見出し画像

自#077|UKロックと密接に結びついた、私の人生のミッション(自由note)

 コラムニストのしみずちなみさんが、脳梗塞を起こして、現在、リハビリをされている手記を読みました。パソコンのキーボードは、何とか打てますが、話し言葉は、まだ充分には使えない様子です。

 ちなみさんは、11年前、46歳の時に、くも膜下出血で倒れ、脳梗塞が起こり、左脳の4分の1を失って、失語症になります。喋れる言葉は、「お母さん」と「わかんない」の二語だけだったそうです。ある日、リハビリを担当する言語聴覚士の先生が、病室にやって来て、口の中にゼリーを入れて、食べさせてくれたそうです。が、ゼリーと云う言葉が、存在してません。何かやわらかくて、つるんとしていて、フルーティな甘いものを食べたと云う経験をしたわけです。何回か同じ経験をして、ゼリーと云う言葉を覚えて行きます。ちなみに、言語聴覚士は、言葉や聴覚、音声のケアを担当します。作業療法士は、家事や食事などの作業をアシストし、理学療法士は、身体を動かす運動機能の回復を目指します。

 左脳が損傷したちなみさんは、右手が使えず、左手で鉛筆を持つ練習を始めます。幼児がひとつひとつ言葉を学んで行くような訓練をします。標準失語症検査と云うテストがあるらしく、一定レベルのリハビリを終了すると、このテストを受けます。テストでは、聞く力、話す力、読む力、書く力、計算する力などが評価されます。リハビリをするたびに、少しずつ結果は良くなって行きます。

 左脳を損傷すると、右側が使えなくなります。右手が使えないだけでなく、右目の視野が欠け、右足もうまく動かせません。が、幸いなことに、歩くことは、どうにか可能だったようです。

 担当された言語聴覚士の先生は、明るい雰囲気の爽やかな女の先生だったようです。私は、昨年、脳梗塞で倒れた先輩のお見舞いに行きました。リハビリ専門の病院です。リハビリを担当されている若いスタッフさんが多く、元気で明るそうな病棟だと云う印象を受けました。私は、何回か肺炎で倒れて、内科病棟に入院しましたが、内科病棟のあのどんよりした暗い雰囲気とはまったく真逆な感じでした。循環器系の内科病棟は、私のだいたいの推測では、回復されて退院する人と、病院で死ぬ人との割合は、多分、半々くらいです。半分死ぬ(つまりロシアンルーレットの3倍の確率)病棟と、ほとんど全員が回復されて、退院して行くリハビリ病院とでは、明るさが違うのは当然かなと云う気もします。

 リハビリは、一コマ40分で、全国共通だそうです。まったく健常な方でも、集中力が続くのは、せいぜい40分くらいです。学校の授業は、50分です。オープニングの5分くらいは、ネタを使って前置きをし、最後の5分は、ざくっと振り返るとして、やっぱりその日のテーマを伝えるために、集中して使える時間は、40分くらいです。90分とか100分で、授業をやっている大学とか予備校、中学受験の塾などが沢山ありますが、間違いなく、どこかで集中力が切れてしまっています。一コマ40分か50分で、休憩を挟んで、いくつかコマを並べて行く学習の仕方が、やはり望ましいと想像できます。

 ちなみさんは、脳卒中を起こして倒れた、ティラーさんと云う脳科学者の体験を紹介しています。ティラーさんが、入院すると、すぐさま母親が、病院に駈けつけて来たそうです。が、ティラーさんには、母親がそもそも何なのか、分かりません。母親のファイルが消えてしまっているんです。が、母親は、シーツを持ち上げて、ベットに潜り込み、いきなりぎゅっと娘のティラーさんを抱きしめます。頭の中で、ファイルが見つからなくても、抱きしめてくれたら、間違いなく何かが分かります。自分と云うものが大切であるし、自分にとって大切な人がいると云った風なことが、直観で分かるんです。そういう根本のsomethingが回復すれば、リハビリは、かなり順調に進んで行きます。

 ちなみさんの問題点と云うか、弱点は、お母さんには、知らせられなかったと云うことです。病気になったことを、絶対に母親に知らせないでくれと、せいいっぱい努力して、御主人に伝えたそうです。これは、分かります。私だって、肺炎で何回か倒れた時、一度も、母親には知らせてません。母親が心配するとか、しないとかは、無関係です。知らせるべき相手ではないと、脳があらかじめ決定してしまっています。ちなみさんは「子どもを産んだ時も、母には生まれた後に連絡しました。今回も、私がギリギリで、頑張っている時に、母がいたらたまったものじゃありません」と、お書きになっています。

 実は、この手記のこの文章が、私の胸に刺さって、ノートを書く気になったんです。普通の愛情で、結びついている親子にとって、私のノートは、しんどいかもしれません。が、みんながみんな、そんな風な普通の愛情の絆で、結ばれているわけではありません。子供をぶっ殺したい親もいるし(現実、そういう事件はしょっちゅう起こっています)逆も真実です。が、私は、親を殺さなかったし、私も殺されませんでした。中1の冬、殺すか殺されるかのギリギリのとこまで行ってたんです。その時から、お互いに、殺しも殺されもしない、social distanceを取るようになりました。私のノートを読むことで、親を殺さない、子供を殺さないと云う抑止力には、間違いなくなると云う自信はあります。親を殺しそうになる息子を、ぎりぎりのとこで引き留める、これはUKロックと密接に結びついた、私の人生のミッションです。

 言語聴覚士の指導は、最初、顔や料理と云った単語を覚えるとこから、始めるそうです。その後、顔を洗う、料理を作ると云った二語の文章に進んで行きます。私は、今年、久しぶりに受験の世界史を教えています。とにかく、用語を覚えてもらうことが先です。マスクはしていますが、なるべく明瞭に用語を伝えています。まず、用語ありきなんです。シノイキスモスとかディアドコイと云った言葉を、強引に力業で覚えるしかないんです。用語を覚えれば、意味はあとからついて来ます。

 ちなみさんは、ひらがなの組み合わせよりも、漢字の方が覚えやすいと云った風なことも、語っています。これも分かります。世界史の中国史の漢字は、覚え易いです。これは、やった人にしか解りません。一語一語の意味が特殊です。その漢字を覚えると、ひとつの概念が理解できます。そういうものは、割合、鮮明かつclearに理解し、覚えることができます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?