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「Spirits:スターオブ”ぬるい”マティーニ」─ていくすりーの酒場学

 カクテルに欠かせない主材料の1つであるジン。

 今回は、僕が気に入って使っている1本を、紹介したいと思います。

 現在は、”スターオブボンベイ”という銘柄で、ジンベースのカクテルを創作する事が多く、味はシャープでありながらも、香りが強く残る仕上がりになりますので、ロングカクテル、ショートカクテルを選ばずに、使用しております。

 ボンベイサファイアというドライ・ジンはご存じでしょうか?昔から愛されるその青いボトルはどこのBARにいっても置いてあり、その独自の製法で、ジン特有のジュニパーベリーの香りがそれほど主張してこないため、オンザロックでライムを絞ってなど、主に女性のお客様に好まれている印象があります。

 スターオブボンベイはそのプレミアムタイプとして、通常入れていた10種類のボタニガル(植物由来成分)に加えて、2種類増やす事によって、そのエレガントさを際立たせています。ベルガモットとアンブレットシード……、どちらも日本ではあまり聞きなれない植物ですね。

 他の製品と大きく違う点は、”ヴェイパー・インフュージョン製法”を採用している点。ジンは植物成分を漬けた状態で蒸留をかけるか、蒸留後に漬けるかと各社やってきた所、間の部分、つまり蒸留中の気体となった時に植物を漬けるという事を確立させました。実際どうやっているかというと、ボタニガルのエキスを浸したフィルターを何層にも挟み、そこを通過させるそうです。

 ここまで優秀なスターオブボンベイですが、難点は冷やしすぎると辛くなりすぎてしまうところでしょうか。繊細ゆえに、甘味と香りが閉じやすいのです。モノにもよりますが、自分の場合、常温と冷凍を組み合わせてカクテルの調合をします。冷蔵でも良いかもしれません。

 販売元のバカルディ社は「スター・オブ・マティーニ」なる、ドライなカクテルを推奨していますが、常温から作る”ぬるいマティーニ”こそ、このジンの真骨頂なのでは……、と密かに試し続けています。

『バーテンダーの視(め)』はお酒や料理を題材にバーテンダーとして生きる自分の価値観を記したく連載を開始しました。 書籍化を目標にエッセイを書き続けていきますのでよろしくお願いします。