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『中小企業診断士』活動のための『飲食店起業』

秋も一段と深まる季節となりましたが、皆様お元気でしょうか。前回のnoteでは、資金調達の件を次回書きますとご案内しておりました。大変恐縮ですが、今回は、順番を変更させて頂きます。
起業家や地域の起業支援サポートをする中小企業診断士の集まりである「スタートアップラボ(スタラボ)」にて、この度は、光武様に『中小企業診断士活動のための飲食店起業』を講話頂きました。


講話に至る経緯


講話をご依頼した光武様とは、中小企業診断士養成課程及び修士課程で同期であったことがご縁となります。修了後、光武様は起業され、経営コンサルティングや炭火焼鳥三日月をオープンされました。起業に至る考え方だけでなく、その後、コロナ禍となり、中小企業診断士と飲食店オーナー両方の立場から今後の飲食店経営に関するヒントを頂けないかと考え、この度の講話をご依頼することとなりました。講話頂いた内容を一部抜粋しながら以下記載します。


光武晋一様のご紹介


職歴
2000年4月 株式会社ビーコンインフォメーションテクノロジー入社
      メインフレーム用ソフトウェア(運用・保守・研修担当)
      パッケージソフトウェア開発
2002年1月 Allen Systems Group,Inc入社(日本オフィス立ち上げ)
      ソフトウェアローカライズ・営業・販路開拓
2003年5月 学校法人 明星学苑 明星大学 入職
       サーバー・ネットワーク・PC教室の構築・運用
       各種学内システムの開発や導入
       情報リテラシーの実習指導
       教務全般
2018年4月 株式会社 クロワッサンパートナーズ設立
2018年7月 炭火焼鳥 三日月 開店
2021年11月 炭火焼鳥 三日月 2号店開店(予定)

資格
中小企業診断士
修士(経営学)
情報処理安全確保支援士
HACCPコーディネーター

所属
株式会社クロワッサンパートナーズ 代表取締役
一般社団法人 多摩経営工房
NPO法人 たま産業支援センター
独立行政法人 中小企業基盤整備機構 中小企業大学校東京校 中小企業アドバイザー
一般社団法人 食品経営支援協議会 ネットワークメイン講師
IAF(Industrial Automation Forum) ia-cloudプロジェクト情報会員


株式会社クロワッサンパートナーズ 事業紹介
経営理念
関わる全ての人・組織・社会が成長を実感できる事業活動を行っていく。
事業展開
飲食事業
経営コンサルティング事業
データ入力事業


起業に至った経緯


私の義理の弟である澤野(タカちゃんと呼んでます)と意気投合したことで、飲食店立ち上げとなりました。それぞれに思いがあり、もともと私は大学職員として働く中で、「大学は地域社会に求められる大学になることが重要。そのためには地域社会を理解する素養が必要だ!」との思いから経営学を学びましたが、その中で、やってみたいことが沢山でてきました。

一方タカちゃんは、調理手法を修行し店舗運営に携わる中で、調理や接客を通じてのサービス提供について独自のアイデアを発信するが、実際の施策として取り上げられないことも多く、裁量をもった運営をしたいと考えていました。

お互いの想いを語り合い、近い将来一緒に飲食店舗を立ち上げることを約束しました。2017年5月頃のことです。すぐに始めるとは思わなかったのですが、2018年3月頃に何気なくwebサイトで居酒屋居抜き物件を発見しました。自分で思っていた条件に近いため、すぐに不動産会社へ連絡。その後契約の運びです。


起業にあたっての調査・シミュレーション


物件が決まってきたので、さっそく調査・シミュレーションをしました。
1つめは、店舗経営のための売上シミュレーション作成です。これは、鉄道利用者から通行量を予測することと、商圏人口と外食統計から、来客数・売上予測を行いました。

