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(小説集) 剣鬼悪辣

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よく分からん奇行短編小説と、連載長編小説です。 暴挙とも思われる事を書いてしまうが、それすら誰かの救いになるのなら、我悪辣の名の下に、太刀を振るう事鬼の如し、そういう事です。
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2019年7月の記事一覧

すべての花を焼き捨てて(5)

すべての花を焼き捨てて(5)

6畳間、ワンルーム。玄関を入ってすぐに、洗濯機。
キッチンには無造作に置かれた、ペットボトルの緑茶。食器は何もない。
部屋の真ん中に置かれたテーブルの上には、100円ショップにあるような鏡、名前も知らないブランドのアイシャドウ、ネイルのトップコート、また緑茶、ヘアアイロン。
僕はベッドまで彼女を運び、身を横たえた。普通、が何なのか知らないが、僕はピンときていない。彼女の部屋のどこを見ても、作り手の

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すべての花を焼き捨てて(4)

すべての花を焼き捨てて(4)

軽んじられる経験はいつだって僕には重くのしかかる。それは、働くようになってからもずっとそう。割り切って軽くしている風を装っても、全身が毛羽立っている感覚は拭えない。

なあ!次、ジントニック3つ、追加!

早くねぇー。

横柄なおっさんの声と嬌声が入り混じる。アルコールと煙草の煙が混じる。昼間に僕等が作ったオリーブや、生ハム、カプレーゼは全て水浸しだ。
僕は苛立ちを気取られないよう敢えて事務的な返

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