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「竹に花が咲くまでに」─#cakesコンテスト2020

 秋葉原へ降り立つと、駅前の広場では人だかり。なんとも可愛らしい格好をした女性が唄い、踊っている。それを囲むように立つ各々方は彼女と同じように踊る人もいて、じっとその様子を観察する人もいて、あぁこの街は変わっていないんだなぁと思わせる。

「お久しぶりですねぇ」

 声の聞こえる方に目をやれば、ポッと懐かしい顔が1つ。13の頃より知った間柄。フッと男は胸を撫で下ろす。

「随分と、時間が経ったように感じますな」

 歳の同じ男が集まれば、仕事話にも花が咲く。片方はズイと先を行き、やりたかった自身の夢を形作り。もう片方はと云えば、古い仕来りの世界へ嫌気が差し、ようよう自分の行く道を霧をかき分けるように探し出したばかり。

「こんな事を知っていますかな?」

「ほうほう」

「ではこんな話は?」

「ほうほう、ほうほう」

 酒もなくただ真っすぐに、5時間ばかり語り合い、明日もまた頑張れそうだと”燻る”男の顔は晴れやかだった。

 

『バーテンダーの視(め)』はお酒や料理を題材にバーテンダーとして生きる自分の価値観を記したく連載を開始しました。 書籍化を目標にエッセイを書き続けていきますのでよろしくお願いします。