザインの違いは

一点物:世界に1つしかないが、誰の手に渡ってもおかしくない物

唯一無二のデザイン:世界に1つしかなくかつ特定の人のためのデザイン


なぜ唯一無二を目指してきたのか


世界的に問題となっている大量生産大量消費の問題。そして貧富の差の拡大。体験を伴ったデザインの重要性。など。

多くの要素を複合的に考えると、極端にいえば世界は超大量生産その人だけの価値に分かれるのではないかと予測してきました。

大量生産された物は需要があれば安価で人々の手に渡ります。

その人だけのためになる価値はオーダーメイドとなるために高価な物として扱われる可能性があります。

LEXUS DESIGN AWARD 2017では「YET(二律創生)」をテーマに、その2つ(超大量生産とその人だけの価値)を繋ぐ提案をし、陶芸というジャンルを使って2つの価値を繋ぐ新しい社会を創造しました。

大量生産され破棄される予定の陶器を移動可能な陶芸窯で焼き直すことによって一点物の陶芸作品を作り出す。移動可能な陶芸窯を誰でも使えるようにすることで、その一点物作品は焼き手によってデザインが変わるため「唯一無二」の領域へと進化する。

有料ですが、その時のプレゼンテーションを掲載しています。

さらに僕はデザインを自然の力に任せることによって「唯一無二」を可能にする手法を自分のものにしてきました。

焼く人が入れる燃料のタイミング、燃料の種類、天気、焼く場所の標高、焼く物、窯の状態(使うたびに焼け方が変化します)など、人知を超えた条件を受け入れたデザインを許容することで、大量生産された破棄される(価値がなくなってしまった)陶器を2度と作ることができない一点物にします。

そして陶器を焼くという体験をユーザーにしてもらうことで、一点物が唯一無二のデザインへと進化します。

陶器の所有者に陶芸作品を自ら焼いてもらうことで唯一無二の作品作りを可能にする(体験を伴うプロダクト)

自然の力は人知を超えた条件を人に与える

同じ陶器を、同じ日に、同じ時間、同じ燃料を使って焼き直したにも関わらず、窯内部の陶器の置く位置や別の窯で焼くだけで全く違うデザインが生み出される

この体験をされたお客様だけの陶器作品が生まれ、体験を通して自分自身で作った「2度と作ることのできないデザイン」の陶芸作品をお持ち帰りいただきました。


陶芸作品以外でも


この作品は結婚指輪とその置き物のデザインのご依頼でした。

ご夫婦となられるお二人はカメラ教室で出会ったというお話を聞き、旦那様が使わなくなり破棄予定だったカメラのレンズを高熱で溶かし、指輪の石にするデザインとしました。

カメラのレンズ

東京都美術館のセレクトショップでも売られた和紙の花の指輪(雨上がりの風景)にレンズを溶かした石を使用

置き物には、薄くスライスした木の裏に2人が好きな色を着色し、色が組み合うように構造をデザインし「支え合い」を表現

奈良の鉄工所に手作りの支柱を作っていただき組み合わせる

完成品


常にデザインした物が誰にでも価値が生まれるのではなく「その人が持つことに意味がある」ことを目指しています。


常にデザインという領域は社会に大きな影響を受けます。

ただデザインをするということではなく、社会を鮮明にし(解像度を上げ)デザインすることが重要であると考えています。


竹鼻良文/TAKEHANAKE代表

TAKEHANAKE design studio HP

TAKEHANAKE BRAND


サポートありがとうございます。もしよろしければサポートを検討された金額の半分をご自分の大切な方へお使いください。サポート金額と共にお気持ちを受け取らせていただきます。