ARMの売却はAI業界に何をもたらすのか~前編~
先日、ビックディールのニュースが飛び込んできました。ソフトバンクが2016年に3.3挑戦で買収した英ARMの全株式をNVIDIAに最大4.2兆円で売却するというとのことです。
NVIDIAとソフトバンクグループ株式会社(以下「SBG」)は、NVIDIAがArm Limited(以下 「Arm」)をSBGおよびソフトバンク・ビジョン・ファンド(以下「ソフトバンクグルー プ」)から400億⽶ドルで買収することに最終合意したことをお知らせします。 https://www.nvidia.com/ja-jp/about-nvidia/press-releases/2020/nvidia-to-acquire-arm-for-40-billion-creating-worlds-premier-computing-company-for-the-age-of-ai/
実は私、何を隠そう孫正義氏の大ファンです。
これまで数々の大風呂敷を広げ、見事にそれらを畳んでいく卓越したセンスと能力に、一人の経営者として心から尊敬をしております。
今回の売却話については、少し前にそういった事も検討しているような話を孫さんご自身がされていたので「ついに来たか」ではありましたが、この事実自体に実は大変ショックを受けました。大ショックです。 それは何故なのかというと、ソフトバンクという日本企業が、今後発展するIoTやAIの分野で世界をリードするという壮大な夢の着地が違う形になりそうだからです……。
今回は、前編・後編の2回にわたって、精緻なエビデンスも無く、独自に仕入れた情報も無く、あくまで私、「やまたか」個人の主観全開でによる、今回の報道についての見解を述べてみたいと思います。
ARMとは
まず、ARM社は、どんな企業かということを簡単に記載いたします。(以下、買収当時の情報です)
------------------------------------------- ARMはスマートフォンなどの頭脳にあたるCPUの設計に特化した企業で、自ら製造・販売は行わず、技術のライセンスで収益を上げる、IPライセンス事業を行う会社。半導体設計の分野では世界ナンバーワンで、特にモバイル分野に強みを持つ。
ARMのプロセッサの特徴は /省電力
処理能力が高い
導入した企業が独自に機能を拡張可能である
この特徴から、今後は消費電力の増大が問題視されているクラウド向けのデータセンターでの採用も進むと考えられている。また、小型化・低消費電力が求められるIoTの分野でも、ARMは攻勢を強めている。 ------------------------------------------
いやー、改めて見るとすごい企業ですよね。
買収当時の2016年において、ARMベースのチップは全世界で148憶個出荷されており、スマートフォンやタブレットを中心としたモバイルコンピューティング市場においてはアプリケーションプロセッサーで85%以上のシェアを獲得していました。スマートフォンやサーバ、家電など幅広い機器に採用されており、来るIoT時代には世界中のあらゆる機器にARMベースのチップが採用されており、その流れは今後一層加速する見込みという、流れに完全に乗っちゃってる感じですね。
孫さんはARMについての思いをこのように表現されてます。
「PCがインターネットにつながり、モバイルインターネットとなり、その次がIoT。すべてのものがインターネットにつながる。人類史上、もっとも大きなパラダイムシフトになると信じているからこそ投資を行う」
ARMを傘下にすることで、孫さんはIoTというあらゆるものがネットワークに接続された世界におけるデータの発信源を押さえに行ったんだと思います。
それによって、『いつ』『どこで』『どんな機器から』『どれくらいのデータが』産まれているかをソフトバンクが押さえることになるのではないかと、当時私は期待でドキドキしたことを今でも覚えています。
※ソフトバンクグループ株式会社事業戦略説明資料より
AI群戦略を描く孫さん
『シンギュラリティ』
AIにおいて一時期良く使われた言葉ですが、当時孫さんも多用されていました。人工知能が加速的に成長し、特定分野においては人間を凌駕する。その実現に最も重要なのが『データ』と『チップ』であると。
「ディープラーニングをする上で重要なのがデータ。データを生み出すにはチップが必要。チップがあるからデータが生まれ、データがチップをさらに賢くし、人工知能として超知性を生み出していく」
そのチップ設計における最有力企業であるARMを買収した孫さんの頭には、来るAI社会において、自らがその先頭に立って推進をしていくんだという気概を勝手ながら感じておりました。
ARMを巻き込んだAI社会への布石は、まだ続くのでした。
後編に続きます。
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