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サウナで『地方創生』を実現するための方法(沖縄編)

突然ですが、サウナで「地方」を盛り上げる方法を考えてみたいと思います。筆者は近頃、サウナがらみで沖縄と接点をもつ機会が増えてきましたので、お題は「沖縄」に設定してみます。

昨年12月、サウナの取材で石垣島へとお邪魔し、今月はリゾートワークスさんの企画でワーケーションツアーに参加予定でした。(こちらのツアーは沖縄県がまん延防止適用となり、敢え無く中止となってしまいましたが…)

他にも奄美地方からご相談を頂くなど、九州とサウナを卒業すると表明した途端に、九州よりさらに先の地域との接点が生まれました。このような展開はまったく予想もしておらず、サウナトレンドの活況ぶりを実感しました。

ある業者から聞いた話なのですが、いま宮古島や石垣島などの離島から、テントサウナの引き合いを数多く頂くという話も耳にしています。サウナで地域を盛り上げるという気運が、離島各地でも広がってきているのでしょう。

「沖縄がサウナ県になる?」というニュースも発信されるようになりました。沖縄ではもともと閑散期と言われる、冬の新たな観光コンテンツとして、サウナを入り口にして集客誘致を試みるという取り組みも目立ちます。

そこでどうしたら沖縄のサウナシーンが盛り上がるのか?「九州とサウナ」を通じて得た実体験や気付きと、全国各地で活況となっているサウナトレンドも交えつつ、筆者独自の目線で考えていきたいと思います。


サ旅の観点で考える「沖縄」の現在地

たとえば首都圏在住者がサウナ好きになったとき、まず近隣のサウナから足を運びます。そして静岡の『サウナしきじ』や長野の『The Sauna』へ小旅行に訪れ、いずれはドラマサ道にも出てきた九州の『湯らっくす』や『らかんの湯』、北海道の『白銀荘』に足を運びたいと思うようになる…

首都圏のサウナ好きがサウナ旅を検討するとき、(2022年現在は)おおよそこのような流れを踏むのではないでしょうか。今はパンデミックによるまん延防止条例もあるため、サ旅に出れるのは多くても年2~3回ほどでしょう。

そしてサウナ情報などを雑誌で見てみると、まだまだおすすめサウナが全国各地にあるとのこと。サウナ旅の2回目は、関西にしようか?東北にしようか?はたまた四国や北陸・甲信越にも新しいサウナが出来ているらしい…ということで、ここからサウナ旅の選択肢が徐々に混沌としていきます。

このようにサ旅の選択肢を考えるとき、沖縄の順番が回ってくるのは果たしていつになるのでしょうか?寒冷地であればあるほど、ととのう魅力が際立ちやすいサウナトレンドの中で、通年通して温暖な気候の沖縄は、観光地であるという想起はできても、サウナが活況なイメージは湧かないですよね…

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また沖縄では、カリスマ的なサウナ施設がパッと思い浮かびません。九州の『湯らっくす』など、サウナファンが遠征するような施設が隣接県にあれば、たとえ訪問先の県に強い施設がなくても、線をつなぐことができます。沖縄は離島という環境であるため、内地と同様の文脈が描きづらいのです。

離島は事業者の観点でも特殊な環境で、サウナの施工にあたって必要な資材、プレイヤー、配送コストなどは、内地に比べてどうしてもビハインドになってしまいます。ユーザーと事業者両方の観点からみて、沖縄がサウナ県として盛り上がる未来は、はたして考えられるのでしょうか…?

