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ロボットの弱さはヒトの強さを引き出し、きっとヒトの弱さもヒトの強さを引き出す。

遅ればせながら、「弱いロボット」で有名な岡田美智男先生の一般書籍を読みました。(正確に言うと、まだ読んでいます。)論文は何本か勉強させて頂いたことがあったのですが、書籍としてのストーリーの中で読んでみるとめちゃくちゃ面白かったというかスッキリしました。

岡田先生が研究されている「弱いロボット」とは、多くのメディアでも紹介されているので、ご存知の方も多いかと思いますが、
・自分ではゴミを拾えないけど、ヒトの手助けを上手に引き出しながら結果としてゴミを拾い集めてしまう「ゴミ箱ロボット」
・モジモジしながらも、ティッシュ配りをする「アイ・ボーンズ」
・聞き手の手助けを引き出しながら、一緒に会話を行う「Talking-Ally」
・言葉足らずな発話で、周囲の助け舟や積極的な解釈を引き出し、複数人での会話を実現する「む~(Muu)」
などが有名です。

もう少し詳しい紹介は、以下の高校生向け講義などががわかりやすいかもしれません。

(最後まで読めていませんが・・・)書籍の中で、なんか目から鱗的な表現が沢山ありました。改めて考えると、そりゃそうだよな、当たり前だよなと思うのですが、会社の研究開発の現場にいるとついつい見失ってしまいそうな視点です。いくつか抜粋(少し意訳)すると、

"ルンバなどのロボットにおいては、机やいすなどの障害物は敵なのかというと決して敵ではない。いい加減に動いているようにみえるが、周りのモノを活かしながら、偶然の出会いを価値に変えながら、動いている。
・・・他のモノの参加を上手く引き出し、一緒に意味を生み出していくような関係であり、そのような余白、余地が必要"
"わたしたちの身体や自己は完結しておらず、不完結であり、弱いがために、周囲との関りへ駆り立てられる。不完結さ、弱さを周りと調整する中で補っていくこともコミュニケーション。
・・・ロボットの弱さは、ヒトの強さを引き出すことになる。"
"ピングーの発話は、言語音として十分に分節されたものではない非分節音と呼ばれるが、明確な意味を担っていないはずのピングー語がある文脈におかれると、わずかに意味や機能を帯びてくる。・・・周囲の文脈の助けを借りながら、意味の一部を委ねようとする。意味を生み出す主体は、繰り出したピングーから解釈するヒトに移っている。発話の不完全さが、子供たちの参加や積極的な解釈を促している。"

特に、「ロボットの弱さがヒトの強さを引き出す」というのは、ものすごい納得感というか、痺れました。ロボットが自己完結しないからこそ、ヒトが持っている「強さ」や他のモノに対する「優しさ」が滲み出てくる。以前noteで書いたルンバが掃除しやすい部屋に変えていく「ルンバブル」というワードも起点は、ロボットの不完全さが表出させたヒトの優しさだったんですね。効率化や自己中心的な話が多い世の中だからこそ、こういうプロダクトが貴重なんだと思いますし、先日のAug Labセミナーでも話題にした「利他」とか「するのサポート」というのは、この文脈と非常に似ているものだと思います。

開発をしていると機能、性能を上げることを最重要視してしまいますが、機能として無駄、不足があるからインタラクションが増えて愛着が生じることもあるでしょうし、共話というか、相手に委ねる余白、余裕があるから、一緒に意味を作っていくこともできるのでしょう。

もちろん、ロボットの弱さだけで全ての課題が解決するとは思ってはいません。特にB2Bが強い領域では直接的な経済合理性が必要です。そのために性能、使い勝手など高いに越したことはないでしょう。それでも最後に使うのは人です。その人の総合的なUXはもしかしたらロボットの弱さも考慮されても良いのかもしれません。ある意味、デザインシンキング的なアプローチと言えるような気もします。

そして、ヒトの強さや優しさを引き出すのは、きっと「ロボット」の弱さだけではないんでしょう。リーダシップやマネジメントというところはまだまだ勉強中の身なので、間違っているかもしれませんが、最近「リーダーこそ弱みを見せろ」みたいな話をよく聞きます。下記のようなビジネス系の書籍の中でも、最強のチームを作るには、①安全な環境 、②弱さの開示、③共通の目標、が重要との指摘もされています。

学術的には理由は色々とあるのかもしれませんが、基本的な原理としては弱いロボットと同じなのではないでしょうか。頑張っている、もしくは頑張ろうとしている人が困っている様子を見れば、目標が達成できるように協力をする、力を貸す。ヒトにはそんな優しさ、そして強さがあるんだろうなと思います。

もしそのような力を人が潜在的に持っているにもかかわらず、恥ずかしさや見栄などで少し奥まったところに隠れてしまっているなら、技術でそれを引き出すキッカケが作れるようになりたいなぁ~~と。

なぜだか良く分かりませんが、勝手にスッキリした読書だったので、考えが纏まっていない状況ですが、殴り書きをさせて頂きました。こっちの本も読んでみようかと思います。

では、また来週~。

安藤健@takecando

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