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大黒柱をささえるママへ|1966年『パパと健康』を読む

今日のジャケ買い。近藤宏二『パパと健康:フジサワホームドクター』(藤沢薬品工業、1966年)。高度成長まっただなか。民間銀行による住宅ローンが普及しはじめた頃の本です。

発行元は藤沢薬品工業で非売品とあるので、たぶん販促品として簡易的な家庭医学書として頒布されたもののようです。おなじシリーズに『赤ちゃんと健康』を確認済で、ひょっとしたら『ママと健康』もあるのかも。

で、この『パパと健康』という書名がなんとも秀逸で、家庭での健康管理という主旨であったり、そもそも読者想定されているのがママであることも含めて、ザ・戦後日本社会な装いとなってます。

カバーに付された写真は、平屋建てのマイホームの前でパパの出勤を見送る妻と子が写っています。しかも子どもは当時の家族計画からして常道の二人。未就学児を抱く妻は専業主婦でしょう。

大きく画面を占めるパパとその脇にうつる妻子は家型の枠で囲われています。それは物理的な家屋形態であるのみならず、心理的あるいは規範的な家族形態とダブルミーニングになってる。

冒頭、著者の医学博士・近藤宏二(1910-1990)は「パパの健康設計」と題してこう語り掛けます。

この本を通して、ご家庭の大黒柱であるパパが、いつまでも元気で長生きをという、妻や子どもたちの願いが果たされるための医学知識をお届けします。

近藤宏二『パパと健康』

そしてさらにこう続けます。

パパは家庭におけるいちばんの年長者、そして家庭を養い、社会のためにも働く責任のある職業人、複雑な現代の世の荒波を乗りきって、丈夫でがんばっていただかなくてはなりません。

近藤宏二『パパと健康』

いうなれば、妻は夫の健康管理者ともなって、パパの健康つくり、長寿計画の道案内をしなければなりません。(…)どうか、それぞれの立場で、パパ自身の注意、ママのパパに対する愛護と激励によって、パパが家庭の支えの柱として長く活躍されますよう、それを祈って、著者の言葉といたします。

近藤宏二『パパと健康』

「ご家庭の大黒柱」としての「パパ」とそれを支え、そして扶養をうける「ママ」と子どもたちという構図は、そのまま戦後日本におけるもろもろの社会保障の制度設計に対応しています。

とかなんとか考えながら、この本『パパと健康』の表紙をながめていると、もはや戦後日本社会の宗教画といってよいのでは中廊下。そう思えてきます。

(おわり)

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