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ロボット・ドローンの先端技術報告書が発表されました

福島国際研究教育機構(F-REI)という組織から、先端的なロボットやドローンに関する調査報告書が発表されました。

F-REIというは、あまり知られていないかもしれませんが、東日本大震災からの復興関係の施策の中でできた組織で、復興に加えて、科学技術力・産業競争力の強化という役割も担っています。

そんなF-REIが今回行ったのが、先端的ロボット・ドローンに関する調査ということで、世界の先端的なロボット・ドローン等の研究開発の現状を把握し、広い視野で今後の研究開発の方向性を定めるために調査を委託しています。

この調査、ロボット屋さんの立場からすると、かなり豪華です。
「先端的ロボットに関する調査」を日本ロボット学会へ、「先端的ドローンに関する調査」を日本機械学会へ、「先端的ロボット・ドローンに関する制御系、センサー、エコシステムの調査」を計測自動制御学会へ、という形でロボット関係の日本の主要学会へ委託し、さらに学会は大学の先生を中心とした有識者に調査を依頼しているという感じです。

それぞれ444ページ、354ページ、377ページと全部合わせて1000ページを超える調査報告書なので、事典とかになりそうなレベルです。全部読んで、理解すれば、一通りロボット関係の技術のトレンド含めて理解できるかもしれません(さすがに私も読めていません…)

読み込みたい方は、是非、以下から。
・「先端的ロボットに関する調査」の報告書
・「先端的ドローンに関する調査」の報告書
・「先端的ロボット・ドローンに関する制御系、センサー、エコシステムの調査」の報告書

全部はムリ!!という方は、目次から興味あるところだけでも目を通すというのでも良いのかもしれません。

この調査報告書は、基本は技術の動向ということがメインになっているのですが、「社会実装に向けた視点で今後やるべきこと」という視点で整理をというご要望を頂き、私も立命館大学の川村先生と一緒に「先端的ロボットに関する調査」の中の、「ロボットの社会実装・実用化に向けて」という章を担当させて頂き、社会実装の現状、阻害要因、解決法検討という内容を書かせて頂きました。(ここのp.396からです)

私の内容は、全体最適化の視点や目的化しやすいロボット技術などなど、このnoteを読んでいただいている方にとっては「またか!!」という内容かもしれませんが、川村先生の内容はさすが!!というか、大学教員として、そしてスタートアップ経営や多くの産学連携・エコシステムづくりに携われてきた方という内容なので、是非読んでください。

この調査報告書の面白いところは、一方的に著者が執筆するだけではなく、各章に関して、F-REIのロボット分野の責任者を務める野波先生(こちらも大学のロボット・ドローン研究者としても上場経験のあるスタートアップ創業者としても抜群の実績のあり)からのフィードバックがあるというのが特徴的です。
※フィードバックがあるのは全然知らなかったので、個人的にはちょっと驚きました。

我々の章に関しては、以下のようにフィードバックを頂いており、もしかするとこのコメントを読むだけで、ざっくりした内容はわかるかもしれません。

第 5 章 ロボットの社会実装・実用化に向けて
5.1 実用化・社会実装の現状:
本節は、災害対応ロボット等の実用化・社会実装の 現状と課題に関する内容で、世界の製造現場で活躍している産業用ロボットの世界の トレンドを解説して、様々な分野で活躍が期待されるサービスロボットを含むロボット産業全体の 2035 年頃までの市場予測を解説している。興味深いのは、ドローンのような自律飛行、レストラン等での搬送型自律移動ロボットの社会実装が進んでいる 半面、マニピュレータ搭載ロボットのサービスロボットの社会実装が進んでいないという点である。執筆者が指摘するように、人が行うマニピュレーションは複雑多様であるのに対して、ロボットマニピュレーションは依然として未成熟であるため、ニー ズはあるものの応えきれない現実があるということである。
5.2 実用化・社会実装の阻害分析:本節は、多目的用途になる災害対応ロボットに 代表されるロボットがなぜ社会実装できないかに関する、実用化・社会実装の阻害分析の内容である。執筆者は自動車・飛行機・半導体などのような人工物と、ロボット のような人工物は本質的に状況が異なると指摘し、解くべき課題(要求仕様等)が本質的に異なることを指摘している。前者は解くべき課題が容易に設定可能であるのに 対して、後者は解くべき課題設定が難しいと指摘している。また、ロボットの定義の曖昧性、システムインテグレーション科学技術の未熟性、利用状況の多様性、大学の研究テーマ設定の問題などにも言及しており、本質的な議論で興味深い。
5.3 解決法の検討:本節は、5.2 で問題提起した「解くべき課題設定が難しい」という命題に対して、解決法の検討に関する内容である。執筆者は、研究開発による課 題解決は、社会のニーズに応える解決必要課題と 5 年以内の開発可能技術としており、 さらに、事業成立条件を追加する 3 つの集合のすべてが包含されることが目指すべき 目標と指摘している。そして、全体最適化という視点から、問題を解決することが目 的であって、ロボット自体は手段であり目的ではないことを強調している。現在ロボットの社会実装が進んでいる分野は技術的難易度をクリアしているか、経済的価値が 高い分野である。逆に、社会実装が進まない分野は求める技術レベルが極めて高いか、 経済的価値が低いことになる。極めて本質論である。そして、知的興味駆動型事業化モデル、ニーズ駆動基礎科学開発型事業化モデル、ニーズ駆動基礎科学利用型事業化モデルについてアクションプランも含めて解説しており、示唆に富んだ内容となって いる。

引用:(F-REI 委託事業)⽇本ロボット学会, 令和5年度新産業創出等研究開発事業に 係る調査事業(先端的ロボットに関する調査), 調査報告書「ロボティクスの最 先端と未来への布⽯」, 2024

もちろん、書けることと書けないこともあるので、言いたいことはもっとある(かも)しれませんので、またどこかで建設的な議論などができて、業界、産業として良い方向に繋がっていけば嬉しいです。

では、また~!!
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安藤健(@takecando)
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