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開廃業率の調査方法を調べてみた!

前回note投稿は3月だったのですね。サラリーマンをしつつ、新しいことなど取り組んでおりますと、もう6月末。皆様、初夏の風が吹いておりますがお元気でしょうか(^^♪。

起業家や地域の起業支援サポートをする中小企業診断士の集まりである「スタートアップラボ(スタラボ)」があります。その研究会において日本は開業率10%を目指しているが、伸びていないと話がありました。素朴に、開業率が伸びていないことが、感覚的におかしいなと思いました。その理由は、ユーチューバーは増えているし、私も含めて副業をしている人は増加しているはずではないかと疑問に思いました。

国が設定しているKPI開業率10%という数値がどこから出てきたのか、また開業率の調査方法はどのようになっているのかをちょっと調べてみました(*’▽’)。

簡単に記載しようとしたのですが、調べているうちに硬い文章になってしまいました。皆さん、眠くならないかな(;’∀’)。本人としては、非常によく理解できました。
※KPIとは、重要業績評価指標のことです。
 


①KPI開業率10%目標はどこから出てきたのか。


安倍内閣時の平成25年6月に閣議決定された「日本再興戦略-JAPAN is BACK-」があります。これは日本の成長戦略計画書です。

成長戦略の基本的考え方を簡単に記載すると、日本は20年以上も経済の低迷が続いており、経済社会に深刻な影響をもたらしました。企業経営者や国民個人も、かつての自信を失い、将来の希望を持てなくなっています。新陳代謝を促し、成長分野へ投資や人材の移動を加速することで、企業の収益も改善し、新たな投資を誘発する好循環が実現、地域や中小企業・小規模事業者に波及します。結果、生産性向上、GDPの成長へつなげていくというものです。ヒト・モノ・カネを一気に動かして低迷から抜け出そうよということですね。

上記の成長へつなげるため、3つのアクションプランがあります。1つ目は、「日本産業再興プラン」、2つ目が、「戦略市場創造プラン」、3つ目が「国際展開戦略」です。

1つめの「日本産業再興プラン」における緊急構造改革プログラム(産業の新陳代謝の促進)(P24)の中で、「内外の資源を最大限に活用したベンチャー投資・再チャレンジ投資の促進」において開業率のKPIが記載されています。また、中小企業・小規模事業者の革新(P52)における「地域のリソースの活用・結集・ブランド化」、「中小企業・小規模事業者の新陳代謝の促進」において同様に記載されています。表現としては、「産業の新陳代謝を促すことで、開業率が廃業率を上回る状態にし、開業率、廃業率が米国・英国レベル(10%台)になることを目指す」です。

プランとしては、既存企業の変革もするが、ベンチャー企業が生まれる仕組みを整備し、成長分野を拡大していくことが記載されています。

その後、「未来投資戦略」を経て「成長戦略2021年」にもKPIとして記載されています。令和3年6月18日成長戦略実行計画および、成長戦略フォローアップ本文にはKPIは確認できませんでした。成長戦略フォローアップ工程表のP103~P110にて記載が確認できました。「足腰の強い中小企業の構築」においてです。なかなか探すのが大変でした(;’∀’)。


②開廃業率はどの調査で確認しているのか。


結論として、開廃業率のKPIは、厚生労働省の「雇用保険事業年報」がベースです。
以下調査に関して確認していきます。

開廃業率がわかる調査は、3つあります。
1つ目は、総務省「事業所・企業統計調査」及び総務省「経済センサス-基礎調査」です。事業所・企業統計調査は、平成18年の調査を最後とし、平成21年からは経済センサスに統合しました。

2つ目は、厚生労働省「雇用保険事業年報」です。

3つ目は、法務省「民事・訟務・人事統計年報」及び、国税庁「国税庁統計年報書」です。2011年版中小企業白書に、非常にわかりやすい表がありました。私の方で掲載用としてまとめました。

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1)「事業所・企業統計調査」及び総務省「経済センサス-基礎調査」

経済センサス‐基礎調査は、国のすべての産業分野における事業所の活動状態等の基本的構造を全国及び地域別に明らかにするとともに、事業所・企業を対象とする各種統計調査の母集団情報を整備することを目的とした統計法に基づく基幹統計調査(基幹統計の「経済構造統計」を作成するための調査)です。

対象は、すべての事業所および企業(農林漁家等を除く)です。そのため、母集団の欄を確認すると、他の2つの調査よりも事業所数、企業数とも最も多いです。調査年は、5年ごとです。