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しかし、たとえその土地にサウナのイメージが湧かなくとも「文脈の描き方次第で地域とサウナは盛り上がる」という事例が少なからずあることを、筆者は知っています。(その土地がどれだけ僻地であったとしても、です)

「サウナ目的で、沖縄へ旅するようになる」そういった状況をゆくゆく目指すために、どのようなことができるのか?ロードマップとして正しいかどうかはわかりませんが、様々な観点で盛り上げ方を考えてみたいと思います。

点ではなく「面」で集積的に取り組む

まずこちらのnoteにも書きましたが、事業者や行政単体ではなく「点から線、線から面」という集積的視点で取り組みを考える必要があります。なぜならサウナ好きがサ旅に出る場合、複数の施設を巡ることが一般的であり、カリスマ施設がない限りは、いち施設のみの訪問は考えづらいためです。

今から後発で、カリスマ施設並みの認知度とソフトハードを揃えることは並大抵ではありません。単体の施設として勝負に出るよりも、予め面で取り組むことを前提とした上で、サウナ好き需要と向き合った方が良いでしょう。

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面で逆算してサウナを盛り上げるには、誰が旗を振るのかが大切になってきます。例えば北海道の場合は温浴施設や旅館業、テレビ局などの事業者が、大分の場合は事業者だけでなく官民連携の両面で旗を振っています。連携先の距離が離れていても問題なく、むしろメンタリティの連携が肝要です。

初動はたった1人の熱量からはじまることが多いでしょう。しかし時が経過するとともに「たった1人の熱」同士が共鳴し合いつながる瞬間がやってきます。SNSもあるため、初対面であっても目指すゴールの共感は可能です。

その熱を見える化するために、テレビや新聞、ラジオや雑誌など地元メディアの協力も積極的に仰いでいきたいところです。メディアも日々の話題となるネタを探しているため、テントサウナのイベントを始めたり、そもそもメディア関係者をサウナ好きにしてしまうことも一つのアプローチですよね。

インフルエンサーや著名人がサ旅に訪れる機会も本当に増えました。彼らの視聴者には首都圏のサウナ好きが数多くいます。「ワーケーション」等のバズワードに引っ張られすぎないよう、露出のされ方は慎重に考えたいところですが、面の取り組みを上手に紹介してもらえたらこれ以上ないでしょう。

さらに沖縄を飛び出し、面の取り組みを首都圏で告知する動きも想定したいですね。今年の1月には『&sauna』がリアルイベントを首都圏で行い、北海道へのサ旅をPRしました。イベントを主催せずとも、まずは一出店者の立場から活動をはじめ、首都圏との定期的な接点で認知を図りたいところです。

面の取り組みが加速すればするほど、施策インパクトは足し算ではなく掛け算方式で拡大していきます。事業者単体の活動よりも、事業者間で集積的に活動した方が、双方得られるリターンは大きくなるのではないでしょうか。

事業者別でみる「サウナ」の取り組み

集積的取り組みを考える上で、まずは取り組みのハブとなる「温浴施設」に関してみていきたいと思います。沖縄には目立ったカリスマ施設が見当たらないという話を展開してしまいましたが、そんな懸念を吹き飛ばすような素晴らしいリリースが今年の1月に発表されました。

サウナ好きに愛されてやまない宜野湾の老舗『大山サウナ』が、新たなサウナ専門施設を那覇市にオープンするという大きなニュースです。温浴施設が旗を振り、点を線につなげるために自らが系列店開業を行うという例は珍しく、全国からベンチマークとされるような好事例となりうる予感がします。

沖縄を訪れたら最初に訪れるであろう『琉球温泉 龍神の湯』から『サウナの珠湯』を訪れ、『大山サウナ』へ足を運ぶという線のつながりが実現することになります。線ができることで、面のステップアップが視野に入ります。

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『琉球温泉 龍神の湯』にはもともと際立った個性があり、圧倒的な海の美しさと琉球建築、そして至近を飛び交う飛行機達の光景など、全国でも珍しい環境を備えた温浴施設でした。『大山サウナ』も同様で、こちらの記事にも取り上げられているように、まるで純喫茶のような圧倒的個性が光ります。

施設数では内地にどうしても劣ってしまいますが、その弱みを逆手に取り、国内外にも存在しない魅力を見える化することで「個性」で戦うことが可能になります。サ旅といっても一度の旅行で巡る施設は10施設以下が限度でしょう。したがって5~10の個性的な施設が揃えば十分な「線」になります。

