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おもしろい文章は取材が9割

ぼくの持論は「おもしろい文章は中身がおもしろい」というものです。

どんなに頑張って上手に文章を書いても、中身があまりおもしろくないと、なかなか読んでもらえません。もちろん文章のスキルが高くてエッセイが書けるような人なら話は別ですが、ふつうの人は中身で勝負するのが正攻法だと思います。

逆に言うと中身さえおもしろければ、それを素直に伝えるだけでおもしろい文章になるはずなのです。

というわけで、今日は「中身」の話です。つまり取材です。

取材でどんな質問をすればいいのか?
質問するときにどんなことに気をつければいいのか?

ぼくなりの取材のコツ、質問のコツを書いてみたいと思います。

過去の話、特に「きっかけ」の話を聴く

取材対象の「現在」の話は、誰もが聞くでしょう。「今どういう仕事をしているのか?」「今どういう状況なのか?」という質問です。これだけだと、あんまり話は盛り上がりません。

大切なのは「過去のこと」を聞いていくことです。現在に至るまでの話を聞くことで、自然と「エピソード」「ストーリー」を聞くことができます。(あたりまえですけどね……。ぜひ、ふだんの雑談とかでも応用してみてください。)

初対面の人に幼少期のことなどを聴くのは憚られるかもしれません。ただ、過去をたどっていくことは現在のその人を理解することにもつながるので、そのことをお伝えしたうえで、できれば聴いておきたいところです。

どういうお子さんだったのか?
スポーツはしていたのか?
どういう教育を受けられたか?

みたいな話から入って、大学、就職、そしてここに至るまでのストーリーを聴きましょう。

特に「きっかけ」にはいろんなストーリーが詰まっています。

たとえば飲食店をやっている人に話を聞くのであれば

「いつからこのお店をやられてるんですか?」
「なぜこの店をやろうと思ったんですか?」

という話を聞くと、そこには感情の絡んだ物語、エピソードが必ず隠れているはずです。

話しづらそうにしていたら、自分の話をする

「あんまり過去のことは話しづらいなあ」という空気を感じたら、ぼくの場合は自分の話をします。「ぼくは高校まで岐阜にいて、そのあと少し神戸にいたことがあるんですよね〜」などとさりげなく自分の話を挟み込むと、相手も心をひらいてくれたりします。

ずっと聴き続けると、事情聴取みたいになって不快に思われるので気をつけましょう。こちらも情報を開示しながら「なんで私ばっかり話さないといけないの?」と思われないようにすることが大事かなあと思います。

「ぼくならこう思いますけど、どうですか?」という聴き方も有効です。

たとえば相手が会社を辞めて起業した人だったら

「ぼくだったら怖くてできないと思うんですけど、なんで会社を辞められたんですか?」

という聴き方をすると、相手の本音が出てきます。

もしくは、

「一般的にはこう思われると思うんですが、なんでそんな選択ができたんですか?」

みたいな「普通はこうですよね」というような聞き方をしていくと相手のオリジナルの考え方が出てきたりします。

悩み相談をする

ダメなのは「取材のための取材」です。「仕事なんで取材してます」みたいな空気を出すと、それは相手に伝わるのであんまり盛り上がりません。

そうではなく、悩み相談をするくらいの気持ちで行くと盛り上がります。ぼくはよくやるのですが、今悩んでいることを相手にぶつけてみるのです。取材のテーマと多少ズレていてもOKです。

たとえば

「会社のルール作りに悩んでるのですがルールって大切にされてますか?」
「人に気を使ってしまうんですけど、〇〇さんも気にしいですか?」

という聴き方をする。

すると相手に「ああ、これが本当に聞きたいんだな!」と伝わって、けっこう前のめりで、そして本音で語ってくれることが多いです。ぼくのほうも本当に聞きたいことなので前のめりで聞くことができます。そこで熱が帯びて、その後の取材がスムーズに行くみたいなことは多いです。

時事ネタから入る、というのもたまにやる技です。

今だったら

「菅総理の対応ってどう思いますか?」
「オリンピックって開催できるんですかね?」

とかです。取材のテーマに沿ってなくてもいいので、今ホットな話題をぶつけてみると、相手の個性とかオリジナルの考え方が出てきたりするのでオススメです。

「いちばん〇〇だったのは?」と聴く

あとは「いちばん〇〇だったのはいつですか?と聴くと、いろんなエピソードが聴けておもしろいです。

「いちばんピンチだったのはいつですか?」
「いちばん大変だった時期っていつですか?」
「いちばんテンションが上がったのっていつですか?

