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コロナ対策で注目度が上がった「人と接触しないロボット」の価値

これまでこのNoteでは、ロボットが提供していく価値は大きく「自動化技術による効率化」という流れと「拡張技術によるQoL向上」という流れになるのではないかということを再三、ここなどで書いてきました。今回は「効率化」や「QoL向上」以外を目的としたロボットの提供価値について少し考えてみたいと思います。結論としては、今回のコロナによるロボットへの期待は、必須性、緊急性と規模というものを両立している非常にレアなケースであり、世の中へのロボット導入が進む分岐点になる可能性がある、と考えてます。

どんな作業を自動化させるのか?

世の中にはとにかく色んな作業が存在しています。どんな作業をロボットにさせるのかということを考えたときに大きく分けて以下の4つになるのではないかと思っています。

1.作業自体が1人ではできないことをやる
2.作業自体は人でもできるけど、人ができないレベルでやる
3.作業自体は人でもできるけど、人がやりたくないことをやる
4.作業が人ができるかは気にせず、ロボットができることをロボットにやらせる
いずれも程度の違いの話なので、厳密に分かれるというよりは、なんとなく分類のイメージです

「1.作業自体が1人ではできないことをやる」の「人にはできないこと」というのは例えば1トンとか重いものを運ぶみたいな話であるとか、見えないものを非破壊で見ながら作業するということがあるかもしれませんが、改めて考えてみると意外と多くないのかもしれません。というか、多くが2に含まれるのかもしれないです。

「2.作業自体は人でもできるけど、人ができないレベルでやる」がこれまでのロボット産業が最も得意としてきた領域です。特定の作業を人にはできないような高速、高精度に行うというもの。それによって、人が行うときより、効率が良くなったり、性能が良くなったりするというものです。

「4.作業が人ができるかは気にせず、ロボットができることをロボットにやらせる」は、以前のNoteでも書いたように労働力不足の解決に重きを置く視点で、とにかく人が集まらないから、人でやるより高い付加価値を出すことに拘らず、ロボットにできることはロボットにやってもらおうよ、という考え方に基づくものです。先日紹介したUR社のように人と同じ環境で働く「協働ロボット」というのは割とこの視点が強いのではないでしょうか?

「人でもできるけど、人がやりたくない作業」のレベル

では、3つ目の「作業自体は人でもできるけど、人がやりたくないこと」をするロボットとうのは何でしょうか?今回コロナ対策などで活躍している多くのロボットはこの視点だと思います。つまり、感染を避けるために、出来るだけヒトに接近したくない、接触したくないという”脱コンタクト”を実現するロボット達です。

この「作業自体は人でもできるけど、人がやりたくない」作業というのは、

レベル1:面倒だからやりたくない
レベル2:シンドイからやりたくない
レベル3:危ないからやりたくない

というような「やりたくないレベル」があり、これまではこの「やりたくないレベル」と「事業性」というところにある程度の負の相関があったように思います。つまり、面倒という行為は、結構マスが大きい行為であることが多く、例えば掃除などは、置き換え・自動化によって数千億円という大きなロボット市場を作り上げました。一方、危ないからというのは極限的な作業環境であることが多く、例えば原発対応のように必要性は誰しもわかるし、単価は高いかもしれないけど市場としてはそれほど大きくはない、という傾向にあるような気がします。元々はそのような負の相関はなかったように推測しますが、日常に近い現場での危険作業は、日々の労働環境整備で解決されていき、現在残っている危険作業は極限的な利用シーンになりやすくなっています。

例えば、ロボット掃除機ルンバを開発しているiRobot社が、設立当初軍事関係を事業ドメインにしていたのに掃除という身近な領域にピポットしたのも上記のような関係があったからではないでしょうか?

しかし、今回のコロナというか感染症に関する「人と接触したくない」という問題は、この「やりたくないレベル」と「事業規模(必要ロボットの台数」という負の相関を打ち破る利用シーンを多く産み出しているように思います。特に物資の配達や消毒などを無人で行う自動化ロボットたちは凄い勢いで活躍し、コロナが一件落着してきても要望は一般含めてある程度の数が残ってくる気がしています。

自動化以外の遠隔操縦型ロボット(マスタースレーブ型ロボット/テレプレゼンスロボット)などにおいても「3.作業自体は人でもできるけど、人がやりたくないことをやる」というところに価値が映っているように感じます。これまでは、どちからというと「一瞬で空間を超える」という「2.作業自体は人でもできるけど、人ができないレベルでやる」というある意味時間効率性に価値があったのが、「同じ場所にいない」こと自体に価値が存在してきています。遠隔操縦型ロボットの事例は以下をご参照ください。

こんな記事書いてる暇あったら、コロナ対策のロボット開発しろ!と怒られそうですが、私自身もこのようなところで使われるロボット、テクノロジーの開発に携わっている身として、少しでも「早く」役に立つものを送り出したいと思います。

では、また来週。

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