【受験ノート】東京学芸大学

 東京学芸大の最寄り駅は、JR中央線の国分寺駅or武蔵小金井駅です。どちらからも、徒歩で20分くらい。多くの学生が、駅の傍の駐輪場に自転車を置いて、チャリで、通っています。国分寺も武蔵小金井も、それなりに発展している街ですが、そうは言っても、多摩地区ののどかな田舎街です。23 区の都心部の大都会とは、ノリもテンポも違います。

 学芸大の学生は、地味な服装でチャリに乗って学校に通い、授業には真面目に出席して、課題もせっせとこなし、バイトも勉強に差し支えない程度に、そこそこやって、他の大学とのつながりは持たず、大学内で、すべてが完結してしまっていて、ひとことで言って、高校のノリのような学校です。高校のあのゆるくて、まったり、ほのぼのとした居心地を大学時代もkeepしたいのであれば、地元のほぼほぼな、国公立大学に進学するのが、bestです。規模もレベルも違いますが、私の故郷の高知大学の教育学部も、ほぼ完壁なまでに高校のノリでした(無論、今でもそうです)。

 学芸大学はUniversity と云うよりも、教育だけに特化したcollegeだと言えます。学校・教師・教育と云ったくくりだけで、すべての学生が集まって来ていますから、破天荒な無茶苦茶なことをやらかす、個性的な学生はいません。お互いの空気を読み合いながら、波風立てず、如才なく4年間のキャンパスライフを過ごします。大学に入ったら、人生を大きく変えて、とことん何かにのめり込んでやろうと考えている方には、不向きな学校です。

 宮崎駿さんは学習院大出身で、新海誠さんは、中央大出身です。学習院も中央大も、大学で勉強などしなくても、卒業できる学校です。何かに打ち込んで没頭する4年間を、保証してくれます。学芸大は、そういう学校ではありません。大学が決めたカリキュラムをきちんとこなして、みんなで仲良く、教職の世界に入って行くと云う学校です。学芸大のOBで一番、有名な方は押井守さんだと、私は思っています。押井守さんのような、破天荒な大天才が、優等生が揃っている学芸大を卒業していることが、正直、不思議です。押井守さんが在籍していたころは、大学の勉強とは関係なく、何かに没頭できるような隙間が、あったのかもしれません。

 私大のNo1の教育系は、文教大の教育学部です。8、9割の学生が、教職に就きます。学芸大の教育系の場合は、5、6割です。教師を目指して入学した筈なのに、半数近くが途中でリタイアして、教職以外の道に進みます。この差は、いったい、何なんだろうと、プチ疑問を抱いています。埼玉と東京の違いは大きいと推測しています。東京ですと、教職以外の世界が、いろいろある云うことを知るchanceは、沢山あります。あとはまあ、そうは言っても、国立大学なので、一般企業への就職も、どうにかなって行くってとこもあるんだろうと思います。東京学芸大には、付属校が沢山あって、実習や学校でのボランティアを経験している内に、教師には向かないと判断できる機会も、数多くあるのかもしれません。一般の公務員に向かない人は、まあほとんどいませんが、教師に向いてない人は、相当なパーセンテージでいます。むしろ、向いている人の方が、少数派だと言えます。学芸大に進学せず、MARCHに進んだ方が、人生、よりhappyなんじゃないかと推測できるケースは、正直、かなりあります。最終的には本人が決めることですが、このあたりのマッチングについては、担任と進路部が、もっと丁寧にcare してあげなければいけない問題だろうと、私は考えています。

 教育系の大学にも、Globalのトレンドは押し寄せて来ています。学芸大にも、外国から来ている留学生は沢山います。留学生のための寮もありますし、西武新宿線方面に行くと、家賃は安いですし、チャリで通えば、交通費も不要です。多摩ののどかな田舎にある学芸大は、留学生にとっては過ごしやすい大学です。学芸大の学生が、交換留学で海外に行く大学も沢山あります。経済的な負担もさほどなく、海外に留学できる、結構、お得な大学ですが、学芸大から留学する学生は、そう多いとは言えません。やって来ている留学生の数と比較すると、10分の1くらいしか留学してません。ネットが普及して、日本の若者が内向き志向になったことは事実ですが、教職のためのカリキュラムがきつすぎると言うことも理由です。1年間の長期留学をすると、結局、4年では卒業できなくなってしまいます。卒業が1年遅れてもいいから、海外留学をすると云う学生は、そう多くはないと判断できます。積極的に海外留学をしているのは、教職系ではなく、教育支援系の多文化共生教育コースの学生あたりだろうと推測しています。

 教育支援系に表現教育コースがあります。ここは、学芸大の中では、エアポケットのようなコースです。表現に関することなら、何をやってもいいと云うコースです。演劇系、声優系、ダンス系、アニメ制作系などなど、何でもいいわけです。サークルで、大活躍をし、授業でも表現に没頭できます。「国立系で、これ本当にありなの?」と心配してしまうようなコースです。まあ、こういう逃げ場が、大学のコースの中にも、やっぱり本当は必要なんです。

 専門学校でダンスをやりたいという高2の生徒が来たら、受験勉強をして、学芸大の表現コースに行けと、アドバイスします。専門学校のダンス科に進むリスクが、100だとすると、受験勉強をして学芸大の表現コースに進学した場合のリスクは、その10分の1以下の5、6くらいまで下がります。できる限りリスクを避ける、これが進路指導の基本です。

 教職に就くためには、教員採用試験に合格しなければいけません。大学3年の9月に実習に行って(9月に、実習や海外短期留学、インターンシップ、ボランティアなどに行くことを想定しているので、学芸大では10月半ばまで、夏休みです)そのあと、大学3年の後半から、教員採用試験の勉強がスタートします。大学3年の11月から翌年の7月まで、教師力養成特別講座が開催されています。論文添削や面接指導など、教員採用試験のための指導を行っています。学芸大に合格した時の受験勉強と較べると、教員採用試験の勉強は、正直、そう難しいものではありません。受験勉強の半分くらいの集中力と、勉強量で、合格します。

 教職に関しても、学ぶべきことが、多くなりました。昔は、いわゆる教職教養と言われている教育原理、教育心理学、道徳教育あたりの基本書を読んでおけば、それで充分でしたが(採用試験にも合格しました)今は、語学をやり、ICTを学び、学校教育全般についての知識も深め、環境問題に対する理解も必要です。

 学部の4年間だけでは、期間が短いので、学部+大学院の6年間の教員養成コースも、設定しています。学部の2年生から、このコースに参加登録することが可能で、大学院もこのコースの特別枠で、進学できます。小中一貫教育と云うのも、最近のトレンドなので、小学校、中学校の両方の免許を取得するためにも、6年間の時間があった方が、余裕を持ってキャンパスライフを過ごせます。

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