続いて「小規模サウナ施設」の例をみていきますが、いま沖縄を訪れたサウナ好きの間で話題沸騰となっているのが『GoMe』です。国内初のアースバッグ方式で建てられたアウトドアサウナで、セルフロウリュができる環境がほぼ皆無だった沖縄のサウナシーンに一石を投じる施設が登場しました。

『GoMe』の詳細はUK氏によるレポートをご覧いただければと思いますが、足元まで十分に暖まるアースバッグ蓄熱性の高さと、台風が多い土地柄での頑丈なつくり、内地と比べての資材手配や輸入コストのハードルをクリアした、きわめて画期的かつ合理的なサウナ施設が誕生したことになります。

とはいえいま沖縄で大きく数が不足しているのが「セルフロウリュ可能」なサウナ施設です。個性を光らせるのが大事と書きましたが、それはあくまで県外向けの施策であって、常連となる県内のサウナ人口を掘り起こすためには、「セルフロウリュ」の価値を知る接点が経営視点では必要になります。

例えば旭川の『銀座サウナ』は、わずか1,000万円で開業できてしまった例ですが、これは不動産価格や物件家賃が安いからこそ、原資が少なくとも実現できるのです。内地はまだしも、沖縄においてはまだまだ空席の目立つポジションであるため、後発でも一地位を確立できる可能性が高いのです。(銀座サウナの層は県外客以上に常連が多く、一事業の運営に成功しています)

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そして最後に「ホテル」のサウナ事例をみていきます。沖縄には数多くのリゾートホテルがありますが、コロナ禍の集客対策のために冬はデッドスペースになっているプールを活用し、テントサウナを設置してセルフロウリュを提供するという試みが、リゾートホテルの取り組みとして目立ちます。

しかしながら率直に申し上げると、テントサウナを設置するだけではサ旅の訪問動機にはなりえません。別の項で補足させて頂きますが、観光地や施設の資源を「ただサウナと組み合わせただけ」に終わります。よりユーザーインサイトに寄り添わなければ、意味のある価値創出にはならないのです。

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ただし例外的に、テントサウナで価値創出できるとしたら「ウィスキング」は可能性があると考えます。ウィスキングはフローティングの文化があり、その場合はリゾートプールがワークしやすい。リラクゼーションの選択肢やスタッフの技術、食の選択肢など、ウィスキングとの親和性が高いのです。

ウィスキングは比較的高単価なサービスにはなりますが、リゾートホテルを訪れる層を考えると、プレミアムな価値を理解していただきやすい。テントサウナ×ウィスキングであれば、リゾートホテルが持つアセットを最大限活用できる可能性があります。詳細はこちらのnoteをぜひご参照ください。

さて話を戻します。ホテルのおけるサウナの取り組みについてですが、セルフロウリュサウナをいち早く導入したのが『THIRD石垣島』です。詳しくはこちらの記事でレポートしていますが、サウナプレミアムスイートという文脈で、施設単体でのサ旅動機創出を試みている意欲的な取り組みです。

サ旅でわざわざ足を運ぶ動機をつくるとなると、ホテル内の大浴場サウナをセルフロウリュ可能とするか、客室やルーフトップなどのスペースに貸切サウナを導入するか、いずれかのアプローチが現段階での主流になります。

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ホテルでセルフロウリュ可能な環境を導入する際、参考としたいのが『北海道ホテル』の取り組みです。北海道ホテルは大浴場と客室、どちらにもロウリュできる設備を追加投資しているのですが、ストーブが壊れにくいセルフロウリュの仕組みを導入したところが画期的な点であると考えます。

沖縄でセルフロウリュを導入する際は、ストーブが破損した際の修理環境が内地ほど充実していません。そういったリスクを避けるためにも、北海道ホテル流の導入法を取り入れることが、沖縄という環境を考えるとフィットするのではないでしょうか。(北海道ホテル流はこちらでの詳細が聞けます)

サウナ好きの目線で考える「沖縄」の資源とは

ここまで事業者別サウナの取り組みをみてきましたが、沖縄のサウナはまず気候そのものが内地と異なりますし、本場の北欧風サウナを再現しようと考えても、離島という環境上限界がある。したがって内地のように "フィンランドサウナ至上主義" のスタンスを取らなくても良いように思いました。

