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「Classic:とりあえずジン&トニック」─ていくすりーの酒場学

 呑み屋へ出向き、最初に使う「とりあえずビール」のように、BARで1杯目の定番といえば”ジン&トニック”でしょう。

 ドライ・ジンをトニックウォーターで割り、ライムを絞るかスライスした物で飾るシンプルなカクテル。1:3程度の濃さで作る事が多いですが、銀座などカクテルを飲みなれている人達が多い街では、1:2程度で希釈し、飲みごたえを出しています。

 元々はイギリスの健康飲料としてトニックウォーター(今の製品より薬効成分が多かった)が飲まれていた時代に、それを同じく薬として元は飲まれていたジンと混ぜたところ、とても好評で、第二次世界大戦後に世界中に広まったそうです。

 まず味に大きく関わるジンの部分ですが、通常はキリッとした口当たりに仕上げるために、ドライ・ジンを使用します。しかしながら、昨今のクラフト・ジンブームも相まって、様々なベースを使用し、アレンジが加えられるようになり、そのお店の顔となるような看板カクテルの1つとして定着してきました。イメージとしては、クラフトタイプのジンを使うと香りが強く、少し甘めになります。何年か前にシンガポールへBAR巡りへ行った際には、時期もあってか、京都のクラフト・ジン「季の美」をハウスに設定しているお店が多いように感じました。柚子が香る、素敵なジンです。

 トニックウォーターは今ではその薬効成分もかなり減らし、甘味炭酸飲料としてコンビニやスーパーでも売られるようになりましたね。よく見かける”シュウェップス”はバランス型。容量も多く、2杯分作れるのでホテルバーなどでも採用されています。”ウィルキンソン”はかなりライトで、昔あったラムネのようなテイストになり、飲みやすい。8年ほど前に解禁された”フィーバーツリー”のトニックであれば、最もキニーネが香り、エレガンス。ただ容量が少ないうえに1本あたりが高価なため、作り手の拘りはそこでも垣間見えるでしょう。

 オーダーの際には何も指定しなければ、そのBARが定めるハウスのスピリッツで作られますが、お客様側から変えてもらうのを要望することは何も悪い事ではありません。色々なベースで、ぜひお試しを。

『バーテンダーの視(め)』はお酒や料理を題材にバーテンダーとして生きる自分の価値観を記したく連載を開始しました。 書籍化を目標にエッセイを書き続けていきますのでよろしくお願いします。