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Vol.6 佐藤公威 武士の様な漢の生き様を目に焼き付けたい

この記事を読んだ時、
ある一文にドキッとさせられた。

「新潟で(選手生活の)
 締めくくりをしたいのです」

36歳・佐藤公威、プロ16年目。
年齢やキャリアを考えれば
この言葉も「時の性」のように感じるが、
縁あって1月に佐藤を取材した時には
「40歳まではバリバリ出来ると思います」
と力強く語っていただけに、
余計にドキッとした。

僕自身にとって彼への取材が
忘れられない思い出となっている。

出会った翌日には
10時間以上もの時間を共にし、
競技に向き合う姿勢からは「熱い情熱」を、
取材に向き合う姿勢からは「真摯な人柄」を
知った。

確かに1つだけ、淀みなく言えること。

それは、たった一日過ごした時間が
「今後も応援したい」と
思わせてくれるには十分だったということ。

端整な顔立ち、モデルのような出で立ち

初めて会ったその取材とは、
1月、札幌で開催されたAll-star Game 2020。

当時佐藤は、
島根スサノオマジックに所属していた。

その島根スサノオマジックの経営権を持つ
バンダイナムコエンターテインメントとの
コラボ企画で、
3Pコンテストに出場する佐藤を
1日密着することが決まっていた。

<大会前日>
出場するトップ選手達が続々と北海道入り。
新千歳空港で
大掛かりな記者会見が行われただけでなく、
地下道にはあちらこちらに
Bリーグオールスターの文字が踊り、
いくつかの地元TV局ニュース番組に
選手達が生出演する盛況ぶりだった。

コンテストのみに出場する佐藤は
夜にホテル入りするとの事で、
簡単な顔合わせと打合せの場を
設けさせてもらう事になった。

リーグが取材用に抑えていた部屋を
ご厚意で貸して頂き、
不自然にベッドとイス並べられた部屋で
少しばかり緊張しながら、到着を待つ。

正直、佐藤に関しては名前こそ知っていたが、
シーズン通して試合を追っていた訳でもなく、
どんな雰囲気の選手なのか、
企画に対してどんな反応をするだろうか、
全く想像できていない事も、緊張の理由だった。

すると、電話が鳴った。
声の主は佐藤だ。

「初めまして、佐藤です。
 今空港に着いて
 自力で札幌のホテルに向かうので、
 あと1時間ぐらいで到着すると思います。
 また連絡します!」

まるで営業マンのように丁寧な口調に
声のトーンがとても柔らかく
一瞬にして緊張が解けたのを覚えている。

「それにしてもAll-starに選出されるほどの選手も
公共交通機関を使い自力でホテル入りするのか」
などと、お節介な心配をしながら約1時間。

部屋のインターフォンが鳴りドアを開けると、
そこには190cm近いスラっとした長身に
黒のシックなロングコートが似合う
文字通りのハンサムGuyが立っていた。

「めちゃめちゃイケメンですね」

思わず、ミーハー心が口から出る。

<オシャレな公威さん>

打合せでは
こちらの一方的な要望や希望にも
嫌な顔一つせず、
終始真剣な面持ちで話を聞いてくれた。

「取り上げてもらえる事が嬉しいので...」
「イイものになるために全力で協力します」

「ベテラン選手だから」という一言では
片付けられないほど、
とてもプロ意識が高い魅力的な選手
という第一印象を持った。

「初めまして」が「特別な存在」に

<大会当日>
翌日は朝11時から撮影開始。
座りのインタビューに始まり、昼食、会場入り、
w-up中、コンテスト、舞台裏のインタビューと
10時間ほぼべったり、カメラが付いて回った。

普段の取材は長くても1時間ほどである。
試合の舞台裏に密着した撮影の経験もあるが、
選手と気軽に話せるタイミングはほぼない。

だが、今回のロケでは
カメラを回してない間もたくさんの話をした。
それを一緒にいる時間もそうだが、
佐藤の醸し出すオープンな空気が
そうさせてくれたのだと思う。

例えば、チームが2部に降格していた時の苦労話。
佐藤は島根で2部降格と1部昇格を経験している。

「観客はまばらの場所も多くて、
 真冬では暖房がない体育館で試合をする事も。
 デカいストーブを炊きながら
 試合をしていた事もありましたよ。
 有難みを改めて感じますね」