逆に沖縄にしかないものに焦点を当て、そこを掘り下げることで内地は競争の対象とせず、世界中でも沖縄にしか存在しないサウナ文化を目指していくことで「世界一の南国サウナ」と呼ばれるようになったら面白いのかなと。沖縄はアジアのハブになる、という国際思想にも合致するかもしれません。

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ここからは筆者の妄想を展開していきますが、玄関口である国際通りを基点に、飲食店や旅館、観光客向け事業者主体で「セルフロウリュができて、沖縄らしい」小規模サウナが数多くでき、引いては国際通り="サウナ通り"のような認識ができると面白いです。サウナに適した飲み屋も多いですし。

伝統的な沖縄家屋の小規模サウナ施設があれば体験してみたいところです。サウナ室内外にシーサーの像が置いてあって、サウナの守り神=トントゥのような位置づけで置かれていると愛着が湧きますよね。グッズ販売への発展的展開も期待できそうです。

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沖縄といえば、さんぴん茶がポピュラーですよね。いわゆるジャスミン茶に近いものですが、セルフロウリュのアロマとしてさんぴん茶が体験できると沖縄の個性を身近に感じられる筈です。シークワーサーの柑橘系アロマも親和性高そうですし、やんばる地方の植物などもアロマに活用できそうです。

水風呂は、沖縄といえば内地では体験できない透き通った海が真っ先に思い浮かびますが、サウナ好き目線からみると水質や入浴した感触などを重視する傾向にあります。したがって、海に関しては直接入浴するよりも「目で見てととのう」方向に振り切った方がワークするかもしれません。

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サウナ室の窓から沖縄の海を臨み、水風呂はプールへダイブ、外気浴ではインフィニティチェアに寝そべって沖縄の南い風をダイレクトに浴びる… そしてほとぼりが冷めたら海を眺める、という体験だけでも十分ですね。

サウナにおける一連の体験において、海はヒトの五感を活性化させるオプションコンテンツの一つである。そのように割り切れると、沖縄の海をコンテンツとして活かす新たな切り口が思い浮かぶのではないかと考えます。

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水風呂を体験コンテンツとして捉えたときに、やんばる地方など自然豊かなエリアなどは新たな水風呂体験を考えられそうですね。サウナに入浴したのち、ターザンに乗らないと水風呂に入ることができないなどは面白そうです。鍾乳洞水風呂のような、水風呂×エクストリーム体験の可視化ですね。

関西のUSJを手掛けたプロフェッショナルが、やんばるの森にテーマパークをつくるというニュースもありました。サウナ体験はゆくゆく「大自然への回帰」という切り口が盛り上がってくるのではないかと思います。動物が歩く隣でサウナに入るという野性的な体験もそのうちできるかもしれません。

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サウナ飯の観点においても、沖縄は食のバリエーションが豊富なように思います。個人的な意見を挟むと、究極に美味いもの=サウナ飯の黄金比に必ず当てはまるとは限りません。『The Sauna』のラム麻婆のようにサウナ入浴後に欲する成分や文脈を"料理"することで、良いものが出来上がる筈です。

その観点では『THIRD石垣島』で食した「八重山そばのカルボナーラ」や「泡盛を使ったボンゴレパスタ」は絶品でしたね。旨みと塩分が詰まっていて、なおかつご当地気分も味わえるという工夫にいたく感動したものです。

最後にまとめ

筆者の妄想を自由に書いてしまいましたが、沖縄でサウナを盛り上げる方法をあれこれ考えてみました。筆者が沖縄を訪れたのは5年ぶりだったのですが、サウナ目線で訪れてみると色んな発見があって大変興味深かったです。

コロナ禍とはいえ、観光という点では国内有数の集客力を誇る土地ですし、沖縄にある資源を客観的に整理しても、サウナ資源のポテンシャルが高いと感じました。もし自分がサウナを作るとしたら、敢えて内地やフィンランドに寄せず、沖縄にあるものを最大限生かしたサウナを作ってみたいですね!

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