📗アドバイス

　アドバイスを受けても、「自分のために言ってくれた。」と好意的にとる場合と、「ダメ出しされて、やる気なくした。」と悪意に受け取る場合がある。

　アドバイスの言い方によっても受け取り方は大きく異なるが、誰に言われたかが、大きく影響するのではないだろうか。

　例えば信頼している部活の先輩のアドバイスなら好意的に受け取るだろうし、反抗期まっただ中の親のアドバイスなら悪意に受け取る可能性が高い。

　しかし、受験のアドバイスなどは信頼している先輩の言っていることが信用できるかどうか、かなり怪しい。だいたい、先輩という立場は、自分という人間をかなり盛っているものだ。「俺なんて、受験勉強は3か月だったな。ダラダラ勉強するより、短期集中がいいぞ！」などというアドバイスを真に受けてはいけない。
　先輩のアドバイスより、明らかに親のアドバイスの方が的を射ている可能性が高い。
　それでも、反抗期最中の親の意見は、冷静に受け取れないものだ。

　アドバイスをアドバイスとして受け取るか否かが、人生を決めることがある。「あのとき、あの人の言うことに耳を傾けていれば・・・！」とか、
「なんで、あんな言葉信じてしまったんだろう！」など、とてもよくある後悔だ。

　私にも、あのときのアドバイスに耳を傾けていたら、人生変わっていただろうなと思うことがある。

　私のプロフィールにも書いたのだが、大学を出てからあと、ニートの時代があった。そのとき、父からも母からもせっつくようなお説教は、なぜかなかったのだが、父が夕飯の時、晩酌しながら、ボソッと「仕事見つかったか？」と、珍しく話しかけてきた。
「いいや、まだ。いろいろ考えてるところ。」
「それなら、いいが。実は、会社の知り合いで、コンピューター会社なら、紹介してもらえそうだけど・・・。」
「いや、自分で探すから。」
「わかった。」

そんな、短いやり取りだったと思う。
それ以降、そのコンピューター会社の話は出なかった。

　実は、たまたま食事の時の雑談のように父は話したが、今考えてみると、「ちゃんとした仕事に就けよ。」という「アドバイス」だったような気がする。

　私は、遅れてきた反抗期のような状態で、「親のコネで入った会社など、まっぴらごめんだ！」と、父の言葉に耳を傾ける気持ちなど、内容にかかわらず、なかったのだ。

　その話を、父以外のルートで持ちかけられたとしたら、「お会いするだけでも。」と、なっていた可能性は高い。
　私自身、その当時未来が全く見えない状態で、悩んでいたからだ。

　その後、塾講師のアルバイトに募集し、高校の先輩に拾われて、四半世紀東京で塾講師をするのだが、そのコンピューター会社の話が、まとまっていたとしたら、私の人生はかなり違っていたと思う。

　これは、コンピューター会社の社員が、塾講師より優れているとか、給与の良し悪しとかいう問題ではなく、異なった人生を歩んでいたのが明らかだということだ。

　まず、状況から考えて、家人と出会わなかった。ということは、娘はこの世に存在していなかった。そして、私が今住んでいる地方都市は、家人の実家なので、ここには決して住んでいなかった。つまり、全く違った人生を、あの１、２分の短い会話で決めたのだ。

　そういう人生の岐路は、その時にはわからないのだ。後になって、思い出すと、「あの時だった。」と気付くのだ。

　誰から言われようと、冷静に自分の進む方向を見据えて、ただのアドバイスとして素直に受け取るだけでいいのだ。受け取った言葉が自分の中でどのような化学変化を起こすかは、受け取ってみないとわからない。

　そして、受け取ったならば誰から受け取ったかということは一旦忘れた方がいい。そして、そのアドバイスをちゃんと頭の中の棚に置いておくのだ。それが必要になった時、いろいろ並んだアドバイスはどれも等価となり自分の判断の正確な助けとなってくれる。

　とにかく大切なのは、偏見を持たず受け取ることだ。
なかなか、難しいことだが、人生を大きく変える岐路を、冷静に判断できるかもしれない。

🦉以上

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