建築への妄想力を高め、おうち時間を充実させてくれる「オススメ絵本リスト」
子どもが読んだり、読み聞かせしてもらったりすることを想定しているにもかかわらず(だからこそ?)、建築への妄想力を掻き立ててくれる。そんな絵本をあつめたオススメ絵本リストをつくってみました。
外出自粛のコロナ疲れや、在宅「勤務」かと思いきや在宅「育児たまに勤務」みたいな状況におかれている今、おうち時間の充実は喫緊課題。
そんなとき読書はいいよねー、といいつつも、気持ちが晴れずあまり集中できなかったり、老眼デビューで中公新書のレイアウトがシンドイとなってきたりすると、なにげに絵本がいいです。
子どもに読み聞かせをせがまれるステージの方なら、子どものためを装いつつ、自分の読みたい絵本を採用すれば、趣味と実益が両立します。
気軽に読める絵本ですが、子ども向けとはいえあなどれません。子ども向け「だからこそ」実は深く本質的な部分にまで触れられていることに驚くこともしばしば。そんな絵本たちに導かれて、建築への想像力や妄想力を高めてくれる。そんな絵本を以下にご紹介します。
建築の専門書や実際の建築に触れるのとはまた違う角度からの体験は、めぐりめぐって、よりよく建築を味わい楽しみ愛するキッカケになるに違いありません。そんなこんなで、以下、「建築への妄想力を高め、おうち時間を充実させてくれるオススメ絵本リスト」を独断と偏見のもと思いつくままに挙げてみます。
チゾン+テイラー『バーバパパのいえさがし』
まずは定番のバーバパパ。元設計士と数学教師の夫妻が描く名作シリーズ中、住まいを取り上げた『バーバパパのいえさがし』。画一的な団地ではなく、住み手の個性を活かしたセルフビルドを貴ぶ姿が描かれます。
大串ゆうじ『ねたあとゆうえんち』
眠りを扱う絵本はあまたありますが、この『ねたあとゆうえんち』は、寝た後はワンダーランドで、眠っているのでそれに気づけない、という謎(だけど大いに共感できる)設定。ベッドが変形、ベルトコンベアに乗って、レトロで狂気的な世界をめぐります(笑)
ケヴィン・ルイス『おうちにいれちゃだめ!』
虫やネズミを家に連れて帰ってはお母さんに叱られる主人公。連れて帰る生き物がどんどんスケールアップして、ついには・・・。家に連れて帰りたい主人公と家に招き入れたくない母親。ふたりの着地点は。建築を開くことと閉じることを考えるヒントにあふれた絵本です。
バージニア・リー・バートン『ちいさいおうち』
いわずと知れた名作絵本。田舎にたたずむ小さなお家を開発の波が襲います。大きなビルに囲まれるようになったそのお家の運命は。今読むと、自然礼賛・都市文明批判といった単純なメッセージではないことに気づきます。
おおでゆかこ『しろくまくつや』
かわいい白熊一家の家業は靴屋。店舗兼自宅は巨人の靴の転用建築。断面図解や室内パースも楽しく、巨人や小動物といったスケールが全く異なる相手への靴づくりが思わぬ面白さや驚きをもたらすのも魅力です。
高野文子『しきぶとんさん かけぶとんさん まくらさん』
漫画家・高野文子の絵本デビュー作。「寝た後」の怖い夢やオネショといった危機に対して、主人公は寝具との連帯によって乗り越えようとします。その毎日の儀式がユーモラスに描かれます。
なかがわりえこ他『そらいろのたね』
かつて三澤千代治は未来の住宅は畑から育つかもと言いました。まさに種から生まれる家の話。家はどんどん大きくなり、収容人数も増加。密になりますが、所有権を主張するキツネがやってきて・・・。
タイガー立石『すてきにへんな家』
芸術家タイガー立石による独特な絵本。古今東西の「すてきにへんな家」を集め、自らの考案もあわせて紹介する内容。世界の名作住宅がたくさん登場しますが、なかなかのマニアックなチョイスに唸らされます。
石崎なおこ『いちごパフェエレベーター』
エレベーターをモチーフにする絵本ってあれこれあるのですが、この絵本は、パフェの断層を高層ビルに見立て、パフェの各階をエレベーターで縦断していきます。似ているものをつなぐ絵本の想像力が炸裂。
加古里子『あなたのいえ わたしのいえ』
加古さんの絵本はどれを取り上げるかとても迷いますが、ベタなところでこれ。住宅に求められる機能をわかりやすく描き出す科学絵本。このお話誕生の背景には、実は悲惨な戦争やその後の復興への思いが込められています。
さとうわきこ『いそがしいよる』
大人気シリーズ「ばばばあちゃん」の第一作。星空を見上げながら眠りに就きたい」という主人公の欲望からとんだドタバタ劇が繰り広げられるお話。充実した就寝を実現するのは、とても忙しい。なぜか。
西内ミナミ+堀内誠一『ぐるんぱのようちえん』
ドジでのろまな「ぐるんぱ」は数々の就職先で失敗を重ねながら、理想的な幼稚園を実現します。幼稚園をはじめるキッカケは受動的で、幼稚園の遊具はみな前職での失敗作。大人になってから読むと、また違う読後感が。
村山桂子+堀内誠一『たろうのひっこし』
引っ越しを描く名作絵本。主人公・太郎のもとを訪れる様々な動物たちは、思い思いに各自の住要求を主張。太郎は見事に彼らの住要求をかなえる「引っ越し」を実現するのですが、その発想と母親の構えに感服。
さて、建築への妄想力を高め、おうち時間を充実させてくれる」と謳ったものの、自分の興味関心や経歴と反映して、なんとも偏りのあるラインナップになりました。きっと皆さん一人ひとりに「オススメ絵本」があると思います。
小さな頃に飽きるほど読んだはずの絵本も、いま大人になって読み返してみると、全く違うメッセージを感じたり、建築への妄想する意外なヒントをみつけたりします。きっとそれは、建築への妄想を広げたい自分の思いを受け止める素敵な曖昧さが絵本にあるからでは中廊下。そう思います。
わたし自身、ふたりの子どもに読み聞かせをする時間から、建築や住宅への妄想をあれこれ刺激されてきました。そんな妄想から紡いだ文章をあつめたのがマガジン「絵本読み聞かせノート」です。もしよろしければお目通しください。
あと、推薦図書のリンク先がAmazonになっていますが、購入にあたっては、可能な限り日ごろ生活している地元の本屋さんを応援したいものです。
大人にこそ響く絵本の魅力を味わいつつ、おうち時間が充実することを願っております。それではよい旅を。
(おわり)
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