【受験ノート】法政大学

 MARCHクラスで、学部を次々に新しく創り出したのは、法政大学です。「法政、おお我が母校」の校歌が普通に歌えるOBでも、現在の法政にどういう学部があるのか、正確には答えられないと思います。

 昔からある伝統的な学部は、法学部・文学部・経済学部・社会学部・経営学部・理工学部の6つです。私が現役の大学生だった時も、教員になった頃も、この6つでした。バブル崩接後、雨後の筍(たけのこ)のように、次々と新しい学部が立ち上がりました。

 まず国際と文化だろうと云うことで「国際文化学部」。いや今のkeywordは、人間と環境だと云うことで「人間環境学部」。光ファイパーも全国津々浦々に設置されているし、やはりコンピューターつまり情報ですやろと云うことで「情報科学部」。いや、そやおまへん、なう、大事なんは福祉でっさかいと云うことで「現代福祉学部」。contemporaryのtrendは、キャリアちゃいまっかと云うことで「キャリアデザイン学部」。いや、デザインをつけたしで使われたら困りますがな。デザインを、フューチャリングして、なおかつ工学とコラボさせて「デザイン工学部」。何言うてまんねん。今やバイオとゲノムやないですか。だったら「生命科学部」でどうだす。これからは、グローバルと教養じゃきに、ってことで「グローバル教養学部」(国際文化学部と、どう違うんですかと、学校説明会の時、突っ込んだ記憶があります)。いや、すべての基礎は健康やおまへんか。だったら「スポーツ健康学部」で決まりですやろ。

 ってことで、もうひっちゃか、めっちゃかな学部乱立ぶりです。かつては、中核派の拠点校と言われ(中核派は学生運動のセクト。ちなみに革マルの拠点は早稲田、宗教系の原理の拠点は青学でした。中大は確か民青系)バリバリのバンカラ系大学だった法政大学は、いま何処(いずこ)って感じです。「こんなに次々と学部が創られてしもうたら、高校の進路担当も、きっちり指導でけしまへんがな」と、大阪の教員なら、言いそうです。東京の高校の進路担当は、まあ、一応、ぱっと見すかしていて、スマートに、解ったような、解らんような口ぶりで、ごにょごにょ言いながら、お茶を濁し、
「まあ、オーキャンに行って、自分の目で確かめて来るんが、一番、ちゃうか」と、結局は、生徒に丸投げってことになってしまいます。

 かつての法政大学は、パンクバンドの拠点校でした。村八分とかのコピーをやっているのは、法政のバンドくらいでした。市ヶ谷の汚い校舎で、むちゃくちゃなライブをやっていました。西荻にあった高校のバンドも、基本、パンクでした。吉祥寺のライブハウス(その頃ですとZenとか)に、今日はガラの悪い高校生来とるなと思ったら、たいがい法政のバンドでした。あのガラの悪い法政が、今の礼儀正しい模範的な優等生の高校に変身したように、法政大学もボアソナードタワーができてからは、バンカラ系とは、きっぱりと縁を切って、普通の大学になりました。今の法政の学生は「中核派」と云う言葉も知らなければ、あの偉大な「大内兵衛先生」の御高名すら、知らない筈です。

 私の元担任クラスの筆頭の教え子のA くんが、法政のキャリアデザイン学部に進学しました。筆頭ですから、当然、時々、手紙を書いて来て、近況を報告してくれます。電話もかかって来ますし、区切り区切りの節目で、母校の私の所にしゃべりに来ます。ですから、キャリアデザイン学部のことは、良く知っています。A くんには、powerもエネルギーも根性もあります。そういう生徒は、どこに行っても、何とかなります。彼は、キャリアデザイン学部の学生生活を、とことんenjoy しました。さほど、power、エネルギー、根性のない方は、やはり伝統的な何かまとまったことを、きっちりと学べる学部に行った方がいいかもと云う気はしています。まあこのへンは、生徒と学部とのマッチングの問題ってやつです。

 キャリアデザイン学部は、「自身のキャリア形成」と「他者のキャリア形成支援」の2つが学びの基軸です。2年次からは、発達教育、ビジネス、ライフの3つの領域を横断的に学ぶ・・・ってことになっています。正直、よく分からない学部です。自分をしっかりと持っている生徒は、こういう学部に行っても、no problemですが、自分を持ってない、軽音部に入った頃の平沢唯ちゃんみたいなふわふわした方は、カリキュラムが確立している伝統的な学部の方が、more betterです。唯ちゃんだって、G&Vo と云うテーマがあったからこそ、あそこまで頑張れたんです(あっ、もしかしたらアニメけいおんを知らない?)。

「ボアソナードって一体、何なの?」と云うそもそもの疑問を、受験生は持っているかもしれません。ボアソナードは、明治時代に、民法典を作るために政府がフランスから招いた法律顧問です。そのボアソナードが、法政大学のルーツである東京法学社の副校長として招聘(しようへい)され、ずっと後の時代になって、彼の名前をつけたタワーが造られたわけです。ちなみに、ボアソナードのフルネームは、ギュスター・エミール・ボアソナード・ドュ・フォンタラビーです。

 法政の小ネタをいくつか書いておきます。経済学部は、バーベキュー場を持っています。附属高校のチャラい子は、経済学部に集まっています。その子たちのために、せめてバーベキュー場くらいはないとね・・・ってことなのかもと想像しています。

 法政は、非ミッション系ですが、多摩キャンでは、クリスマスの頃、ハデにイルミネーションを飾っています。もっとも私が住んでいる中央線で一番しょぼい駅ですら、北口と南口に、地元の住民が恥ずかしくなるくらいに、大袈裟なイルミネーション飾りをこしらえています。

 ミニコミ出版研究会は、毎年、4月の科目登録の前に、裏シラバスを発行しています。明治は、楽勝学部とor not学部は、はっきり大別できますが、法政は各学部にガチな先生が潜んでいます。ガチな先生の授業の方が、勉強はできますが、単位取りは当然、厳しくなります。そのあたりの情報を裏シラバスでチェックして、科目登録をする仕組みなんです。法政の先生レベルは高いです(やはり偉大な大内兵衛先生のお陰かもしれません)。

 法政と言うと、有名な自主マスコミ講座。キー局じゃなくて、地方局でいいのであれば、そこそこ可愛い子でも、充分、アナウンサーを狙えます。法政ですと、当然、大学1年から自主マスコミ講座に通うことになります。が、ちょっと問題点があります。メディア系に行くのであれば、社会学部のメディア社会学科に行くのがベストですが、社会学部は多摩キャンパスにあります。自主マスコミ講座は、講師の都合上、市ヶ谷で開催されています。多摩キャンパスと、市ヶ谷とがどれだけ離れているか、まあこれは、実際に移動してみないと解りません。ありえないほど、不便なsituationです。

 心理学科を希望している生徒は、それなりにいます。臨床心理学を専攻して、将来は、カウンセラーを目指そうと考えている生徒もかなりいます。文学部の中に、心理学科はあります。が、文学部の心理学科で学べるのは、認知系と発達系の2系統です。臨床心理学を学ぶのであれば、多摩キャンの現代福祉学部の臨床心理学科に進学する必要があります。このへンは、注意して下さい。

 デザイン工学部は、総合デザイン力を重視しています。この学部に建築学科はあります。建築を専攻するのであれば、デザイン力が、何よりも重要だろうと、ずっと私は思っていたので、2007年にこの学部ができた時、私は個人的に納得しました。建築科を希望している生徒は、選択肢のひとつとして考えおいていい学部だと思います。


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