2つ目は、店舗経営のための財務・会計シミュレーションです。項目としては、資本金、自己資金、借入などの財務関係。物件取得、内外装、調理設備などの設備投資(初期費用)。家賃、利息、人件費などの固定費(1カ月)。仕入れ原価、アルバイト代などの変動費(1カ月)。席数・回転率・客単価などからの売上計画や損益分岐点(1カ月・ランチ・夜)です。


開店準備


改装用図面や看板作成、メニュー開発、調理器具等調達、蛇口からビールが出る「夢のビールサーバー」などを準備しました。

いよいよオープンが近づいたときに、レセプション計画をしました。開店前最後の仕上げに本番と同様の状態を作るべく、知人を招待するための計画です。

進めているうちに心配事が出てきました。それは・・・
〇店頭告知以外で広告宣伝をしていなかったため、来店客があるか。
交通量調査などから売上シミュレーションをしていたが、実態はどうか。

〇料理の味が、来店客に受け入れられるか。
自分たちの味を信じているが、お客様に合うか。

〇接客や調理がこなせるか。
店員は「光武・タカちゃん、光武の嫁」のみ。タカちゃんはプロだが、素人の補助者で店を回せるだろうか。

〇開店直前にタカちゃんの子供が生まれる。
元気な男の子が誕生!!

平成30年7月19日開店!!思った以上にお客様来てくれました。待ち構えていたように。そうすると、次々と問題が起こりました。氷が足りなくなったり、容量の足りない冷蔵庫の複雑なやり取りなどです。例えば漬物三種盛りなのですが、冷蔵庫の中から3種類の漬物を取り出して盛り付けるだけでも一苦労でした。伝票への注文の書き方も人それぞれで、すぐにわからないなどです。これは、1つ1つ問題を片付ける必要があると考え、ランチを中止しました。1週間ほどかけ、オペレーションを改善しました。


経営活動


〇開店から1カ月
月間の売上や仕入れなど数値が出てきました。結果、開店前に作成したシミュレーションの結果にかなり近く、できる限り根拠を揃えてシミュレーションを行うことの重要性を経験しました。

〇自分の役割は?
当初は、バイトリーダーの位置づけで活躍していましたが、人員を揃えることで店内で働くことも減り、自分の役割を変える時期となりました。

まずは、目標を設定して、みんなの向く方向を揃えることにしました。3年後には2店舗目をやりたいことを伝え、皆にどのようなことをしてほしいか理解してもらうことです。契約社員となった二人の元アルバイトに目を向けるために、個別に面談を実施しました。そこでは、それぞれの希望や、不安を確認することができました。不満や不安の根源は、「経営者が従業員に対して、どんな役割を期待しているか」が伝わっていない
ことを理解しました。

社員には見せていませんが、自分自身が従業員に何をしてもらいたいかを明文化しました。そして、伝わるように対話をするようにしました。

〇Webサイトとチラシ作成
当時、チラシやホームページを作ってなかったです。開店から半年が経過し、顧客の来店状況について少しづつデータが揃い始めました。天気別、曜日別や売れ筋などです。そこで、Webサイトとチラシを作ろうと考えました。認知度を上げるためです。

近隣の駅である喜多見駅を確認すると、改札から大きく3方向に通行する人が多いです。そのうちの一方向が当店を通っています。残り2方向は、当店を知ることが無い人が多いです。そのため、その方々に知って頂きたいと考えました。

早速チラシを配りました。チラシは好評で、人によっては、車を止めてまでチラシをもらってくれました。地元の人は近隣に何があるのか知りたいということを強く感じました。ホームページも同様に作りました。

実際の売上推移と比べてみると、Web作成とチラシ配りをしたところ大変効果がありました。客数が増えましたし、常連さんも来てくれました。広告宣伝重要です。


コロナ禍の影響


2020年コロナ禍となりました。平均的な月間財務状況と時短要請時の財務状況を比較しましたが、一定の経費(固定費)がかかることで、大きく営業利益がマイナスになることがわかりました。売上が減るのは相当痛いと感じました。

