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「Classic:〆の王道・アレキサンダー」─ていくすりーの酒場学

 デザートカクテルの王道と云えば、やはり「アレキサンダー」は外せません。

 ブランデーにカカオリキュールと生クリームを加えた生チョコレートのようなカクテル。ブランデーと聞くとどうしてもアルコールが強いようなイメージをしますが、このカクテルでしたらある程度、分量を調節する事でグッと飲みやすく仕上げる事も可能です。甘味がしっかり入っているカクテルは、そのバランスが崩れにくく、例えば氷を入れたロックスタイルにしても美味しいです。

 ディナータイムを過ぎ、電車のなくなる1時間前。男女2人で来店し、アレキサンダーで乾杯する……、そんな微笑ましい光景に、もう何度も携わってきました。

 元々は、デンマーク王妃のアレクサンドラが結婚する際に、彼女へ贈った飲み物だとされていますので、その味わいは大人の女性向け……。しかし、男性にもファンが多い1杯ですので、男1人でオーダーの際にもご安心を。

 生クリーム使ったカクテルには通常、ナツメグやシナモンを振りかけるか、混ぜるかする事が多いのですが、これは昔々にまだ乳製品の質があまり良くなかった頃の名残で、臭み消し(飲みやすくする)の役割を持っていました。お苦手な方はバーテンダーに、「ナツメグを抜きで」と素直に伝えれば、快く応じてくれると思います。

 なにやらこのナツメグには中毒成分があるとの事で、長くの間、粉末状の物で少量しか買えなかったのですが、今ではホール(実のまま)でも売っています。お客様へ提供する直前に、その都度削れば香りも素晴らしく、ぜひバーテンダーなら使いたいところ。

 例えばですが、粉チーズに代表されるパルミジャーノなども、ブロックで買い、その料理毎に削ると香りと味が全くの別物。手間かもしれませんが、風味は揮発するモノなのでご家庭でもこだわってみると、パスタやサラダなどがもっと楽しめる筈です。

 おっと、脱線してしまいました。

 クリーム系のカクテルは、シェイクが難しく、腕前が分かりやすく出ると言われています。混ざりにくい材料を使う都合上、ドライなカクテルと比べて2倍近くの時間振り続けますので、連続してオーダーされるとそれはもう大変たいへん……。

 まぁそんな状況も楽しんでしまえるのが、バーテンダーなのですけれどね。

ブランデー+カカオリキュール+生クリーム(牛乳)、ナツメグを最後に振る

『バーテンダーの視(め)』はお酒や料理を題材にバーテンダーとして生きる自分の価値観を記したく連載を開始しました。 書籍化を目標にエッセイを書き続けていきますのでよろしくお願いします。