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サウナで『地方創生』を実現するための方法(九州編)

SNS等であまり公にはしませんでしたが、『九州とサウナ』というプロジェクト立ち上げにおよそ3年間、携わってきました。

筆者は今年いっぱいでその役目を終えるため、プロジェクトの振り返りと取り組んでみて感じたことや気付きなどを、noteにまとめたいと思います。

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『九州とサウナ』とは、どのようなプロジェクトなのか。

こちらに活動指針をまとめているのですが、端的にお伝えすると「Webマガジンを基点としつつ、"地産地蒸"を合言葉に、サウナ施設や街を巻き込みながら、九州のサウナを盛り上げるための活動を行う」集団です。

具体的には、どのような活動を行っているのか。イメージを湧きやすくするために、代表的な事例をいくつかご紹介させてください。

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まずは基点の活動となる、Webマガジンから紹介していきます。

施設取材を必ず行うことをグランドルールとし、それ以外は比較的自由な文体で、九州のサウナ愛好家たちが記事を寄稿する形で運営を行っています。(筆者も微力ながら、こちらの記事を寄稿させていただきました…!)

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オンライントークセッションも(不定期ですが)企画~主催しております。

サウナ施設の方やまちづくりに携わる方をお呼びし、九州×サウナの可能性を議論してきました。今年のトークセッションはアーカイブが残っておりますので興味がある方はご覧ください!

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コロナの社会情勢を鑑みながらですが、イベントへの出展も行いました。

『九州とサウナ』はオンラインのみにとどまらず、オフラインでも積極的な活動を行っております。こちらの写真は大分県豊後大野市で催された『サウナ万博』の模様で、テントサウナの運営とグッズの物販で参加しています。

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さらには百貨店とのコラボ企画で、サウナグッズ展も企画~主催しました。

福岡市博多駅直結・博多阪急百貨店1Fにて『わたしとサウナ』という企画を7日間に渡って展開。企画の物珍しさから道行く人達が足を止め、サウナの世界に興味を持つような何かしらのきっかけを提供できたかもしれません。

これらの原動力となったのは、単なるサウナ愛好家だった人達が集い、個々人の想いと強みが結集し、形に表れていったのが全てなのかなと思います。一連の取り組みを通し、筆者個人が貢献できたのは皆無と言って良いかと。

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そんな『九州とサウナ』がどのように生まれたのか。筆者の回想と気付きを中心に筆を執らせて頂きながらも、これからサウナと地方はどのように盛り上がると良いのか、筆者の見解も交えながらまとめていけたらと思います。

今後地方でサウナを盛り上げようとされる方、地方創生をプロジェクトでお考えの方、地方自治体の方などの活動の一助になりましたら幸いです。(企業および自治体とのお仕事事例もございますので、ご質問や相談等ありましたら私の経験を話しますので気兼ねなくDMいただけれますと幸いです。)


始まりはたった1つのテントサウナから

そもそも筆者が九州と接点を持つようになったのは、遡ること5年前。前職で勤めていた会社が九州に所在していたことから、九州へ足を運ぶ機会が増えていました。

前職を退職したのが2019年。筆者は生まれも育ちも東京で、九州を訪れる機会も少なくなると思い、最後の思い出作りに福岡を訪れるようになりました。当時、九州をサウナで盛り上げることは微塵も考えていませんでした。

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その一方、退職前に訪れた海外サウナ旅で衝撃を受け、プライベートサウナを所有してみたい欲求がふつふつと湧いてしまい、テントサウナを自腹で購入しました。テントサウナが、まだ国内に100台もなかった時代でした。

そして「最近、テントサウナというものを買ったんだよね」という会話を、福岡を訪れたときにも話すことがありました。あるとき福岡の知人が「それおもしろいね。いっそのこと福岡に持ってきては?」と薦められたのです。

