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タレイア・クァルテット結成10周年を迎えて

割引あり

〜結成10周年記念 タレイア・クァルテット 特別演奏会「愉・舞・祈」〜
日時:2024年5月8日(水)19:00 五反田文化センター
曲目:モーツァルト:弦楽四重奏曲第4番 K.157
   メンデルスゾーン:弦楽四重奏のための4つの小品 Op.81
   バルトーク:弦楽四重奏曲第6番 Sz.114
   ※演奏曲目・曲順等は都合により変更する場合がございます。
出演:タレイア・クァルテット
   山田香子(1stVn)、二村裕美(2ndVn)、
   石崎美雨(Vc)、渡部咲耶(Va)
略歴:https://www.thaleiaquartet.com/plofile

チケット:一般4,500円/学生2,500円 (全席自由席)
※学生券は主催元での販売のみとなります。
主催:タレイア・クァルテット特別演奏会実行委員会 DUCK KEN  
   https://forms.gle/PgzgmyfUppo6YRGF6
販売:https://teket.jp/9041/31169


2014年に東京藝術大学で結成。今年10周年を迎えたタレイア・クァルテット。5月8日(水)、五反田文化センターにて行われる特別演奏会「愉・舞・祈」の聴きどころと、結成からこれまでのこと、クァルテットの音楽作りについてお話をうかがいました。


特別演奏会のプログラムは、過去を振り返るのではなく、近い未来を見据えての選曲、とのこと。これからのタレイア・クァルテットを語る上で、重要な演奏会になることは間違いありません。


写真左より、山田香子(1stVn)、二村裕美(2ndVn)、石崎美雨(Vc)、渡部咲耶(Va)

ライフステージの変化も乗り越えて

Q結成10周年という節目の年を迎え、今のお気持ちは?

山田香子(1stVn):私にとっては、「あっと言う間の10年」でした。これまでもいつも全力で演奏してきましたが、10周年という特別な年。5月8日(水)に行う記念演奏会は特に、ギアを入れ直して本気で取り組みたい、という思いです。
また、昨年臨んだ大阪国際室内楽コンクールでボルドー弦楽四重奏フェスティバル賞をいただいたのですが、その副賞、「Festival Vibre!」(マスタークラスの受講やコンサート出演が予定されている)が特別演奏会の後に控えていますので、5月は熱量MAXの私たちの演奏を聴いていただけると思います。

二村裕美(2ndVn):タレイア・クァルテットはこれまでに2度2ndヴァイオリンが交代しており、私がメンバーに加わって今年で6年になります。加入した当時、タレイア・クァルテットは既に国際コンクールで実績を上げており、次々とお仕事が入ってきていました。そうした状況下で私が初めて演奏会で皆と弾いたのはバルトークの5番だったんです。
メンバー各々の呼吸のタイミングやアプローチの仕方など、まだ分からないことが多い状況でいきなりバルトーク!(笑)。でも、全員の息がバッチリと合った瞬間がたくさんあって、最高の気分で演奏できたのを今でもよく覚えています。また、化学反応のようなエネルギーが「スゴイ」と感じる瞬間がたくさんあって、本当に幸せなひとときでした。
それから、皆とたくさんのリハーサル、本番を経験して、今では各々のタイミングやアプローチの仕方が分かるようになって、初めて取り組む作品であっても、このフレーズはこんな風にくるだろうな、ここはこんな音程感でくるだろうな、と瞬時に、直感的に予測できるようになりました。
そして、より演奏を楽しむことができるようになりました。このように皆との距離がグッと縮まり、アンサンブルを思い切り楽しめるようになった状態で、メンバーと共に結成10周年を迎えられることが、私はとても嬉しいです。高みを目指して、もっとがんばりたい、という気持ちです。

石崎美雨(Vc):応援してくれる方々がいらっしゃるおかげで、楽しく10年続けることができました。また、メンバー各々ライフステージが変わってもここまで続けてこられたのは、それぞれのがんばりがあったからこそだと思っています。でも……、私たちはこの先50年くらい続けていく予定なので、まだまだこれからなのです!

渡部咲耶(Va):私は、タレイア・クァルテットが10年続けてこられたのは「奇跡」と感じる部分と、「自然の流れだった」と感じる部分とが半分ずつ。そんな気持ちです。そして、結婚、出産、育児、それらとクァルテットの活動とを両立してこられたのは、このメンバーだからこそだと感謝しています。
これまでの活動を振り返ると、私たちはまだツィクルスを経験していないし、まだまだこれから取り組みたい作品もたくさんあって、10年経ちましたがまだ序盤。
結成からこれまで、コンクールやオーディションに挑戦して、外から与えられる目標に向かってがむしゃらに努力し、成長を目指す日々でした。そうした段階を経て、この先の10年はおそらく、私たちならではの個性を追求していかなければなりません。そのように方向性を変えていかなければならないのではないと感じているところです。

Q室内楽の中でも特に難しいと言われているクァルテットに、可憐に、美しく取り組まれている様子が印象的ですが、やはり各々の努力と工夫、そしてお互いの理解があってこそなのですね。

渡部:私は産後1か月くらいで活動を再開しましたが、皆には大変な思いをさせてしまいました。今も子育て中で、リハーサルを自宅近くのスタジオで行うなど、協力してもらっています。

山田:それはお互い様です。渡部さんは出産前後、とても体調が良く、産休の期間もとても短かったのですが、一時的に他の奏者に応援をお願いするなど、状況に合わせて対処していくことを想定していました。
これから先、出産・育児だけではなく、体調不良や怪我などで休まなければならないメンバーが出てくることもあるかもしれません。予期せぬことがおこっても臨機応変に柔軟に対応していけたらと思っています。

未来を見据えたプログラム

Q選曲はどのようになさったのですか?

