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【らしくないとも、らしいとも】明治安田生命J1 第28節 C大阪-鹿島 レビュー

スタメン

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<鹿島>
・ケガでレオ・シルバが離脱
・小泉、内田が欠場
・右SBに伊東、左SBに町田を起用
・ボランチは白崎と永木という初のコンビに
・2列目には中村が入る
・名古が復帰してベンチ入り

<C大阪>
・スタメン変わらず
・レアンドロ・デサバトがケガで離脱

セレッソの攻撃のメカニズム

一番最初に、試合の入りに成功したのはC大阪だった。C大阪は鹿島の2トップに対して、センターバックに加えてボランチ(特に藤田)かサイドバックがポジションを下げてくることで、2+1対2の数的優位を形成。鹿島の2トップの脇に出来るスペースにポイントを作り、そこからボールを前進させて攻撃していく形を90分通して再現することが出来ていた。

それに対する鹿島は基本的には下がって対応、最終ラインで跳ね返してゴールを割らせなければいい、という考えの元、前から数的優位に対応して追う回数は限られ、このC大阪のボール前進を許容する形となった。

ただ、鹿島もボールの前進自体は許しても、許してはいけない攻められ方はハッキリしていた。中央から突破を許すことだ。逆に言えば、それがC大阪が狙っていた攻撃の形でもある。鹿島のブロックが中央を圧縮した形で構成されると、C大阪は外→外でボールを前進せざるを得なくなる。そこからだと、直接ゴールに迫ることは出来ないし、クロスを上げてもブエノ、犬飼、クォン・スンテがカバーする空中戦でことごとく跳ね返されてしまう。

これでは崩せないC大阪は大外からの攻撃で鹿島のブロックを左右に広げつつ、中央へと攻め込む機会を窺っていく。ポイントとなったのは左サイドからの崩しだ。C大阪の左サイドハーフを務める柿谷は大外からインサイドに入るプレーを増やし、そこでパスを引き出す、もしくはあらかじめインサイドに入ってそこから大外に開くことで、空いたインサイドのスペースに丸橋がオーバーラップして飛び込む。この動きで人への意識が強い鹿島の守備陣を動かして、綻びを生み出していた。

さらに、この動きを活かしていたのはダブルボランチからの縦パスだった。あらかじめ鹿島の守備陣が全体的に下がっていたことで、フリーでボールを持てる状況が生まれていたC大阪のボランチは、それを活かして積極的に縦への楔を入れていく。この形が活きたのが13分にソウザのパスから柿谷が裏抜けしてシュートまで至った場面であり、この場面もそうだったが鹿島はクォン・スンテが好セーブで防ぐことでなんとか凌いでいた。

計算された犬飼のゴール

それでも、先制したのは鹿島だった。6分、この日最初のコーナーキック。永木の蹴ったボールを町田がファーサイドで折り返すと、中央のルーズボールに犬飼が飛び込んでゴール。大事な試合で最初のチャンスを見事に活かすことが出来たし、結果的にこれが決勝点となったことを考えれば、このゴールの価値はものすごく大きいものがある。

おそらく、このセットプレーは鹿島からしてみれば計算通りなのだろう。C大阪はセットプレーの守備をゾーンで守っており、ファーサイドのゾーンは178cmの丸橋が守っていた。そこに190cmの町田をぶつけることで質的優位が生まれる。さらに、折り返すことで守備陣にとっては視野をリセットして、切り替えなければいけないため、守りづらい状況となる。こうした要素を踏まえたうえで、鹿島はこの試合を前にした練習の中でこの形を試していたのだろうし、最初のセットプレーでそれを実行したのだろう。

成功させた選手たちはもちろん、相手の弱点を研究したスカウティング力、そしてそれを練習でしっかり準備してきたことが見事に報われたゴールだった。

動く永木、埋める白崎

先制した後も、鹿島はC大阪にボールを前進させられ続け、劣勢が続いていた。C大阪がボールを持って攻める、鹿島は耐えながらカウンターでチャンスを窺う、という展開は試合終了まで結局変わることはなかった。

C大阪からすれば、あの手この手でゴールに迫ることは出来ているのだが、中々ラインを割ることが出来ない、という終始報われない状況だった。そこには、ブルーノ・メンデスを激しいディフェンスで封じたブエノ、的確なカバーリングにシュートブロックと、わずかに空いた穴を瞬時に封じた犬飼、C大阪の右サイドからの攻撃を無力化していた町田の安定感、そして守備範囲に飛んできたボールをミスなくストップし続けたクォン・スンテ、と個々の頑張りがチームのパフォーマンスに繋げた鹿島の粘り勝ちという部分が大きかったのだが、そんな中でも光ったのはボランチのパフォーマンスだ。

C大阪の攻撃が左サイドからの攻めに活路を見出していたのは先程も触れたとおりだ。右サイドバックの伊東のパフォーマンスは悪いものではなく、時間が経つにつれて安定していったし、セルジーニョのプレスバックも効いていたが、ボールを動かすことで鹿島の守備陣を動かそうとするC大阪の攻撃の中で、どうしてもスキが生まれやすくなっていたのも確かである。

そこをカバーしていたのが右のボランチに入っていた永木である。永木は対面するソウザへの対応はもちろん、外からインサイドに入ったりと自由に動く柿谷のケア、さらには押し込まれた際の右サイドのカバー、と1人で何役もこなし、しかも自慢の運動量でその中で穴を作ることなく走り続けていた。先制点のコーナーキックも彼がキッカーだったことを考えても、この試合のMOMといってもいいパフォーマンスであった。

また、彼とボランチを組んでいた白崎の貢献度の高さも評価しなければならないだろう。今季、スタートからボランチに入るのは初めてだった白崎だったが、永木が動き回る分どうしてもスペースが生まれやすくなるが、そこを的確に埋めてバランスを保ち、バイタルエリアを締めて、ほとんど危険な位置からのシュートやパスをやらせることがなかった。また、終盤に左サイドに入った時にはカウンターで起点を作って、ファウルを貰ったり、インターセプトからチャンスを作り出したり、と鹿島が守備一辺倒になることなくパンチを打ち続けることに繋がるプレーを見せていた。

まとめ

今日のパフォーマンスが鹿島の理想とするものではなく、むしろ程遠いものだろう。それでも、ケガ人がいる中で一番可能性の高い戦い方として選んだゲームプランを見事に遂行した結果が、今日の勝利に繋がったことを考えれば、ある意味では完勝と言えるのかもしれない。

これで今季初めて首位に立つことになった。ここからは追われる立場になる。今日のような神経をすり減らす試合があと6試合、カップ戦も考えればそれ以上に待ち受けることを考えると、ここから逃げ切るのは一筋縄では行くはずもないだろう。ケガ人の問題もおそらくシーズンの最後まで悩まされるだろう。

ここまで段階を踏んで進化を遂げてきた今の鹿島が、ここから待ち受ける壁を越えられるのか。ポテンシャルの試されるシーズンになってきた。

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遠征費とスタグル代に充てるので、恵んでください