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産業界からみた学会の価値というか意義向上に対して想ったこと

今週は、日本ロボット学会の創立40年記念行事シンポジウムで発表したり、パネルディスカッションをさせて頂く機会を頂きました。
個人的には、東大安田講堂で話すという貴重な体験でした。

シンポジウムのテーマは「2050年に向けて日本ロボット学会の進むべき道」。とても難しいテーマで、後から振り返ってみても、2050年という視点で発言できたかは、全く以てわかりませんが、自分用のメモとしても、何を言いたかったのかということを書いておきたいと思います。

言いたかったことは、以下の4つです。
1.バリューチェーンの後ろ側(下流側)に関する研究開発の増加
2.導入事例のIE(Industrial Engineering)視点での分析と共有
3.産業界は学会を利用して妄想力を強化
4.将来のありたい姿についてもっともっと議論を

ロボット、特に企業でのサービスロボットの研究開発、事業開発という立場にいる若造からの発言なので、ロボットの中でも他の領域や、全く異なる学術領域にどれくらい汎用性があるかはわかりませんが、何かの参考になれば幸いです。

1.バリューチェーンの後ろ側(下流側)に関する研究開発の増加

以前のSPEEDAのセミナーでも話をさせて頂きましたが、これからサービスロボットが普及していくにつれて、システムインテグレーション、オペレーション、メンテナンス、アップデートなどの下流側の重要度はどんどん重要になってくると思っています。

一方で、現状の研究開発の主な対象は、やはりロボット本体です。性能のよりロボットづくりやそれを支える要素技術に研究がメインになることは、至極真っ当です。ただし、ロボットを「使い続ける」ための技術開発にも、開発を意図的に少し割り当てを当てていくことも大事になるかと思っています。そのためには、メーカー、ユーザーともに何に困っているのかという産業界側からのニーズの開示も積極的にしていく必要があるでしょう。

2.導入事例のIE(Industrial Engineering)視点での分析と共有

これは先週のNoteで書いたことになりますが、成功事例・失敗事例ともに徹底的に分析し、共有することです。サービスロボット産業が立ち上がっている今だからこそ、重要です。前回も紹介した梅谷先生の

「現在もっとも効果的に使われている生産現揚を見れば,工業用ロボットの必要性,技術水準,使命が感知できる」

という言葉はまさに核心を突いていると思います。 

ポイントは、実装されたの技術を分析するのではなく、あくまでも経営的な効果、現場のムリ・ムダ・ムラ分析などIEの視点で実際の効果分析することになるでしょう。

3.産業界は学会を利用して妄想力を強化

学会での発表の中には、産業界視点で言うとかなりブットンダものもあります。どちらかというと、大学の先生などが知的好奇心ドリブンで研究テーマを設定したものが多い印象です。企業側の視点がより短期的になりやすい昨今だからこそ、このようなテーマを頭の片隅に入れておくことは非常に大事になるはずです。

すぐに実用レベルにはならないかもしれないテーマが、実用レベルに達したときにどんなことが起きるのか、産業界側の妄想力が試されるというか、もっと妄想していきたいと思いました。

今回のシンポジウムの中でも、ソフトロボティクスに関する発表がありました。勝手な認識としては、柔らかいロボットを用いることで、より環境の変化とかにロバストに対応できるようになるくらいのことしか考えていませんでした。

しかし、アカデミア側からの発表を聞くと、生体を模倣した自己修復や機能の創発なども対象であるとのこと。もしこんな技術が実用化レベルになったら、まさに1で言及したようなチェーンの下流にあたるメンテナンスなどに大きなインパクトのある技術になります。もっともっと基礎研究と産業側との交流を促進する必要があるのだと思いました。

4.将来のありたい社会についてもっともっと議論を

パネルディスカッションの中では、少子化に関するフロアからの質問もありました。社会課題そのもので有り、現実的にはロボットだけで解決するものが難しいテーマであるかもしれません。答えがない問いだからこそ、ありたい社会像について、もっともっと議論できる場というのが、学会なのかも知れません。ありたい姿は、画一的ではなくて良いので、バリエーションをたくさん出すことも含めて複数のシナリオを検討していくのが、大切なのでないかと。そこから出てくるありたい社会像の中で、ロボットが果たしうる役割を、現在の社会に対して発信していくことも大きな意義があるでしょう。


どこの学会の運営側の会議にしても、学会員の減少、特に企業会員の減少ということに悩んでいます。多くの活動がボランティア的な要素で支えられている状況の中で、どういう学会であれば、参加者にとっても意味があり、社会にとっても意義があるのかを考えていかないといけないなと、改めて認識した今週でした。

では、また来週〜。

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安藤健(@takecando)

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