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ノリと勢いでテントサウナを背負い、「最初で最後」と思って福岡空港へ向かった日のことを今でもよく憶えています。そして当時、SNSでその模様を投稿したところ、九州にお住まいのサウナ好きの方から反響を頂きました。

当時日本でも数少なかったテントサウナオーナーの方とつながり、福岡で何度かサウナイベントを企画していきました。また、テントサウナをウチでやってほしいという声もいただき、半常設で体験会を行うことになります。

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趣味先行の、赤字覚悟な体験会ではありましたが、この会を通して色んな方とつながれたことが収穫だったのかなと思います。『九州とサウナ』のコアメンバーであるこーきんぐ氏とも、会を通して親睦を深めていきました。

この当時の福岡サウナシーンを振り返るとブームの火付け役である『ドラマサ道』は放映前、福岡だけでも熱烈なサウナファンは手で数えられるほどであり、市内もウェルビー以外はブームの興りも感じられなかった時代です。

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時代は平成から令和に移り、テントサウナの体験会を地方メディアに取り上げていただく機会を頂戴しました。首都圏ならまだしも地方で、まだニッチな領域と思われた、サウナで取り上げて頂いたことは異例中の異例でした。

その後、筆者が東京の仕事を掛け持ちしていたこともあり、テントサウナ体験会の運営はこーきんぐ氏にバトンタッチをしていきました。テントサウナを通して人とつながる場の運営は、現地の草の根活動で続いていきました。

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最初はテントサウナの持ち込みすら躊躇っていたのが、あれよあれよといううちに繋がりが広がっていき、その後『九州とサウナ』発足へとつながるようになります。始まりはちょっとしたセレンディピティからだったのです。

いま地方 × サウナのプロジェクトを拝見して思うのは「まずはテントサウナで1年ほど、草の根活動を行うことが最適解である」と結果論ですが、そう感じております。こちらの見解については、後半で詳しくご説明しますね。

コロナによる偶然が愛好家たちを動かした

2020年。令和へと時代が変わり、世の中を騒然とさせたパンデミックがサウナシーンをガラッと変えることになります。テントサウナの体験会もクローズドになっていき、身内が集まる固定の場所へ移るようになりました。

その一方で、熊本でSauna Editorとして活躍していたタカハシ氏が福岡へ舞い戻ることになり、こーきんぐ氏と意気投合した者同士で「何かサウナで意義のあることをしないか?」という井戸端会議が行われるようになります。

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緊急事態宣言で外出自粛が激しくなる中、テントサウナ運営も活動休止に追い込まれました。そして福岡市をリードしていた「ウェルビー福岡リニューアル&サウナラボ福岡開店」という衝撃的なニュースが舞い込んできます。

福岡サウナシーンに一石を投じる出来事。ここからサウナ施設が主となっての状況変化が顕著に表れていきます。さきほどの井戸端会議も「非対面を前提としたサウナ愛好家たちによる施設支援」がいま自分達にできることなのではないか?ということで、取り組みの方向性が定まっていました。

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名もなきプロジェクトに7名の愛好家が集まり、サウナのためのアウトプットを作っていきます。とはいえ立ち上がりは資金確保が困難なため、持続化補助金を活用し、名もない取り組みを形にしていきました。

Sauna Editorのタカハシ氏が編集を担い、筆者は遠隔でWebディレクションを担当。初見でも扱いやすいCMSを前提とするために『STUDIO』のプラットフォームを活用し、情報提供サイトをノーコードで構築していきます。

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そうして出来上がったのが国内初となる、地方×サウナ特化型Webマガジンの『九州とサウナ』でした。コロナという社会情勢の変化と愛好家たちの強みがたまたま合致し、こちらも偶発的に立ち上がっていった結果でした。

『九州とサウナ』が世に出たのは2020年7月でしたが、この頃はサウナラボ福岡がオープンし『御船山楽園ホテル らかんの湯』が脚光を浴び始めた頃でした。このタイミングを契機に"地産地蒸"のきざしが表面化していきます。