冒頭に記したキャリアの今後に関しても。

(5月に引退した)折茂さんみたいに
50歳近くまではできないけど、
気持ちも体もあと5年は全然問題ないですね。
「引退」は全く考えてないです。

こんな風に佐藤は
初対面の人間にも壁を作らず、
内側をさらけ出してくれる。
とにかく全身から溢れ出る「人の良さ」が
応援したくなる魅力ではないかと思う。

この密着企画では
もう1つテーマにしていた事があった。
それが「交流」と「気づき」だった。
コンテストの結果だけを密着するのではなく、
トップ選手が集まる祭典で、
普段なかなか話す機会のない他クラブの選手達と
佐藤自身が交流を通じて考えや想いを知る事で、
何か新しい気づきになったらいいな。

図々しくも
そんなキッカケにしたいと思っていた。

企画は佐藤の献身的な協力もあり、
佐藤自身だけでなく、
色んな選手の考えや視点を知れる
コンテンツにできたと思う。

オフコートでもプロフェッショナル

2ヵ月後。
今度はチームの密着企画で島根を訪れた。
全国的にまだ緊急事態宣言は出ておらず、
島根と鳥取だけが感染者「0」という状況だった。

しかし、リーグ戦は1ヵ月の中断中、
再開に向けてはギリギリまで協議が続いていた。

島根

体育館に着き、撮影の準備をしていると、
コチラの姿に気付いた佐藤の方から
駆け寄ってきてくれた。

「お久しぶりです。
 先日はありがとうございました」

「色々ありましたね」と、
1月の取材を改めて互いに労う。

練習前の貴重な時間にも関わらず、
家での過ごし方やチームの現状など、
近況を教えてくれた。

「人を本当に大切にする選手なんだなぁ」
2ヵ月前にも抱いた印象が心地よく蘇った。

そして練習が始まるとキリっと目つきが変わり、
チームの先頭に立って声を出しながら、
一切の衰えを感じさせない
エナジー溢れる運動量で体育館を「熱」が覆う。

チームメイトと連携が合わない時には、
声を荒げて不満を言うのではなく
身振り手振りを交えながら丁寧に丁寧に
コミュニケーションを図っていく佐藤。

そんな練習中の姿を見ていると
取材への対応と変わらない
佐藤の優しさや真摯な人柄が感じられて
なんだか嬉しくなった。

そして練習終わり。

 「せっかくの島根滞在だから
 美味しいもの食べていってください」

と、島根の選手がよく行くという
お店を教えてくれた。

本当にどこまで素敵なお方なんだろうか。

その夜はご紹介に預かったお店で
ありがたく島根自慢の郷土料理を堪能した。

翌朝、そのことを報告すると
佐藤は顔をクシャっとさせて、

「やっぱり言った通り美味しかったでしょ」

と言わんばかりに
嬉しそうな表情を浮かべていた。
「この人はやっぱり素敵だな」と
応援したい気持ちが強くなったのを覚えている。

<島根に来たらこれ!公威さん大絶賛の赤天>

赤天

モモ焼き

「新潟で(選手生活の)締めくくりをしたいのです」

島根を訪れた我々をあれだけ嬉しそうに
「おもてなし」してくれた佐藤が
新シーズンの戦いの場を新潟に移す。

佐藤にとっては地元であるだけでなく、
プロキャリアの半分以上を過ごした
特別な場所だ。

「新潟で(選手生活の)
 締めくくりをしたいのです」

この言葉に込められた想いは
また改めて伺いたいが、
武士の様に義理堅い漢のことだ。
選手キャリアの全てを捧げる「覚悟」は
聞かなくても、伝わってくる。

この発表のおかげで新シーズン、
必ず新潟に行かなければならない
用事が出来てしまった。

勝手だとは分かっているが、
佐藤にはその責任を取ってもらい
必ずやコート上で大暴れしてほしい。

そして、その為にも
この状況が一歩でも好転し、
観客で埋まったアリーナで応援できる未来を
切に願っている。

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