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【焦れずに】天皇杯 3回戦 鹿島アントラーズ-栃木SC レビュー

戦前

鹿島アントラーズ

・現在リーグ戦では7位

・リーグ戦では前節、北海道コンサドーレ札幌に4-0で快勝

・札幌戦から中9日で迎える

・五輪代表で上田綺世と町田浩樹が離脱

栃木SC

・現在リーグ戦では17位

・リーグ戦では前節、FC町田ゼルビアと1-1のドロー

・町田戦から中3日で迎える

・直近加入したオビ・パウエル・オビンナ、黒崎隼人、豊田陽平らは今節に出場できず

スタメン

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鹿島は札幌戦から2人変更

・センターバックに林尚輝、2列目に和泉竜司を起用

栃木は町田戦から8人変更

・柳育崇、吉田将也、上田康太が連戦で出場

栃木が引き込むカオス

栃木のスタイルはいわゆるストーミングと呼ばれるものである。ボールロストを恐れずに素早く相手陣内へとボールを運び、ボールを失えば猛烈な勢いで奪い返しにかかって、そこからショートカウンターでチャンスを作り出そうと窺う。この栃木にとっては日常となっている形を、彼らは天皇杯の舞台でもそのままぶつけてきた。

というわけで、序盤からワントップの長身フォワード小堀空に向かってガンガンロングボールを蹴って、それでボールロストして鹿島のボール保持になると、どんどんプレッシングを仕掛けていく栃木。栃木としてみれば、この出足の速さでペースを掴みたかったのだろうし、なんならこの展開で先制点が奪えれば理想的だったはずだ。

これに対しての鹿島。栃木の勢いにやや面食らった部分もあったようで、自陣でのボールロストからシュートまで繋げられるシーンも見られたが、相馬直樹監督になってからはそこまでポゼッションにこだわりを見せていないこともあり、プレッシングが来れば先のことを考えずに躊躇なく蹴っ飛ばして回避していた。そのため、試合序盤はロングボールの応酬となっていた。

攻めあぐねる鹿島

15分くらいから試合は徐々に落ち着きを見せ始める。鹿島が栃木のプレス強度に慣れ始めたのもそうだし、ディエゴ・ピトゥカに加えて2列目の白崎凌兵や和泉が降りて組み立てに参加することで、数的優位を確保できるようになり、確実に繋げるようになったのが大きいだろう。これを見て、栃木はプレスを控えて、自陣に4-4の守備ブロックを構築するようになる。出来るだけ高い位置で奪うための守り方から、相手に自陣深くまで侵入されても最後ではね返せればOKという守り方に変化していったのだ。

ということで、試合はボールを持って攻める鹿島と守る栃木という構図が明確になっていく。ピトゥカが配給役となり、中央のスペースに白崎、和泉、土居聖真が顔を出してボールを引き出し、そこからの崩しを目論む鹿島。ピトゥカは今節もピッチ全体を走り回り、あちこちでボールに関わっては、局面を変えていた。ピトゥカのところで変化をもたらせられるのは大きいが、ピトゥカがかなり自由に動くのでその辺のリスクマネジメントをどう考えているのかは気になるけれども。

ただ、ここから鹿島は攻めあぐねていく。栃木は完全にゴール前にバスを置いた守り方となり、ブロックの手前で相手にボールを動かされることは許容しながらも、ブロックに侵入してきた場合は激しく寄せて自由を奪っていった。また、センターバックの柳と小野寺健也のコンビが堅く、エヴェラウドへの警戒も怠ることなく、中央へのロングボールはこの2人が徹底してはね返していた。

勝負に出る栃木

鹿島が攻めあぐねる展開が続き、前半を折り返して後半に入っても情勢は変わらなかった。そんな中、栃木が58分に動く。矢野貴章、森俊貴、面矢行斗というリーグ戦で主力を張る3選手を投入したのだ。

58分~

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栃木にしてみればここまで防戦の時間が長くなっているが、スコアレスで試合を進められているのは上出来。問題はここからどう勝利に持っていくかということで、また中3日でこのあとにリーグ戦を控えていることを考えると、出来れば90分で決着をつけたい。なので、比較的早い時間で主力3人を投入して、森と面矢のいる左サイドから崩して1点を奪いにいく。そうした狙いを感じさせる交代だった。

引き起こした「事故」

栃木の交代によって一発の脅威度は増したものの、鹿島が攻めて栃木が守る流れは変わらない。鹿島は極端に焦れている感じではなかったが、残り時間を考えるとそろそろゴールを決めておきたい時間帯になってきていた。

69分~

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鹿島が攻め筋を変えたのは後半の飲水タイム明けで、2列目の両サイドに松村優太とファン・アラーノを投入してからだった。これまで中央を使いながら崩す意識が高かった鹿島だが、この時間帯から松村とアラーノが中央で受ける動きよりもサイドの裏を突く動きが増え、そこから手数を掛けずにエヴェラウドへのクロスで相手ゴールに迫る回数が増えていく。

シンプルなクロスはそれ自体の成功率としては決して高くないが、ゴール前にシンプルに迫れることで事故を引き起こせる可能性は高まるし、また時間の経過と共に栃木の守備陣が徐々に疲労の色を見せて寄せが甘くなってきたことで、クロスをあげられる時間とスペースが確保できるようになっていったというのもあるはずだ。

試合が動いたのは80分だった。レオ・シルバからのパスを右サイドで受けた常本佳吾がふんわりしたクロスをゴール前に送ると、ファーサイドで合わせたのはエヴェラウド。栃木は常本へのケアが甘くなったのもそうだが、このシーンだけエヴェラウドのマークを離してしまい、対応しようとしたキーパーの川田修平も触ることが出来なかっただけに、痛恨だろう。逆に鹿島はクロスを送り続けることで狙っていた事故を引き起こすことに成功した形となった。

試合はこの1点が大きかった。リードした鹿島は落ち着いて試合をクローズすることに注力できるし、逆に栃木は取り返そうにももうその体力は残っていなかった。90分には栃木陣内深くに送られたロングボールを途中出場のアルトゥール・カイキが粘って繋ぐと、最後はアラーノの折り返しをエヴェラウドが決めて追加点。その2分後には、左サイドを崩すとピトゥカのクロスにファーサイドでカイキが詰めて3点目。カイキは嬉しい移籍後初ゴールとなった。

そして、試合はタイムアップ。終わってみれば3-0とした鹿島が、ラウンド16に進出。札幌を破って勝ち上がったV・ファーレン長崎と対戦することとなった。

まとめ

攻めあぐねたのは事実だが、結果として90分で勝ち切るというミッションを達成したことを今節の鹿島としては評価すべきだろう。焦れてしまいがちな展開の中で自滅することもなく、どこかで1点取れれば勝てると割り切って試合を進め、結果その1点をもぎ取ったのだから、そのことにケチをつける必要はない。

相手の守備ブロックを崩すのに苦労したのはピトゥカ以外にチャレンジするような縦パスや仕掛けを見せる選手がいなかったというのもある。普段はその役を荒木遼太郎が務めているのだがその荒木が不在だったため、結果としてセットプレーなどの一発待ちの状況になってしまった。相手を崩し切る手前までは入り込めていただけに、そこからもう一段階のスイッチを入れるのは誰なのかという部分は、今後こうした試合の時にカギになってくるはずだ。

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