"施設"と"ファン"と"まち"がつながっていく

Webマガジンを公開してからは、施設取材を必ず行うことをグランドルールとしていましたので、愛好家たちが施設へお邪魔する機会が増えていきました。そこから程なくして、ぷりか氏による投稿記事が脚光を浴びる形に。

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九州でサウナが盛り上がるはるか前から、サウナを訪問しては息を吐くように、記事を世に発してきたぷりか氏。サ旅で選ばれるようなラインナップをよそに、余り世に知られていないサウナ施設を次々に発掘していきました。

ぷりか氏の取り組みは本州にも知れ渡り、今では県外のファンも多くなりました。その他にもジョン氏の、記事の寄稿にとどまらない施設貢献も光りました。天拝の郷におけるサウナ室のBGMは、ジョン氏による発案なのです。

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県内外でも呼び声が高い『さうな天満宮』でお馴染みな、あの雅楽のBGM。施設に数多く足を運び、体験へのこだわりが強いジョン氏による発案が功を奏しました。また、別の施設では内気浴スペースのコンセプトを提案~実現するなど、単なる愛好家が施設とつながる事例が徐々に増えていきます。

九州北部を中心としたイベント出展も行い、『施設』と『ファン』と『まち』同士が緩やかに越境していくようになります。コロナ禍もあって各種イベント延期という事例も出てしまいましたが、変化の芽は明らかでした。

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そして2021年10月。施設とファンとまちが一堂に会した、博多阪急百貨店での企画~開催へとつながっていきます。「一体となった」とまでは言えませんが、それでも筆者がサウナを持ち込んだ3年前とは隔世の感があります。

以上、『九州とサウナ』の興りから現在に至るまでの流れを振り返ってみました。首都圏のトレンドは3年遅れで、地方に伝播するという法則があると耳にしたことがありますが、今年で丸3年が経ちます。九州のサウナシーンはむしろ成長期、「これからが盛り上がる」と言ってもよいでしょう。

余談にはなりますが、『ドラマサ道2021』に撮影協力枠として取り上げていただいたことは、大いなるサプライズでした。プロジェクト発足当初、「いつかはドラマサ道に取り上げられるぐらいになりたいよね」と冗談半分で話をしたこともありましたが、そのまさかが、こうもはやく現実になるとは…

まずは目の前の人を「サウナ好き」にしよう

さて『九州とサウナ』の事例をご紹介したところで、筆者が感じた気付きを「地方×サウナ」を盛り上げる前提での視点でまとめます。今年は九州以外の地域で話すことも多くなり、そこでよく話していることを主に書きます。

「地方×サウナ」の取り組みをはじめるにあたり、まずは身近にサウナ好きを増やしていくことです。筆者の場合はテントサウナでしたが、いちはやくサウナの魅力を知っていただくには、一緒にととのって体験共有する方が話が早かったりします!

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何かプロジェクトをはじめるときに"コミュニティづくり"がテーマの一つとして出てくるかと思います。コミュニティ形成を考える上で、人々が年齢と肩書を脱いで交われるテントサウナは極めて相性が良いツールと言えるでしょう。

首都圏はまだしも、地方となるとまだまだテントサウナの存在を認知していない人は多い筈です。その認知も込みで取り組むとなると、先に記したようにおよそ1年間の期間をみて、草の根活動で地道に体験会を行っていくことをオススメします。

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テントサウナの活動を1年も取り組めば、仲間内で「サウナを建ててみたい」という話に自然とシフトしていきます。その際にハードルとなることは、営業するしないに関わらず、まずは資金調達と立地が課題になります。

しかしそうした課題も「とにかくサウナを建てたい」という想いを、対面でもSNSでも良いので"発信"を続けること。そうすると情報が伝播し、その課題に対して手を挙げてくれる方が存外、世の中にいらっしゃるものです…