こういう聴き方をすると「うーん、いつかなあ??」というように考えてくれます。

おもしろい話が出てきやすいテーマはいくつかあります。

まずひとつは、やっぱり「お金」です。

「お金って大切ですか?」
「お金についてどういう教育を受けましたか?」
「お金を儲けるにはどうすればいいですか?」

お金に対して哲学のない人はほぼいないので、テーマをお金にするといろいろ話が深まっていきます。

それに似て、仕事観を聴くのもいいです。

「仕事は好きですか? やめたいと思ったことありますか?」
「仕事って大事ですか?」
「なんで働いてるんですか?」

っていうようなことを、いろんな角度から聞いていくとおもしろいです。

あとは「幸せ」というテーマもいいですね。

「何をしてるときが幸せですか?」
「それまでいちばん幸せを感じたのはどういうときですか?」

というような質問です。プライドや嫉妬もおもしろいテーマです。

「〇〇さんって嫉妬することとかあるんですか?」
「ライバルっていたりしますか?」
「プライドって大切だと思いますか?」

みたいなことを聞くと、その人の意外な内面を知れたりします。

どれくらい質問を用意しておくべきか?

事前にどれくらい質問を準備していくかですが、ぼくの場合は10〜15個くらいでしょうか……。ケースバイケースですが。

NGなのは「一問一答」のように聴いてしまうことです。

「〇〇ですか?」
「☓☓です」
「なるほど。次の質問です」

とやると、盛り上がりませんし、それこそ「取材のための取材」になってしまいます。これだと10個用意していたとしても15分とか20分で終わってしまい、「さて、このあとどうしよう?」となります。

なので、ひとつ質問をして「おもしろいな」と思ったら、そこからどんどん深掘りして聞いていくことです。目的は「おもしろい話を引き出すこと」であって「質問をこなすこと」ではありません。なのでひとつの質問で盛り上がりそうであれば、そこをどんどん深めていけばいいんです。逆に「あんまりここは響かないな」という質問はさっさと終わらせてもいいでしょう。

いちおう10個くらい用意しておくと安心ですが、別に10個の質問にとらわれる必要はありません。取材のときに「本当に聞きたいこと」を前のめりで聞く。「頭で考える」というより「心で考えて」聞くというのがポイントかなと思います。

スムーズなのが、最初の一問だけは決めておくことです。

いちばん食いついてくれそうな話とか、相手が直近で考えてそうなことを振ってみるんです。

「そういえばこんなツイートされてましたね」
「御社の話が新聞に出てましたけど、これどういうことなんですか?」

みたいな聞き方をするとアイスブレイクになります。

具体例・エピソードを聴く

あと気をつけたいのが、抽象的な話だけで終わらせないことです。具体的な話、エピソードなどを忘れずに聴きましょう。

仕事観についてたくさん話してもらっても、気づけばずっと思いや哲学、考え方の話ばかりだったりします。これだと、記事におもしろみが出ません。そこで

「そう思われたきっかけは何かあったんですか?」
「それにまつわるエピソードって何かありますか?」

という聞き方をすると、具体例やエピソードが出てきて、おもしろくなっていきます。

おもしろい文章は「抽象と具体のバランス」が絶妙です。抽象的すぎても、具体的なだけでもよくない、というのがぼくの考えです。

抽象的になりすぎていたら、具体的なエピソードを入れる。具体的なエピソードばかりだったら「そこでどういうことを考えたんですか?」と抽象的な話に振ってバランスをとっていくと、のちのちいい原稿になります。

相手が考える時間を奪わない

話しやすいように「相手が考える時間を作る」ことも大切です。

取材では、卓球のようにポンポン返せるような人はまれです。ひとつの質問をしたら10秒くらいは考えたい、という人もいます。質問する側は沈黙が怖くて、ついついその10秒のあいだに余計な口を挟んでしまうのですが、そこは少し我慢です。相手が考えていそうであれば、少し待ってみましょう。

それでもなかなか出てこない場合、本当に30秒とか1分経っても出てこないということであれば、具体的な答えの例を少しアシストしてあげてもいいかもしれません。

「ぼくだったらこう思うんですけど、どうですか?」
「たとえば〇〇ということでしょうか?」
「他の人だとこういうふうに答えられてましたが、どうですか?」

とちょこちょこ「当てて」いくと、相手も答えやすくなるかもしれません。

いろいろ話しましたが、なによりも大切なのは「楽しむ」ことです。

「取材のための取材」ではなく「聞きたいことを聞く」ということ。するとかならず取材は盛り上がるし、おもしろい話を聴けるはずです。結果的に原稿もおもしろいものになるはずです。


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