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アイアンナックル──ミリオンテイルズ──

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暴力と悪逆が支配し、あらゆる怪異や眉唾ものの噂──そのすべてが煮られた地獄の釜の底。それがアメリカ合衆国が誇る悪徳都市オールドハイト。街に巣食う奇妙な人々が織りなす様々な話(ミリ… もっと読む
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#Vtuber

都市伝説系Vtuberマリー&ホロウ(8)

都市伝説系Vtuberマリー&ホロウ(8)

「それにしてもわからん」

 廊下を通り、ライブステシージそばのバーカウンターでビール瓶の後片付けをしながら──サイはポツリと呟いた。

「ホロウはどうしてトイレに出てきたんだ? WiFiが届いてたからって理屈はわかる。だがそれだと、鏡に突然映ってた意味がわからん。受信できる機器は何も持ってなかったんだぜ」

「……もしかしたらですが……元ネタがあるんじゃないですか?」

 ドモンは最後の一本にす

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都市伝説系Vtuber マリー&ホロウ(7)

都市伝説系Vtuber マリー&ホロウ(7)

 貸切状態のライブハウスというのは、薄暗く──ほのかにタバコと機材の金属のかおりが漂っていた。まるで、感情の燃えカスが残っているような──どこか物悲しさも感じられる。
 今日の出し物はひとつだけ。殺し屋ドモンと、ホロウと名乗る化け物の、時間無制限デスマッチ。敗北は死を意味する。

「ビールあるぜ。飲るか?」

 返事も聞かずに、サイは客席に併設してあるバーカウンターを漁り、冷蔵庫から瓶詰めのタフ・

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都市伝説系Vtuberマリー&ホロウ(6)

都市伝説系Vtuberマリー&ホロウ(6)

Days3

 また朝になった。
 憂鬱な朝だ。結局昨日はTJを一人にするわけにもいかず、ガレージにあった寝袋で、ドモンとサイの二人は夜を明かした。
 TJがオートミールを用意してくれたので、二人はそれをスプーンでなんとか流し込む。サイはおかわりでもするのかという勢いで皿を持ち上げたが、果たして彼の舌がまともに動いているか疑問だった。恐怖で麻痺してしまっていると言われても、驚かない。
 TJは昨日

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都市伝説系Vtuber マリー&ホロウ(4)

都市伝説系Vtuber マリー&ホロウ(4)

 Days 2

 朝が来た。
 とてもサイの家で過ごす気にはなれず、二人は近場の安モーテルに駆け込んで事なきを得た。あれから怪人は現れていない。

「逃げきった──と思うか?」

「思いませんね。ありゃ多分しつこいヤツですよ」

 インスタントコーヒーを紙コップで煽りながら、サイとドモンの二人はお互いのベッドに腰掛けながら顔を突き合わせていた。

「ご同業じゃないのか?」

「少なくとも僕が知っ

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