2020年の1月~3月にコロナの影響を感じ、4月に緊急事態宣言が起こり、テイクアウト営業のみとしました。しかし売上が半分以下となりました。

国や自治体の支援策があったので、キャッシュが回らなくなることはなかったです。当社もいくつか支援施策を使いました。表は参考ですが東京都の支援施策の一覧です。

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支援策により、キャッシュフローは維持できるのですが、密を避けるために席数を間引いており、今後も自粛等や新型ウイルスの可能性もありこのままではじり貧になると感じました。

コロナ禍で外食の機会は減少していますが、逆に外食の価値は増大しており、一食を大事にする傾向となっていることを捉えることが重要と考えます。飲食店の事業性評価で見た場合に、認知度よりも中身をしっかりしないと生き残れないと感じています。その中身も変化しつつあります。


コロナ禍以降の飲食店事業は


今後の事業計画としては、店内飲食のみでは席数と客単価が決まっているので売上向上が見込めないと考えます。感染症などに対応するためには、店内飲食以外とのバランスが重要です。私も新しい事業計画を考え、事業再構築補助金を申請したところ採択を頂きました。

やりたいことは、テイクアウト店です。Uber Eatsもかなり注文が入るので、しっかりと宣伝すれば拡大できると考えています。新店の戦略は完全非対面でオーダーと会計ができる気軽なテイクアウト店です。イートインを立ち飲みにして、コイン式の日本酒、ワインのサーバーがあると面白いかなと思っています。

経営戦略になりますが、狛江市は日本で二番目に小さい市なのです。特産品や有名店も少なく、ここで頑張ったら狛江市を代表する店となれるのではないかと考えています。そこで、ドミナント戦略を考えています。3店舗まで作れば狛江市を代表してると言ってもいいかもと。

課題としては、人材、物件、資金調達ですね。この3つのタイミングが合わないとできないと思います。しかし、コロナ禍であることで、それぞれの条件が揃いました。

緊急事態宣言下ですがテイクアウトをやることで、調理の練習もすることができ次の店舗につなげることができそうです。

〇変革への挑戦に必要なこと
変革とは、新規事業の創造です。ただ、新製品を新市場へ投入するのは難しいです。機会と強みの活用が重要です。例えば強みのわかっている既存商品を新しい市場へ投入することはうまくいきやすいのではと考えています。
飲食店事業は店内飲食だけでなく、テイクアウトやデリバリーなども重視し、席数と関係なく客数を増やすことが重要です。

〇コンセプトの設定
誰に、何を、どのように売るか。ストアコンセプト(事業ドメイン)を明確に設定することが必要です。そしてそのコンセプトに沿った顧客を集めようとしているか確認が必要です。

〇商品、サービスの磨き上げ
情報収集をして、アイデアを出し尽くすことが重要です。考え抜いたかです。やりたいことがターゲットの顧客に合っているか、届いているかです。

〇正しい広告宣伝方法
SNSで宣伝するにしても、ターゲットの年齢など考える必要があります。強みがターゲット顧客に伝わるようにすることが重要です。


実際に既存店舗と新店舗で比較した事業戦略の表が以下です。

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起業してよかったか?


良かったです!
中小企業診断士として活用できる沢山の経験をすることができています。創業、経営活動、飲食店の立ち上げなど。

中小企業診断士としての活動の源泉にもなりました。自分でやっていることをお話することができます。実業やっているのでオファーも多いです。

たくさんの人とつながりができ、一人ではできないことができる。そして楽しい!!
ぜひ、炭火焼鳥 三日月へご来店ください!!

以上が光武様の講話となります。質疑含めて、お話をお伺いしていて印象的だったのは、『お客様視点で、しっかりと価値を提供しているか。単なる相対的な強みではなく』。『人材、物件、資金調達の3つがタイミングよく揃っているか』。特に後者は、光武様がしっかりと事前計画を立ていたことも大きかったと感じます。

光武様、2店目も計画され、益々のご発展祈願致します!!

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