ヒットと期待値の関係
映画でもアニメでも音楽でも、コンテンツがヒットする要素って、いろいろありますよね。
そもそも作品のクオリティが高いとか、時代に合っていたとか、話題性があったとか、いろいろあると思うんですけど。そのなかに「期待値」というのがポイントとしてあるような気がしています。
もしかしたらめちゃくちゃあたりまえのことを言いそうな気もするのですが、今日は「ヒットと期待値の関係」について考えてみようと思います。
「期待値以上」だったときにヒットする
単純に言うと、期待値を上回ると話題になるし、期待値を下回ると話題にならないという話です。
たとえば、事前PRをものすごく大々的にやって、期待値をめちゃくちゃ上げておくと、作品がそうでもなかったときにぜんぜん話題になりません。
逆にそこまで期待値を上げずにしれっと公開されたとしても、作品が「期待値をすごく上回るもの」だったらめちゃくちゃ話題になります。
作品をヒットさせるためには、事前のPRを盛り上げて期待値を高めるのが定石のように思われているけれど、そうでもないのかなと思うのはそのあたりのことがあるからです。
「君の名は。」と「天気の子」
作品が期待値を上回ると話題になるし、下回ると話題にならない。
「君の名は。」という作品はどうだったでしょうか?
公開時、新海誠監督はアニメに詳しい人の中でその実力は知られていましたが、一般の人の知名度はそこまでありませんでした。つまり「君の名は。」という作品の公開時の期待値はそこまで高くなかった。
そんななか作品の質の高さ、RADWIMPSの印象的な歌などがハマり、「期待値以上」になった。そこであの大爆発があったのはご存知のとおりです。
一方で「天気の子」はどうだったでしょう?
こちらもものすごくいい作品だったのですが、やはり「君の名は。」があったことで世間の期待値は上がりきっていました。
よって、その期待を大幅に超えるのはどうしても難しかった。主題歌も同じRADWIMPSでしたし、ある意味「想定の範囲内」だった部分が大きかったのではないかと思います。もちろんヒットしてないわけではないですが、大爆発まではいかなかったような気がしています。
そう考えると「鬼滅の刃」とか「NiziU」とかは、期待がそこまで高くないなかで生まれました。だからすごく話題にもなったし、ヒットにつながったということがあるんじゃないかなと思います。
「無欲の勝利」という言葉もありますが、無欲の勝利が起きやすいのも、作り手側も観客側も期待値がそこまで高くないからなのかもしれません。
「ギャップ」が驚きになる
人はギャップに驚きます。
「そうでもないかな……」と思っているときに、ものすごいものが出てくると驚く。逆に「すごいはずだ……!!」と期待していって、そうでもなかったときはガッカリします。
低い期待値のときに高いクオリティを出すことができると、そこにギャップが生まれてヒットする。ニトリの家具が売れるのも「お値段以上」だからです。「安いからそんなに期待してなかったけど、けっこういい品質じゃないか!」と期待を超えていくから、驚きにつながるわけです。
ぜんぜん期待してなかった新人がホームランを連発するとものすごく注目されます。一方、期待の助っ人外国人があまり振るわないとガッカリしてしまいます。
この「期待値」をコントロールするというのは、すごく有効だなと思っています。今はSNSなどを使えば「事前の期待値」をある程度コントロールできたりします。あえて期待値を下げておいてハイクオリティのものを出すと、期待値とのギャップで話題することもできそうです。
初版3万部の本と8000部の本
これは、本の世界でも言えることです。
たとえば、何十万人のフォロワーを抱えるインフルエンサーの処女作は期待値がそもそも高い。よって初版の部数も1万部とか3万部などの大部数になったりします。
でもいざ発売してみると「売れなくはないんだけれど、まあまあの売り上げ」だったりする。そこには驚きがないので、増刷がかかりにくいのです。
一方、無名の新人で6000部スタートの本が意外に初速がよくて売れたとします。すると営業部内に驚きが生まれて、増刷がかかりやすくなる。増刷をかけるから書店に山積みされてさらに売れてまた増刷がかかるという「上昇ループ」になります。期待を超えていく、想定を超えていくのでヒットにつながるわけです。
『嫌われる勇気』が初版8000部だったのは有名な話です。(有名でもないか……。)つまり、そもそもの期待は8000部くらいだった。でも作品の質が高く、初速がすごくよかったため、それが「驚き」に変わり、どんどん増刷がかかっていったわけです。
素人がチャンスの時代
だから素人はチャンスです。
プロではない人、知られていない人、素人、未経験者というのは、かなり有利です。
というのも、そもそも期待値がめちゃくちゃ低いからです。期待値がものすごく低いので、作品がそれ以上におもしろければすぐに話題になります。
逆にプロはそもそもの期待値が高いので、 その期待を超えるようなものでないと驚きを与えられないということになります。
素人は期待値が低いので、ものすごいチャンス。
たとえばこういうnoteを書くときだって、みんなそんなに期待をせずに読み始めるでしょう。
だから、読んでみて「期待以上」のものだったとき、それは「驚き」に変わり「シェア」したくなるはずです。
ちょっとがんばって、期待を超えるようなものを生み出してみる。そうするとヒットを生み出すことも夢ではないかもしれません。
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