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文芸社へ応募、契約する前に

受話器を持ち上げると、相手の声が私の気持ちをざらつかせた。
「家族が出版に反対している」
私は相手をなだめながら「素晴らしい原稿です」「本にする価値があります」「感動しました」と繰り返す。もちろん「ご家族でよく話し合って」というのも忘れない。相手はため息をもらしながら、受話器を置いた。私もまた、ため息をもらすしかなかった。

自らの辛い体験をベースに書かれた作品の応募があった。作品をくわしくは読んだわけではないが、講評だけ読んで連日のように著者に電話をかける。郵送物は速達を使う。
何度も電話するうちに著者が「私の作品のどこに共感したのか」とたずねてきた。
「実は自分も同じ体験があるんです」
口からでまかせだ。著者が泣きはじめた。契約成立まであと少し。

自分の書いた作品を文芸社から出版しようとしている方。出版できそうな版元を探していたら文芸社を知った方。ちょっと立ち止まって再検討してみませんか。あなたが出版に求めているものと、文芸社が提供しているサービスは、一致していないかもしれません。
もちろん、文芸社のサービスがあなたの求めていたものとばっちり合っているのであれば、契約すればよいと思います。
しかし、冒頭で述べたように、周囲から出版に反対する声があがることもあるでしょう。安くても数十万円、高いと数百万円を要する自費出版は、家族内の不和、ひどいと家庭崩壊を招く場合があります。
そればかりか、あなたに有償で出版をすすめてくる人たちは、あなたの原稿をろくに読んでいない可能性大です。くわしくは別記事にします。
ネット上には「文芸社は詐欺」といった記述も見られます。断っておきます。詐欺ではありません。契約にもとづいたサービスを提供しています。ただし、契約に至る過程で、消費者の錯誤を招く営業トークをしている場合もあると思われます。そういうトークをしないと契約しにくいからです。そして、たいてい著者(消費者)が損します。消費者保護の観点から契約前の検討に必要な情報を公開するべきだと考えたのです。
繰り返しますが、本記事は、消費者保護の観点から、自費出版で気をつけるべき点をつづるつもりです。文芸社をはじめとした自費出版を扱う出版社の営業妨害を目的としたものではありません。

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