「熱の方向性」が近い人達から仲間にしていく

サウナの体験会を草の根で取り組んでいると、有難いことに色んな方が足を運んでくださいます。サウナが好きでつながりを求めてらっしゃる方、物珍しさだけでいらっしゃる方、サウナが嫌いな方まで本当に多種多様でした。

そしてサウナの魅力を心から認識できた方からサウナ好きになっていくのですが、サウナの話をしていると"熱の方向性"が不思議と合う仲間が現れていきます。その方向性とは、サウナのイマよりも「未来の話に花を咲かせることができるかどうか」。

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未来といっても決して大袈裟なことではありません。「サウナに入る上で、こういうのがあったら良いよね」という程度の話です。実現するかどうかはさておき、プロジェクトをはじめる上では大なり小なりビジョンがあった方が円滑に進めやすいので、その観点でも未来を語れる仲間がいた方が良い!

『九州とサウナ』にはヒダトヨというメンバーがいます。出逢った頃はパッとしない大学生でしたが、一つの物事を掘り下げて「こんなのがあったら良いのにな」と思考を巡らせる才がありました。彼はこの2年でメキメキを力をつけていき、サウナアロマ開発のプロフェッショナルになっていきます。

※余談ですが「地方×サウナ」に取り組む上で学生を仲間にするのは強くオススメします。エンジニアリングやデザイン等の強みを有するケースもありますが、"若さゆえの感性そのもの"は大人達で養うのは何より難しいです。

「たった1人の熱」同士が共鳴し合いつながる

ここ最近確信を深めている気付きがあるのですが、ある組織の中でサウナの取り組みをはじめようとするとき、サウナに対する熱い想いを持った方が社内に1人もいなければ、ほぼ形にならないということがわかってきました。

サウナラボの米田社長、湯らっくすの西生社長、御船山楽園の小原社長など、九州のサウナシーンを牽引されている取り組みを拝見していると、まずは1人の圧倒的な熱量からコトがはじまるというのを実感するばかりです。

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熱量といえば『筑紫野 天拝の郷』に在籍されている柴田氏が思い浮かびます。前役職のレストラン担当であった頃からサウナへの想いを内に秘めてらっしゃり、"鬼のアウフグース"誕生前夜には物凄い熱の圧を感じました…

サウナをリニューアルされた直後にパンデミックが到来し、当時はかなり厳しい業績であったと伺いました。しかしそこから巻き返しを実現し、本年度日本サウナ大賞で受賞に至るまでの原動力となったことは流石という言葉しか浮かびません。

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先月末に行われたイベントを再掲しますが、たった1人の熱がどのように伝播していったのかを詳細に取り上げています。はじめた当初は1人だったとしてもその熱は企業や立場を超え、点から線、線から面へとつながります。

こちらでは施設を取り上げましたが、いちサウナファンであったとしても、まちの中の人であったとしても、たった1人の熱を起こす上での門戸は開かれています。どんな形であれ、熱同士のつながりを形成できるはずです。

地方だからこそ「面の取り組み」を前提に考える

点から線、線から面の取り組みはボトムアップの考え方ですが、あらかじめ面であることを前提にしてプロジェクトを動かすケースもあります。(この考え方ができるようになったのは、筆者が大変お世話になっている十勝サウナ協議会の皆様のご指導によるものです。いつも有難うございます。)

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面を前提とした取り組みで想起されるのは『おんせん県いいサウナ研究所』です。先進事例として各種メディアで取り上げられてますので、ご存じの方も多いかと思いますが、何より際立っているのは並々ならぬ「逆境力」。

百聞は一見にしかず、実際に足を訪れてみると豊後大野市はまだしも、主幹的存在である『REBUILD SAUNA』への道中は、まさにけもの道。福岡から車を走らせても5時間、大分空港からも2時間半を要する"秘境"サウナです。

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筆者は北は北海道・南は沖縄のサウナへ足を運びましたが、『REBUILD SAUNA』は紛れもなく日本で最奥地にあるサウナです。しかしながら現地へ訪れるファンが後を絶たず、逆境をものともせぬ凄みさえ感じられます。

