見出し画像

ふしぎ話 第一夜|泣き声

私が高校生の頃に体験した話です。

高校3年生の時に学校で腹痛に襲われ、病院に行ったところ虫垂炎(盲腸)と診断され、緊急手術をする事になり1週間程入院しました。

痛みが酷かったので全身麻酔で手術をする事になり、手術室に入り麻酔科医の先生が「3秒数えますね~1・・・」というところで記憶が無くなり、眼を覚ますと真っ暗な病室で、色々な管につながれて横になっていました。

朝になると、回診があり、病室の様子がわかりました。

私が入った病室は4人部屋で、私とお爺さんの2人しかませんでした。

病室を出るとすぐナースステーションがあり、ナースコールの呼び出し音や、看護師さん同士の話し声が聞こえてきました。

手術の翌日だったので、傷が痛み身動きが取れず、ひたすら横になっていると両親が見舞いに来てくれたり、学校の先生が来たり等で意外と忙しかった。腸をきったせいか食事等は無く、ひたすらテレビを見ていました。

日も暮れて消灯時間になったので、目を閉じるのですが、ナースステーションからナースコールの呼び出し音や、なんの音か分からないピコーンみたいな機械音が聞こえてきて、気になってなかなか眠れませんでした。

しばらくすると、遠くの方で

「オギャ・・・オギャー・・・オギャー・・・・」

と赤ちゃんの泣く声が聞こえてきました

赤ちゃん?小児科の病室か産婦人科の病室が近いのかな?と思いました。

赤ちゃんの泣き声は朝方まで聞こえていて、気になって眠れませんでした。

その次の日の夜も、その次の日も赤ちゃんの泣き声が聞こえていたので、さすがに連日連夜はきついなと感じ、看護師さんに相談しようかと思っていましたが、我慢して寝るようにしていました。

3日もすると、私の体についていた管類も取れて、動ける範囲が広がり、看護師さんからもリハビリがてら歩くように言われ、昼間は病棟を歩くようになりました。

毎晩聞こえる赤ちゃんの泣き声はどこから聞こえてくるんだろうか?と気になり、病棟を歩いてみたんですが、小児科や産婦人科等の案内は無く、あの泣き声はどこから聞こえてくるのかな?と思いました。

4日目の朝の回診の時に、同室のお爺さんが

爺「毎晩、赤ん坊の泣き声が聞こえてうるさい」

医「赤ん坊?泣き声?あ~本当ですか?」

という会話をしており、あーやっぱうるさいと思ってたのは、俺だけじゃなかったんだ。俺が寝ぼけてたり、幻聴を聞いてたワケじゃないんだと思いました。

その後も赤ちゃんの泣き声は毎晩聞こえていました。

向かいのベッドのお爺さんは、その後も回診に来た先生や、看護師さんに、夜の赤ちゃんの泣き声の事を話していましたが、お医者さんや看護師さんは相手にしていないようでした。

私は泣き声に慣れてしまい、段々と眠れるようになりましたが、退院を翌日に控えた夜に、ふと目が覚めると、いつものように赤ちゃんの泣き声が聞こえました。

毎晩毎晩よく泣くな~なんで看護師さんとか、誰もあやしに行かないんだろ?と思いながらまた寝ようとすると、その日の夜は少し違ったのです。

おぎゃー・・・おぎゃー・・・おぎゃー

と遠くて聞こえてたはずの泣き声が、病室の外ではなく、病室の中にいるんじゃないか?というぐらいの近さで泣き声が聞こえるようになったんです。

ベッドの周りを囲っているカーテンのすぐ外から聞こえるレベルでした。

あまりにも近くで聞こえる泣き声に、さすがに恐怖を感じ布団にくるまり、手で耳を塞ぎました。

近くで聞こえる赤ちゃんの泣き声の恐怖に耐えられなくなった私は、ナースコールのボタンを押していました。

すぐに看護師さんがカーテンを開けてベッドの近くに来てくれました。

看「どうされました?」

俺「赤ちゃんの泣き声があまりにもうるさくて」

看「泣き声?本当に聞こえましたか?」

看護師さんがあまりにも疑った様な表情をするので

俺「すいません。もしかしたら寝ぼけたかもです」

看「そうですか、なんかあったら呼んでください」

そう言って看護師さんは病室を出ていきました。

看護師さんがカーテンを開けた際に、カーテンの外をみたのですが、赤ちゃんの姿は見えないが、泣き声だけは聞こえてくるという意味不明の状態でした。

私はその状況が理解できず、あまりの怖さに耳をふさいで布団を被っているうちに、いつの間にか眠っていました。

起きると夜中の出来事が理解できず、あれは夢だったんじゃないか?と思ったので、ナースステーションにまだ夜中来てくれた看護師さんがいたので、僕ナースコール押してましたか?と聞いたら、3時頃に押されたので、私が様子見に行ったじゃないですか~言ったので、あれは夢じゃなかったんだと思いました。

その後、9時になり朝食がきたのでそれを食べていると、母が迎えにきてくれて退院の手続きをしてくれました。

主治医の最後の回診を待っているときに、俺の顔色をを見た母が

母「あんた入院中寝れてた?」

俺「夜に赤ちゃんの泣き声が聞こえて寝れなくって」

母「赤ちゃんの泣き声?」

俺「メッチャ泣いてて、ぐっすりは寝れなかった」

母「それは昨日だけ?」

俺「入院中毎晩。ノイローゼになるよ」

母「本当に聞こえたの?」

俺「そんなしょうもない嘘つかないよ」

母「そんなはず無いよ、この病院今は産婦人科のお医者さんいなくて産婦人科閉鎖してるし、小児科も外来だけだから、子供の入院無いと思うけど」

それを聞いて嘘だろ?と思い、回診に来た主治医に聞いてみたところ、母の言ってた通りでした。

だから向かいのベッドのお爺さんがクレーム入れても相手にしてなかったのか、それじゃー俺も聞いてたあの泣き声なんだったの?

話を聞いているうちに怖くなり、そそくさと退院して家に帰りました。

いま思い返しても不思議な体験したなと思います。

いや、実は赤ちゃん入院してたんじゃないの?と思う方もいらっしゃると思いますが、私はそうであってくれた方が良かったです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?