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著者と自費出版の版元では目的が違う――自費出版が大手書店に並ぶカラクリ

自費出版が主たる事業の出版社の利益は著者からもらうお金

一般的な出版社は、本を作って売って成立しています。著者も自著が売れてほしいと思っているのが普通ではないでしょうか。本が売れなければ両者は利益が出ません。両者の「本を売る」という目的は一致しています。
自費出版が主たる事業の出版社の場合はどうでしょう。制作費は著者に請求します。請求には利益も乗せていますから、本が売れようが売れまいが出版社には関係ありません。
著者は自著が売れるのを望む人がほとんどです。
ここで自費出版の出版社と、著者の目的が違ってきます。

自費出版が大手書店に並ぶカラクリ

文芸社のような自費出版が主たる事業の出版社が利益を出すためには、できるだけ多くの著者と契約して集金することです。売れる作品かどうかは関係ないのです。万が一売れた場合は、出版社にとってボーナスのようなもの。
でも著者は自著が売れなければ投資が回収できません。売って欲しいですよね。著者一人で本を売り歩くなんて非現実的です。そのために出版社があり、流通網があり、書店がある。そう思いたいでしょう。
大手書店の一部店舗には、文芸社の棚があります。文芸社と契約しているからです。その棚をよく見てみましょう。1ヶ月単位で棚の中身が入れ替わると思います。その棚に入った本は、文芸社が書店から買い取るからです。文芸社の棚がある書店にとって、そこに陳列された商品が一切売れなくても、メーカーである出版社が買い取ってくれます。書店の経済的デメリットは少ないのです。
文芸社の棚をよく見てみましょう。もしかすると先月に見かけたのと同じ本が棚にあるかもしれません。それは「平積み」と呼ばれる表紙が見える置き方だったり、「棚差し」と呼ばれる棚から背表紙だけが見える陳列方法かもしれません。この陳列方法も著者と文芸社の契約内容で変ってきます。
善意に解釈すれば、文芸社の棚で平積みになっているのは、書店員が「イチ推し!」と思ってそう並べたのかもしれません。注文がたくさん入ったから表紙が見える平積みになったのかもしれません。ほとんどないとは思いますが。
自著がどれだけ売れているのか、著者としては気になるでしょう。
文芸社から出版すると、著者に対する最終的な窓口は著者サービスセンターという部署になると思います。一般的な出版社には存在しないであろう部署です。この著者サービスセンターが何部売れたのか教えてくれます。
あなたの本は数十部程度は売れるでしょう。なぜなら文芸社が書店から買い取るからです。流通上の数字としては「売れた」ことになります。ただ、読者へそれほどは届いてないと思いますよ。
文芸社が「あなたの作品が書店に並びます」といった案内をするのは嘘ではありません。書店に並べているので詐欺にもなりません。
文芸社と契約すればあなたの作品は本になって書店に並びます。確実に(小部数ではありますが)売れます。まあ、そこにはカラクリがあるわけですが。


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