大分県といえば"温泉"のイメージがあるかと思いますが、豊後大野市は大分でも珍しい「温泉が湧かない」まちとして知られています。観光資源の不足があったからこそ、面を前提した地域ぐるみの活動にならざるを得ません。

ついには市長自らが"サウナのまち"宣言を行いました。逆境力を言い換えると、マイナス要素をポジティブに変換できる力であるとも言えます。立地や資源のビハインドを言い訳にせず「わざわざ訪れるべき場所」と認識されたら、例えどれだけ遠くともサウナファンが足を運ぶ可能性があります。

サウナのまちの代表的なイベントとして『サウナ万博』が不定期で開催されていますが、1Dayのイベントに計100名の参加者が訪れたというのも注目に値します。『おんせん県いいサウナ研究所』および豊後大野市の取り組みは、今後地方でサウナに取り組む際のモデルケースになっていくでしょう。

「その場所にしかない価値」を全方位で発掘する

豊後大野市の例から、資源立地のビハインドは言い訳にならないことがわかりました。裏を返せば、たとえ観光資源や立地が優れていても「選ばれる場所」にならなければ、スルーされる危険性があるということでもあります。

したがって地の利があろうとなかろうと、選ばれうる場所の価値とは何か?を明らかにしなくてはなりません。ターゲットをサウナファンと規定すると「=サウナファンが魅力に感じる価値とは何か?」ということになります。

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豊後大野市の話題が続きますが『稲積水中鍾乳洞』は好例です。もともと豊後大野市の観光地でもある場所ですが、施設支配人のちょっとした気付きがのちに全国屈指のサウナスポットとして脚光を浴びることになりました。

面として取り組む地域には、得てして熱量ある仕掛人が存在するもの。『おんせん県いいサウナ研究所』の高橋氏によるテントサウナの催しで、施設支配人は「うちの鍾乳洞、もしかして水風呂になるのでは…?」と閃きます。

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鍾乳洞を水風呂とするために、敷地内にテントサウナスペースを増設。テントサウナを活用した事例はありふれていますが、単にプールを置くのではなく自社の土地にあった鍾乳洞を水風呂に使うという発想が画期的です。その案は、テントサウナ会でととのっている時に閃いたというから秀逸でした。

ふと見過ごしそうな資源も、サウナを基点にしてアイデアを膨らませることができれば、サウナファンの価値に昇華する可能性があります。そのためにはサウナファンの目線を養い、全方位で想像を膨らませたいところです。

「ツーリズム」から始め「ローカル」に転換する

「サウナファンが魅力に感じる価値とは?」という話をしましたが、とはいえ目線を養うのを自分達だけで完遂するには限界があります。そこでサウナツーリズムの目的で訪れる、県外の顧客に協力を仰ぐというのも一考です。

地方にとっての当たり前は、都会っ子にとっての当たり前ではないと言いますか、昨今のサウナブームは首都圏先行のトレンドが強く、地方においてどのような資源が価値になるのか、率直に聞いてみても良いかもしれません。

厳密には九州ではありませんが『九州とサウナ』では沖縄を取材したこともあるため、こちらの事例を取り上げさせてください。敢えて県外のサウナファンにターゲットを絞り、インセンティブと引き換えにモニターとして生の声をヒアリングするという試みも出てきています。

筆者が各地でヒアリングを行った感覚値ですが、地方×サウナの取り組みを新設した場合は、県外:6-7割、県内:2-3割の集客構造であることが多いです。県外客による情報収集~訪問~発信が先行するため、そこで提供価値を定義し、地元客へ価値を「昇華」していくモデルを検討したいところです。

※事業運営を前提とする場合、県外客による収益よりも地元客のリピートが主となる事業計画を策定することが求められるかと思います。ここで補足しておきたいのは、県外客が感じる価値=地元客が感じる価値にそのまま転用できるとは限りません。したがって誤認を防ぐために、敢えて「昇華」という表現を使用させて頂きました。釈迦に説法だとは思いますが、念のため。

