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車内暴力防止をマーケする。

 これ、何のポスターかわかりますか?
ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、これは某鉄道会社の駅に貼られている、駅の構内・電車内での暴力防止を目的としたポスターです。これから少しすると忘年会シーズン。ちょっとお酒が入って、人とぶつかって、ついカチンときて…なんてこともないとは言えません。ちょうどよい機会なので(w)、今回は「暴力防止という目標達成のために、何を考えるべきか」ということをテーマに、お話をしたいと思っています。

 この広告シリーズ、しばらく前からやっていて「駅構内・車内での暴力は〇年以下の懲役、××万円の罰金になります」という暴力をふるうことで支払う代償にフォーカスをしたもの。または「それはお酒のせいでなく、あなたのせい」という、本人の自覚のなさにフォーカスしたものまでいろいろ。
駅での暴力は減少傾向にあるようですが(※下記サイト参照)、私も各所で、暴力を目の当たりにすることも多く、鉄道各社ともに懸命に暴力防止策を講じていらっしゃるのだとお察します。


 冒頭に挙げた広告は、おそらく鉄道各社から広告会社にオリエンテーションがされ、各広告会社のスタッフが頭をひねりながら「どうしたら暴力防止になるかな?」と考えていらっしゃると思うのです。ただ私が気になるのは鉄道各社のご担当者の方が事前に「暴力の件数」「性・年代」といったデモグラフィック情報レベルでなく、

”どんな人が・どんな状況になると、殴ってしまうのか?”という加害者インサイトを、どれだけ把握なさっているか

ということなのです。

 この活動で本気で効果を追求するなら「どんな人が・どの時間帯に・どんないきさつでカチンときて、殴ってしまったのか」を知ることは、不可欠と思います。人で言えば「年代はどれぐらいなのか(キレる高齢者という報道はありますが、実際どうなのか?)」「本当に喧嘩っ早い人なのか(むしろ会社でも大人しくて、我慢に我慢を重ねた上に…ということではないのか)」となりますし、タイミングで言えば、夜・飲酒時は多いというのは聞いたことがありますが「何曜日が多いのか(金曜日で、気持ちが大きくなっている時とか?)」「季節はどうなのか?(暑さでムシムシしていると、我慢しきれずとか?)」などいろいろあります。この辺りが明確にならず「暴力をふるう人」という十把一絡げ(じゅっぱひとからげ)の理解では、活動の効果はなかなかあがらないのでは…と思うのです。

 この加害者インサイトもさることながら、もう1つ知りたいインサイトがあります。それが

”カチンときて、喧嘩寸前になったけど、抑えることができた”という回避成功者のインサイトです。

 このnoteでも何回かお伝えしてますが、マーケティングをしていく際に「その商品を買っている(うまくいっている)人の買っている(うまくいっている)理由」を探ることはとても重要と思います。なぜなら多くのマーケティングは「買っていない(うまくいっていない)人に買ってもらう(うまくいかせる)」活動であり、そのためには「買っている(うまくいっている)ケース」から学ぶことが最短距離だからです。
 駅の暴力であれば「寸前の状況下で、どうやって怒りを暴力でぶつけずにすんだのか」の理解を知ることは「なぜ殴ったか」の理解とともに、防止策を考えるためには非常に重要な要素と思います。「お子さん・奥さんの顔が浮かんだ」「相手にも家族があると思った」「失業=路頭に迷うイメージが浮かんだ」などなど、いろいろ考えられます。ただこれは一般論ではいろいろ言えますが、車内でカーッとなって、瞬間的に、一触触発の緊迫した状況になった中で、本当に機能する「ムカつくけど暴力はやめておこう」と思わせる要素とは何なのか、とても興味があります。

 何件か目にした暴力状況から私が得た印象は、当事者は両方とも普通の・真面目なサラリーマンが、ストレスたまりすぎてつい…という感じが多いように感じます(完全に仮説ですw)。 一方、この手のポスターは、道徳的なものが多い気がしていて、不幸にも加害者になった方は「そんなことはわかってるんだけど、我慢できなかったんだよ!」と感じているのではと思うのです。そんな考察の上の、あくまで仮説の仮説ですが、ひょっとしたらストレスフルな日々の中、飲んで少し気が大きくなってしまったサラリーマンに 伝えるべきは、

ぶっちゃダメなんだよ!」という説教ではなくて「今日もお疲れさま。頑張ってるよな。お家まで気を付けて。」という承認なのかもしれないと、思ったりするのです。


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