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猪の死と母の死

昨日、ネット記事をいつものように見ていると、この記事が目に留まりました。

https://number.bunshun.jp/articles/-/847100


テーマが自分にも興味があったのか、筆者の感覚が自分と近いのを感じたのか、あるいはただ文体が読みやすくすんなり入ってきたのか。

おそらく全部だと思いますが、気がついたらAmazonでポチってしまっていました。


そして今、まだ読み終えてはいないのですが思わずnoteに書きなぐっている自分がいます。
衝動的に書いているので、誤字脱字、誤用法は堪忍してください。


記事をよんで頂ければわかるように、私達は日々食べている "肉" ができるある工程に対して、強い忌避感を持っています。

動物を食べる時、屠殺をしなければ食べることはできないのですが、スーパーに並んでいる "肉" はその様子を微塵も感じさせないよう、見事にパッケージングされていて、私達は "ありがたく食べなさい" と教育されなければ、それをいただくことになかなか感謝することが出来ません。


暴力と殺生はいけませんと教育はされるものの、その過程なしに、食べることはできません。


ひと昔前では、家畜を家で飼い、それを食べることが日常でしたが、今ではほぼありません。


そんな感覚にある意味ショックを与えて、"殺して食べる" という本当の意味を筆者は教えてくれています。


本の一節にて、ある日、狩猟に同行した筆者は、おじさんが手強い猪を必死に殺そうとした。そして、その最中から猪と目が合い、目を離せなくなった。ぐったりと瀕死になり、果てそうなその目を見続けてしまい情が移ってしまう。その猪の死に今まで感じたことのない、深い悲しみを、覚えた。

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自分はこの文章に、母の死を見ました。


母が亡くなる日の前後、一年間はあまり記憶がありません。曖昧というかフワフワしていて、今でも現実味がないのです。

ただ、断片的な記憶が深く刻み込まれていて、そのトラウマ的な物を忘れようともがいていたのかも知れません。

肝性脳症で意識不明になり、白目を剥いていた母の延命治療をどうするかの選択を迫られました。自分はこれ以上苦しめたくない、母が延命治療はやめてと言っていた、いっそ楽に死なせてやりたいと思い、希望しませんでした。


その日の夕方、ふっと母の意識が戻り、自分は泣きじゃくりました。


寿司が食べたいと言い、慌てて買いに行きました。

母は箸もまともに持てず、口からポロポロと寿司飯をこぼしながら、


「おいしい、ありがとう」と言っていました。


未だに夢だったのかもしれないと思うような夢心地というか、えもいえない高揚感でした。


それから少し経つと、母は亡くなりました。


あの時ああすれば、この時こうすればもしかしたら…

後悔が頭の中で渦巻きました。


その前後の自分はひたすら現実から逃げていました。こころ心にあらずという感じだったと思います。


あるいは、死を受けいれると精神が保たないことを、体が察知して、ひたすら逃避するように動いていたのかもしれません。


ただ、言えることは、高校生にもなって、2人で一緒に買い物に行ったり、ご飯に行ったりするようなマザコンがいて、その母が死んだと言う事実は、どうあがいても変えられないということです。


そこから時間は進み、人生を共に歩む人と出会い、自分の血を分けた子供をもうけたりしていく中で、悲しみは薄れていきました。


人はどうあがいても後悔をするといいますが、それはごくごく短期的なものであり、本質的には後悔はしえないのではないのかと思いました。

そして、悲しみと喜びは一見相反するようにも見えますが、それは表裏一体でもあり、つながっている感情なんだとも思います。


この本の著者が、猪の目が忘れられないように、私も母の死を忘れられません。忘れたくもありません。


そして、その猪の ”肉” を家族がおいしく食べて喜んだことで、悲しみが薄れていくように、自分も母親が亡くなったことで、人生を共に過ごせる人と出会い、心から自分より大切な存在と共に過ごし喜びを分かち合うことで、悲しみは薄れていきました。


母がもし生きていれば、結婚することはおろか、出会うことすらなかったかもしれません。


今では亡くなったことも含め、母の存在がただただ有難いです。


父が言っていました。


「俺はずっと早いこと死にたい言うてたけど、孫の顔みたらもうちょっとだけ生きたいって思うようになったわ。えらいもんやな。」


後悔の念にさいなまされ、ひたすら閉じこもりもがいてみるのも一興、

その先の喜びをつかみ、後悔を包括して、感謝できるようになるのも一興、

死に向かう命の尊さを感じます。



 




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