法人化を検討し「公に活動していく」メリット

事業運営の話題を少ししました。『九州とサウナ』とは関係なく、筆者の個人的な私見を述べていきますが、地方×サウナのプロジェクトを有志たちで行う場合は、法人化を検討して良いと思います。以下に理由を説明します。(事業経験がある方には眠くなる内容かもしれませんがご容赦ください…)

一点目は、施設および企業などから案件を発注いただく事例があるためです。たとえばある温浴施設でイベント代行などを行った際、報酬をどのように受け取るかという事象が出てくるかと思います。この場合は雇用契約を結ぶうより、外注先として発注関係であった方がスムーズにコトが進みます。

二点目は、法人を認識していただくことによる機会の創出です。ネット上でわざわざ「法人やってます」と宣言する必要はありませんが、対面の場合は名刺交換を行う際に素性が話題となることはしばしばあります。そして地方がフィールドとしていて、仮に自治体担当者と対面する場合は尚更ですね。

三点目は、法人で得た収益を"地産地蒸"へと還元するためです。個人の金儲けのためにサウナの法人を作るのではなく"地産地蒸"を発展させるために、法人として事業運営の責務を担うことがゴールになります。例えばサウナグッズ一つを製作するにしても、収益がなければそれすらも賄えませんので…

ヒトモノカネを「地産地蒸」のために巡らせる

地方 × サウナにおける面の取り組みが機能すると、ヒト・モノ・カネの循環サイクルが巡っていきます。県内外のサウナファンが現地へ足を運び、現地の体験に対価を支払い、施設側においては客数と単価を担保できることが一つのモデルで、さらには二拠点生活や移住まで促進出来たら理想ですよね。

しかしながら現実は甘くなく、サ旅で選ばれるような人気施設であっても順風満帆という状況ではありません。先々月の『湯らっくす』による顧客アンケート結果を拝借しますが、浴場内の滞在時間が長くなり、客数自体は減っているという事実があるとのことです。

筆者は取材を兼ねて施設へお邪魔する機会もあったのですが、「一見繁盛しているように見える施設でも、完全黒字ではないのか…」と現実を知らされることが多い1年でした。パンデミックによる余波は大きく施設へ足繁く通い、意識的にお金を落とす程でないと調和すらも取れないかもしれません。

このような市況下で迂闊なことは申し上げられませんが、筆者が考える一つの仮説としては、県内外に選ばれる施設地域のモデルケースを少しでも多く作り、周辺の施設地域がそのモデルケースから学び、第二第三の成功例を創出するサイクルがどう構築できるかが本来求められるイシューなのかなと。

さらに課題を洗い出していくと、施設運営課題以外に人口流出・マーケット減少という社会課題が現実としてついて回ります。外向けの施策にとどまらないサイクルの推進こそが、"地産地蒸"の本来あるべき形かもしれません。

終わりに

筆者は『九州とサウナ』を卒業し、今後はnoteに登場した愛好家たちが九州を盛り上げるべく更なる活動を続けていきます。しかし『九州とサウナ』は裏方に近い存在です。あくまで施設とサウナファンの方が主役で、その立ち位置は今後も変わらず、肩書があるから偉いということはまずありません。

筆者個人の想いを振り返ると、決して九州プロパーの人間ではないにも関わらず施設やサウナファン、自治体の皆様には大変お世話になりました。叱咤激励も多々頂き、見知らぬ土地で一回りも二回りも大きく成長させて頂いた三年間でした。この場を借りまして皆様には”熱く”御礼申し上げます!

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九州というフィールドを改めて見渡すと、サウナの可能性に満ち溢れている地域であると心の底から実感します。全国でも指折りのサウナ施設があり、水質も抜群で、景色や食も最高、そして何より人の良さが際立ちます。サウナ聖地の最有力である九州の良さを、これからも広めさせてください!

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