山田:バルトークの作品に取り組みたいという思いがあって、弦楽四重奏曲第6番をメインに据えることにしました。それに合わせて2作品を選びました。メンデルスゾーンはボルドーでも演奏予定です。
結成からこれまでを振り返って思い出の曲をというよりも、未来へ向かってこれから挑戦していきたいことをプログラムに詰め込みました。

Qバルトークの作品のどういうところに魅力を感じる?

渡部:スコアで勉強していてもまだ分からないところが多いのですが、弾いたときにパズルのピースが合ったような気持ち良さを感じるところがあったりするんです。私はそういうところに惹かれます。
それに、もともと好きな作曲家で、これまでにクァルテット以外の曲も結構弾いているんです。でも、どの作品も難しいですから取り組むときに、ちょっと背筋が伸びるというか、気合いの入る作曲家のひとりでもあります。
難しい、というのは技術的なことばかりではなく、バルトーク自身が何を考えて作ったのか想像しようとしてもなかなかそこにたどり着けないんです。時代背景など調べたりはするのですが。そういう難しさが魅力でもあります。

石崎:でもバルトークは楽譜に全部書かれているので、極端な話、楽譜通りに弾けば良い、という側面もありますよね。ベートーヴェンのように「宇宙」を感じるようなところに到達しなければ表面的な演奏になってしまう、というような難しさはないように感じます。

二村:私にとっては思い入れのある作曲家、ですね。タレイア・クァルテットで一番最初に取り組んだのがバルトークでしたから。
その時に弾いたのは第5番で、バルトーク作品の中でも音数が多くて一番扱いにくいと感じる作品でした。でもその分発見も多かったんですね。例えば、全楽章弾いた時に、この旋律とこの旋律が繋がっている! といった箇所を楽章を跨いで発見することがあって、探偵になって推理をしているような面白さがありました。
そして、そのような発見やアイデアをお互いに出し合って音楽を作っていく、という作業を経験して、当時からバルトークはタレイア・クァルテットと相性の良い作曲家のひとりだと思っていたんです。なので、今回の6番も本番で弾くのが今からとても楽しみです。

山田:私は藝大2年生のときにバルトーク弦楽四重奏団のメンバーだった故ペーター・コムローシュ先生に師事していたことがあって、そのときに先生が「ハンガリーと日本は、昔同じ農耕民族だったことや言葉の発音など、近いものがたくさんあって、踊りのリズムにも共通点があり理解しやすい」と話されていました。タレイア・クァルテットでバルトークを弾くとき、そのお話をよく思い出すんです。
たしかに、難しい作品ではあるのですが、似ているかもしれない、と感じるところがあり、音楽に集中できます。そういう点でも私はバルトークがすごく好きなんです。
そして、第6番はやはりヴィオラですね。ヴィオラがすごく活躍する作品。

渡部:多分本番は緊張すると思います(笑)。でも、注目して聴いてほしいですね。

山田:それから、この作品は戦時中に書かれたこともあり、それが故にちょっと皮肉っぽいところがあるんです。また、ものすごくおどけたところが合ったかと思うと、軍隊の行進のような雰囲気があったり、冒頭は哀しい旋律ですし。

石崎:他の作品よりも精神性が問われる作品ですね。まだそうした心情が理解し切れていないのですが……。

山田:戦争は実際には経験したことはなく、そこから受ける感情は想像するしかないのですが、それが難しいです。
状況は全く異なりますが、世界的な異常事態という点で、コロナ禍で受けた感情を作品に込めたいと思う部分があります。
注目して聴いていただきたいと思います。

授業を受けるために結成したクァルテット

Q結成は藝大在学中でしたね。

山田:2014年に大学で室内楽の授業を受けるために組みました。そのときは、まさか10年続けていくなど全く考えていなかったのですが、翌年のザルツブルク=モーツァルト国際室内楽コンクールで第3位、第3回宗次ホール弦楽四重奏コンクール第2位を受賞。
2016年に2ndヴァイオリンの交代があったのですが、イギリスの湖水地方の各地でリサイタルを行って、その頃から少しずつ、「長く続けたい」という思いが強くなっていきました。その後、第4回宗次ホール弦楽四重奏コンクール第1位を受賞。そして2018年に再び2ndヴァイオリンの交代があって二村さんが仲間に加わってくださり、現在に至ります。
 
石崎:結成当時、「クァルテット奥志賀」がすごく活躍されていて、私たちもあんなふうになれたらいいな、という憧れがありました。

山田:そうでしたね。憧れの存在があって、私たちもやってみよう!という意気込みはもっていました。

初めての合わせはタイミングから合わない!?

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