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教#064|ほぼ完璧な、お通夜のような講座~マンガで分かる心療内科を読んで⑤(たかやんnote)

 私が、時々、足を運んでいた脳トレ講座の男性参加者は、一人だけでした。全員で、20人ほどいましたから、男女比は1:19です。高校の吹奏楽部の男女比は1:9くらいで、軽音部は、3:7程度。女性の方が、コミュニティに積極的に参加していて、男性の方が、ソロで引きこもりがちだと云う傾向は、多分、あると思います。「マンガで分かる診療内科」の中に、多少、古いデーターですが、人口10万人あたりの自殺者は、男性は35.8人、女性は13.7人と云う数値が出ています。男性は、女性の約3倍。この傾向は、日本に限ったことではなく、諸外国でも同じだそうです。

 玉川上水沿いを走っていると、ベンチに腰をかけて、缶チューハイを呑みながら、煙草を吸っている年配の男性を見かけます。例外なく、男性です。女性のケースは、見たことがありません。女性は、コミュニティに参加するとか、努力して人とのコミュニケーションを図ると云った工夫をしていると、想像できます。銀行に口座解約や開設、両替と云った不要不急の来客が増えて、窓口の応対に苦労をしていると云う記事が、出ていました。年配の女性が「いっぱい話したかったので、銀行に来ました」と、素直に答えていました。オレオレ詐欺が、簡単に撲滅できないひとつの理由は、年配の女性に、いっぱい話したい、沢山話してもらいたいと云う願望があるからだろうと、私は想像しています。

 脳トレの講座のメニューは、男性向き、女性向きと云った区別はありません。もし脳トレの講座で、戦争映画(プラトーンとか地獄の黙示録とかプライベートライアンとか)を見せたりしたら、それは男性向けってことになるでしょうし、メイクアップ講習を実施したら、それは女性向けです。現実のメニューは、男女どちらでも楽しめるプログラムを作成していました。

 一見男性向けっぽいんですが、男女ともに楽しめるであろうと感じたのは、吹き矢です。矢を5つずつ持って、的に当てて、得点を競います。中心近くになるほど、ポイントは高くなります。私は、吹き矢のプログラムに2回参加しました。1回あたり、5セット、矢を的に当てようとします。ですから、私が矢を吹いた回数は、5×5×2=50回。50回も吹けば、結構、要領、コツは解って来ます。矢を吹く時、他のことを考えていたら(たとえば、今日帰る前に吉祥寺で本を買って帰ろうみたいな)必ず、的から大きく外れてしまいます。的自体にまったく当たらない、届かないと云った失態を犯します。集中してないと、的には当たりません。集中するためには、的を見る必要があります。的の中心に焦点を合わせます。私は、目が悪いので、正直、的自体がぼやけて見えます。が、ぼやけていても、中心を見る努力をすれば、それで充分です。矢を仕込んで、口に銜えるまでの動作の手順と云うものがあります。この手順(ルーティーンと言ってもいいと思いますが)を焦らず、落ち着いてこなします。緊張していると息が浅くなります。順番を待っている間に、ゆっくりと何度も深呼吸をしておけば、過度な緊張を防ぐことができます。吹く時は、普通に息を吸い込んで(深く吸い込む必要はありません)短い息で、一気に矢を吹き飛ばします。この短い息の出し方が、なかなか難しいです。上手に飛ばせた時は、息を吹いた瞬間に解ります。で、的のど真ん中に命中しています。

 スタッフさんが、ポイントを個々人のカードに記入して行きます。過去の成績も、ひと目で見れます。ポイントの高い、低いによって、その日の集中のレベルが、客観的に判定できます。天声人語の書き写しの場合でも、時間を計ることになっていました。書き写した後に、それを3回音読します。その合計時間を計ります。多分、その人にとって、justな時間があります。大幅に時間がかかっていれば、その日は集中力が低下していると言えます。速すぎると、上の空で書いていたのかもしれません。

 世話役のAさんに、ニシモリさんも、何か講座をやって下さいと言われて、ビートルズの歌詞を訳して、最後に曲を聞かせると云う講座を考え、実際に、やってみました。まったくもって、ウケませんでした。ここ、5、6年、授業の盛り上がりも、いたって低調だったんですが、それに輪をかけて、ほぼ完璧な、お通夜のような講座になってしまいました。ビートルズの曲(Yesterday)の歌詞を訳すと云った、英語の勉強のような講座を、実施することは無理だと、即座に理解しました。一人だけ参加していた年配の男性の方が「自分たちが学校に通っていた頃、英語は敵の言葉だと云うことで、そもそも習ってない」と仰っていました。英語が敵性言語だった戦争中のことも、もしかしたら、思い出させてしまったのかもしれません。

 2回目のエンディングは、ベン・E・キングの「Stand by me」にして、アメリカの近現代史を中心にして、講座のプログラムを組み立ててみました。熱心に聞いてくれた方が、一人だけいました。20人の内、一人だけにはアッピールできているわけです。私は、一人だけでも聞いていてくれたら、講座を続けるつもりはあるんですが、あとの19人が退屈だったら、申し訳ない気がします。4月から、プログラムを新たに組み立てて、出向くつもりだったんですが、コロナ騒ぎで、中断してしまっています。35年間、高校生と喋り続けて来ましたが、高校生に語りかけて来たと云うノウハウは、応用力はさほど広いものではないと実感しました。80代、90代の年配の方としゃべるためには、また別の心構え、スキルが必要です。このまま、逃げ出したくはないし、ほぼ完膚なきまでに失敗したと云う挫折体験を、何とかプラスの方向に持って行きたいと云う気持ちもあります。そもそも、年配の方にとって、どういう話が、ツボに来るのかと云うことが、まるで理解できてません。オレオレの詐欺の人たちは、どんなことを喋っているんだろうと、興味があります。オレオレ詐欺トークまとめサイトみたいなものがあれば、紙ベースにプリントアウトして読んでみたいと云う気持ちもあります。

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