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[note61]今更ながら…

ICTを活用した授業展開

「毎日ちょこっとICT」
私が高校1年生の「公共」(新学習指導要領によって導入された新科目)において生徒に示し、目標としていたテーマである。もちろん、授業は教科書をベースとした担当者共通のプリントであるが、そこに毎回、少しでもICTを活用とすることで意見共有や発信する機会を作ることが目的である。
生徒は全員がiPadを持っている…ところが日常的にiPadを持っていない生徒がいる状況を何とも不思議に感じていたのが5月頃のことだ。
「何で持っていないの?」というのが最初の感想。そして、ほぼ同時に「使う必要性がないから持ってこないのかも…」と感じた。つまり、学校生活においてデバイスは供給しているものの、それを活用する段階に至っていないということになる。ならば「公共の週2時間は少しでも必ず使うから持ってきてねー!」と生徒に伝え、授業でiPadを使うことが当たり前になるようにした。

iPadを日常的に使ってもらいたい

勤務校がGoogleをプラットフォームにしているので、本来であればGoogleのアプリケーションを活用するのが自然だが、生徒が自分のアカウントやPWを忘れることが大きな問題だった。そこで最近はGoogleのアカウントなしでも使えるアプリケーションのURLをQRコード化してプリントに貼り付けたり、スライド上で示してカメラで読み取らせるようにしていた。
この方がアクセスができずに授業がストップするということがなくなる。
授業には流れが大切であるがICTを活用した授業であれば、その傾向はより顕著になると思う。トラブルでストップして調整をしている時間に授業鮮度がどんどん下がっていくことを感じる。それはアプリの不具合だけでなく、HDMIケーブルの断線やPCとの接続不良なども予期せぬトラブルも含む。
だから常にiPhoneをポケットに予備のHDMIとLANケーブルを授業バッグに入れていくようにしている。

私がお世話になるアプリケーション

上で述べたようにQRコードの読み取りだけで使えるアプリが多い。日常的に様々なアプリケーションを活用している方には珍しいものではないと思うが、私が普段使うのは以下のようなものだ。Padlet、Canva(これは基本的にGoogleアカウントが必要)、Slido、Mentimeter、テキストマイニング(生徒から事前に集約した意見をまとめる際に活用する)などである。多くの場合はクラスの中で意見の共有するために使うことが多いが、Canvaなどはまとめのスライドを作成する際に重宝している。教師側のアウトプットとしてstand_fmに収録した授業概要を聴いてもらうこともある。以前にも書いたと思うが、基本的に自分の手に負える範囲のアプリを活用するように心掛けている。

恥ずかしながら…

こうした「ちょこっとICT」の取り組みは生徒には概ね好評で、友達の意見を聞くことができるのが良い、新しい発見があった、一方通行の授業でないことが良いなどの感想をもらった。特にGoogleアカウントと紐づけしないアプリは設定しない限りコメントは匿名になるので、入力(という形の発言)のハードルが低くなっているようだ。もちろん、匿名であることの責任と授業における意見共有の意義は常々伝えている。そんなこんなで前期を過ごし、一定の手応えを持っていた。ところが後期に入り、どうも授業内の反応が前期とは違うような、微妙な違和感を感じていた。落ち着いて様子を見ても、さほど変わった感じはしないが、それでも何となく前期に感じていた共有の熱のようなものが欠けているような気がしていた
もしかして「ちょこっと」が抜けてしまっていたのでは?そんな疑念を持つようになった。「ちょこっと」が意味することはICTを日常的に使うことはもちろんのこと、ICTの利便性を通じて生徒間のコミュニケーションを円滑にしつつ、授業を双方向で行うことが目的だった。ところが、いつの間にか、生徒がiPadを使って意見をアウトプットし、それを共有する段階で止まっていたのかも知れない。つまり、肝心の生徒間の直接的コミュニケーションが不足していたということだ。ICTはあくまでツール(道具)であり、これを呼び水として、生徒間の直接コミュニケーションに展開しなければ、単にiPadを使っただけになる。こんな基本的なことにいまさら気付くとは…

ちょこっとICT×直接コミュニケーション×解説

こうした事情から、3コマ程度、一切、アプリケーションを使わないで授業をしてみた。本当は使いたいけど、我慢!!と自分に言い聞かせつつ…。
そして、現在はICTで意見共有や全体の声を集約しつつ、できる限り、ペアや小グループによるショートディスカッションやショートディベートを入れるようにしている。もちろん、自分からの解説は適宜入れて、プリント内容の理解は担保する。感覚的には2:4:4くらいの割合だろうか。これはテーマによって変わると思うので、あまり割合には固執していない。

今回のまとめ

ICTと直接的なコミュニケーションは組み合わせが肝心だ。
そんなの当然でしょ!という声が聞こえてきそうだが、実際の授業展開の中で遅まきながら気づくことができた。これからAIをはじめ教室内のICT環境はより先鋭的になっていくだろう。そうした時こそ、対面コミュニケーションの重要性に立ち返ることが必要であろうと思う。どちらが大切なのではなく、それらを掛け合わせたときに大きな力が生まれる、そうした授業を模索したいと思っている。

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