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Vol.3 太田敦也 泥にまみれるビッグマン

「ただ、デカいだけ」。
スラムダンクに登場する陵南の魚住 純は、
そんな先輩達からの陰口に退部を考えたが、
名将・田岡茂一のある言葉に引き留められる。

デカいだけ?結構じゃないか。
体力や技術は身につけさすことは出来る。
だが、お前をデカくすることはできない。
たとえオレがどんな名コーチでもな。
立派な才能だ。

高さは「才能」。
身長206cm、体重112kgという
恵まれた太田の体もまた
大きな武器である事には違いない。

しかし一方で、
スラムダンクで最も好きな選手は
海南大附属の高砂 一馬だと言う。
牧や神のように派手さはなく
口数も多い方ではないが、
チームの為に献身的に体を張り続け
常勝軍団のレギュラーを掴んだ男だ。

その事からも
太田の武器が「高さ」だけではないという事が
お分かりいただけるだろう。

恵まれた体格に甘えない泥臭さ

太田は日本バスケ・黄金世代と言われる
1984~85年生まれの一人。
同期には竹内兄弟やアルバルク東京の菊地、
石崎、岡田、引退を表明した正中らがおり、
2007年のユニバーシアードでは
世界の強豪相手にベスト4入りを果たした。

中学3年時には
身長がすでに2mを越えていたという太田。
その存在は早くから全国に知れ渡り、
高校進学時の記憶として竹内 譲次は
こんなエピソードを話している。

あの時はジュニアオールスターに出た
太田の方がすごかったです。
全国から70校くらいの誘いが来たと
言ってました。

体格でどうしても世界に劣る日本にとって、
数少ないビッグマンはゴール下の最後の砦。
長い間、代表選手として
日本のリングを守り続けてきただけでなく、
近年はNBAでプレー経験を持つ
屈強な外国人選手がBリーグに来る事も多い。

「ゴール下を制する者が試合を制す」
という言葉があるように、
激しいフィジカルコンタクトを
1試合の中で1プレー毎に繰り返すゴール下は、
まさに戦場だ。

「ケガとは常に隣り合わせ」のポジションだが、
その恐怖心を乗り越えて、
時には自分より大きな巨体にぶつかっていく。

味方のフリーなスペースを作るために
スクリーンをかけ続け、得点のお膳立て。
いわばアシストのアシストは
決してスタッツには残らないが、
高さだけに甘えない献身的なプレーの連続が、
冒頭で紹介した高砂一馬を連想させるし、
太田が長らくトップ選手でいられる理由だろう。

そんな主戦場の過酷さを
太田は包み隠さず、こう語る。

Q: ガンガン来るオフェンスマンに
 思わず出てしまう言葉や
 ディフェンスはありますか?
A.またって思います..めんどくせぇって。
  正直ね。痛いし、疲れるんですよ。やるけど

この回答には、だいぶ笑った。

所属クラブの公式アカウントで
正直な告白を等身大に言えてしまう太田。
散々「高さ」や「献身的なプレー」を
武器として挙げてきたが、
実はこの人間性こそが、
太田最大の魅力ではないかと思っている。

みんなが大好き"太田さん"

6月4日に36歳を迎えたベテランは、
20代の若手選手達にとって
アニキと言うよりは
お父さん的な存在に近いと感じる。

いずれにせよ一つ確かな事は、
皆が太田を大好きであるという事だ。

試合前の相手選手との絡み、
練習中の何気ないコミュニケーション、
SNS上でのやりとりからも、
それは垣間見ることができる。

そしてその"愛され力"は、
各チームのトップが集う代表でも
存分に発揮されている。

▼「皆から愛される太田」が分かる動画がコチラ

だめだ、何度見ても微笑ましい...

このように後輩選手からもイジられてしまう
気取らないキャラクターが
愛される秘訣なのだろう。

黒子こそカッコいい

取材でカメラを向けると、
太田がよく冗談交じりに言う言葉がある。

「えーなんで僕なんですか。」
「僕なんかに聞くことないでしょ笑」

そんな調子のまま
本題のインタビューに入っていくのだが、
それでもスタンスは変わらない。
カメラを向けても変に取り繕うことはせず
なんと言うか、いい意味で自然体なのだ。

この記事でも、そんな一面が見てとれる。

太田はいつものくだけた感じでこう言う。
「スポットが当たるのは2番と3番で、
(田中)大貴とか比江島(慎)あたりに
当てておけばいいんです」

あくまで黒子に徹し、縁の下の力持ちでいい。
だけど、チームには絶対に欠かせない選手。
それが太田敦也という唯一無二の存在だ。

「いつまでやっているんだ」と周りから言われるぐらいずっとプレーしていたい

こんなエピソードがある。

太田は長らくクラブでも日本代表でも
背番号「8」をつけてきた。
高校で初めて代表に選ばれてからずっとである。

しかし去年のW杯前、
その愛着ある背番号「8」が
突如「4」に変わった。
その理由は、
NBAドラフト1巡目指名に湧いた八村 塁が
背番号「8」を望んだから。

その相談に快く快諾したと言う。

番号とかはどうでもいいんですよ。
着けたい、着けなきゃいけない人が
着ければいいので僕は気にしません。
でも、バスケットのこと、
コート内の事では一歩も引くつもりはないです。

ファンにとっては嬉しい事に、
日本バスケ界にはアメリカで活躍する
八村塁や渡邊雄太、馬場雄大といった
新たな才能が次々に芽吹きつつある。

来年2021年には、
太田の昔からの夢であるという
オリンピックが開催される。
これまで代表を支えてきたベテラン勢にとっても
安泰な席は用意されておらず、
競争はいっそう激化していくだろう。

もちろん太田が
その大舞台に立つ姿を期待しているが、
個人的にはその先も一秒でも長く
現役でプレーする太田の姿を追いかけたい。

レジェンド折茂が先日、
49歳で27年間の現役生活に幕を下ろした。

「勝手なお願い」だとは分かっているが、
太田にはそれを超える50歳まで
現役を続けてほしいと、密かに願っている。

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