開業率の算出方法は、前回調査以降の開業事業所数(企業数)から、年平均開業事業所数(企業数)を算出し、期首事業所数(企業数)で除したものとなります。

つまり調査対象としては、個人事業主の開業届や、法人の法人設立届を出しているところが対象ですね。


2)「雇用保険事業年報」

雇用保険事業年報とは、雇用保険の適用・給付状況を把握し、雇用保険制度の適正な運営を図るとともに、雇用対策等の基礎資料として利用することを目的とするものです。

対象は、雇用保険の適用事業所です。事業所数は、経済センサス基礎調査の約3割強と少ないです。ただ、調査は、毎年度実施となります。

開業率の定義は、当該年度に雇用関係が新規に成立した事業所数を、前年度末の雇用保険適用事業所数で除したものです。労働者を1人でも雇えば適用事業になりますが、基本的に1人社長等だとカウントされないということですね。


3)法務省「民事・訟務・人事統計年報」及び、国税庁「国税庁統計年報書」

「民事・訟務・人権統計年報」は、主な掲載項目として、登記(登録を含む)関係、訟務関係及び人権擁護関係の統計、戸籍関係、供託関係、民事法律扶助関係、登録免許税及び登記等手数料から成っています。

「国税庁統計年報書」は、国税に関する基礎統計として、国税の申告、賦課、徴収及びこれらに関連する計数を提供し、併せて租税収入の見積り、税制改正及び税務行政の運営等の基礎資料とすることを目的としています。

対象欄を確認すると、「民事・訟務・人権統計年報」は、会社設立を行った法人です。「国税庁統計年報書」は、調査時点の法人数です。

母集団は、経済センサスの約67%程です。調査は、毎年行われています。

開業率の定義は、当年の会社設立の登記件数を前年の法人数で除したものとなります。「会社」、「法人」という言葉を使っていますので、個人ではなく、法人として設立されたものが対象ということですね。


③3つの調査を確認した結果


開業届や法人設立届、雇用保険適用事業所設置届の3つとも提出しない、かつ、営利を目的として経営している人は、開業率の対象にはならないとうことがわかりました。例えば、上記の届出をしないユーチューバーや、私のようなサラリーマンをしながら中小企業診断士をしている人が増加しても開業率にインパクトを与えないということですね。

さらに、国が考えるKPIである開業率にカウントされるためには、上記3つの中の、「雇用保険適用事業所設置届」を出している個人事業主や法人になります。雇用が発生する段階になってようやく、国の成長戦略に貢献している対象になると理解しました。つまり、雇用を発生させる規模の個人事業主や法人を作っていかなければならないということですね。

今回のnoteでは、KPI開業率10%目標はどこから出てきたのか、開業率は、どのような調査に基づいて算出しているのか確認できました。調べているうちに文章長くなりましたが(;’∀’)限られた資料のみからでしたが、国としてどのようにしたいのか理解できました。

蛇足ですが、今回のnoteを書くにあたり、安倍元首相時代の「日本再興戦略-JAPAN is BACK-」から、「成長戦略2021」を読みました。過去、国が考えていたこと、そして、これから国としてどうしたいのかを自分の生活とダブらせて見ていると大変楽しくみることができました。国が考えていることに少しでも触れようとすれば、もっと勉強や体験が必要ですが、不思議なもので、今後のことを考えるのは楽しいですね!!次回は、開業する際の資金調達に関して書いてみようと思います(^^♪
今回のnoteは以上となります。ご覧いただきありがとうございました!!


出典
内閣官房 日本再興戦略-JAPAN is BACK-2013https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/seicho/pdf/saikou_jpn.pdf


内閣官房 成長戦略(2021年)成長戦略実行計画https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/seicho/pdf/ap2021.pdf
成長戦略フォローアップhttps://www.cas.go.jp/jp/seisaku/seicho/pdf/fu2021.pdf
成長戦略フォローアップ工程表https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/seicho/pdf/kouteihyou2021.pdf


中小企業庁 経営支援部創業・新事業促進課「政府の創業支援の現状と課題」https://www.chugoku.meti.go.jp/latestnews/pdf/keieishien/181116_1.pdf

総務省統計局 平成18年事業所・企業統計調査https://www.stat.go.jp/data/jigyou/2006/index.html

2011年版中小企業白書https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/h23/h23_1/110803Hakusyo_part3_chap1_web.pdf

厚生労働省 雇用保険制度https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147331.html

リサーチナビhttps://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/theme-honbun-205117.php

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