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群発頭痛サバイバー20年の逃避

わたしを長年くるしめた群発頭痛についてようやく整理できるときが来た。わたしは20代前半〜40代前半にかけて、群発頭痛から逃げ続けていた。真正面から戦っていたときもあるが、為す術も尽きていた。頭痛になったらできる限り短い時間で去ることを祈るくらいしかない。ところが頭痛の発作がここ数年とても軽くなったのだ。群発頭痛が続く期間も1年の中で1週間以内に留まる。どうやら寛解を迎えたらしい。本人も何故、群発頭痛から逃げ切ったのか、見逃してくれたのか、許してもらえたのか。食生活の改善、禁煙、生活環境の変化、ストレスの緩和などの、複合的な理由かもしれない。決め手になった要因がわからない。年齢を重ねたからだろうか。歳を重ねて寛解を迎えた。これはこれで希望が見いだせる人がいるかもしれない。わたしは群発頭痛と生涯付き合うものだと思っていたが、今は逃げ切ることができた。群発頭痛がなくなってかなり生きやすくなった。将来の再発についてはなんとも言えないが、いまはこれで十分だ。

【わたしの群発頭痛はこんな症状】

・群発頭痛になる30分から1時間前に予感がある(目の周りがシュワシュワしはじめる)

・右の奥がミリミリと痛くなり徐々に痛みの強さを増しながら最終的には会話困難、横にならないと痛みに耐えられないくらい猛烈に痛くなる(邪気眼ではない)

・30分〜3時間程度続くと何故か急に収まる

・頭痛が収まると痛みから開放されたことによる多幸感に包まれる。頭痛がないことはなんて素晴らしいことなんだろう!とても幸せな気分になる

以上のサイクルが、3月ないしは9月または両方の時期に、概ね2〜3ヶ月くらい、ほぼ毎日1回以上発作が続く。

この頭痛の特徴は頭痛が30分〜1時間くらいで収まることが多い。うっすら後頭部がツーンとするとか、こめかな頭痛とかではなくて、頭痛というよりは、右目奥のはっきりとした痛みだ。右目奥が焼けるように感じたり、ときにミリミリと痛い状態から始まって、頭痛の強さは時間経過とともに強まる。発作が収まるのが他の頭痛に比して早く収まるのが特徴だと思う。強烈な発作の時は半日以上MAXの痛みが続いたこともあった。半日も続くと精神が持たない。半日近く頭痛が続いたときは、あまりにも痛くて、耐えられなくなって、結果、気づかないうちに寝ていた。痛みで気を失ったのかもしれない。

【群発期にこれをやると確実に群発頭痛が発生する行為】

・飲酒(飲酒後1時間以内にドーン)※以下、余談で酒について書きますが、なるべく群発期は飲まないようにしましょう。オススメしません。

余談だが、わたしは20代はほとんど飲酒しなかった。そもそも酒に弱く、飲んだあとに調子を崩しやすいことも多かった。たった1本のビールを飲むと、もう1日が終わってしまうくらい眠くなり、寝てしまう体質だった。なので、1ヶ月に1本もビールを飲まない日々がわたしにとっての平常運転だった。

30代に入った頃から、ナツキさんという5歳くらい年上の先輩とよく飲み歩いた。おそらくこの頃、焼酎という存在を知った。それまではビールかサワーくらいしか飲まなかった。煙草を吸わない人は煙草の銘柄も販売価格も知らないだろう。興味がない情報は頭に入らないので知らないのだ。焼酎で最初に飲んで美味しいと感じたのは、「鍛高譚」というシソ焼酎ではないか。シソ焼酎というイメージから、もっとシソ臭い印象を受けたが、なるほど、こういう味なのか、ずいぶんと飲みやすい透明な水だな、と思ったのを覚えている。はっきり言って美味い。この頃から、酒の席への参加が増えていき、焼酎は芋を選ぶことが多くなった。この頃よく飲んだ黒霧島、白波は今でも好きだ。

ナツキさんはいろいろ酒を教えてくれて、ある日ホッピーにたどり着いた。ホッピーの開発者は神ではないかと思った。ホッピーは白と黒があるが、わたしは黒が好みだ。どちらでもいけるが、生ホッピーがあればそちらを選ぶ。おそらくホッピーが注文できるお店であれば、乾杯のビールを飛ばして、その店ではホッピーで始まり、ホッピーで終わることが多い。わたしのペースだと、ホッピーの外(瓶)に対して、3杯を楽しむ。比率でいうとホッピーはかなり薄めになる。これがわたしなりの黄金比で、ちょうどよい比率だという結論に至っている。そもそも、店によって中(焼酎)の提供方法(氷なし、凍った焼酎、氷と焼酎、グラス交換の有無)、提供量に大きな差がある。店ごとの提供量を認識していないとサービスがよい店ほど泥酔になりやすいので注意が必要だ。

行きつけの酒場もできた。当時のオフィスにほど近い、家族経営のやきとり屋では一人で飲むこともしばしばあった。一人飲みの楽しいところは喋らなくても、急いで食べなくても、ゆっくり食べなくてもよいことだ。文庫を読みながらちょっと飲んで帰るくらいがちょうどよかった。酒の席に限らないが、人のペースをあわせることが、根っこの部分ではとても苦手だ。ドラマーとしては根っこの部分で致命的な欠点なのかもしれない。一緒に酒場で飲むと盛り上がるし楽しい。楽しいのだがわたしのペースが買ってに狂ってしまい、食べるペースと飲むペースが噛み合わず、よく泥酔した。少しずつ、酒耐性もついてきたが、電車に乗るとよく寝てしまい、家と逆方向の電車に乗ることもしばしばあった。

話がそれたが、30代の頃からよく飲んだ。本当によく飲んだと思う。いい時代だった。だが、残念ながら群発頭痛と飲酒は極めて相性が悪い。酒の場を台無しにするレベルだ。とにかくその場にいられなくなるので、そういうときは無理に参加せずに帰るしかないのだ。群発期の飲酒は自殺行為なので、自粛した方が良いと考えていた。

この頭痛のメカニズムは将来誰かが解明してくれるのではないかと期待している。群発期に一番重要なのは、わたしの場合は、日中に頭痛にならないように、発作の時期をコントロールすることだった。ビジネスの場で発作が出たら、場合によっては親切な方が救急車を呼んでしまうかもしれない。事実、わたしはそうなることを防ぐため、近しい人にはあらかじめ群発頭痛の概要、発作がおこっても救急車を呼ばずに、ほっといてほしい。頭痛の予感はだいたい当たるので、その猶予期間中に、自分で医務室に行く時間はあるので自分でなんとかする。あと、発作がきついときは、たぶん話が頭に入らないし、返事も曖昧になるので、重要な話はあとに回してほしい。そいう周知を出しておいた。

わたしの群発頭痛は命にかかわるような頭痛ではなくて、一定の時間、猛烈に痛いだけなのだ。救急搬送されて、酸素吸引をすると、頭痛の痛みが緩和するらしいが、急搬送されている最中か、あるいは病院についた頃には群発頭痛の症状は収まってしまうのだ。

群発頭痛は短期決戦なので、頭痛薬や痛み止めを飲んでもタイミングがあわないので無駄に終わることが多い。しっかりと痛みのピークを迎えてから、頭痛薬の効果が遅れてでてくるのだから、毎日薬を飲んでも胃を悪くするだけで、無駄なので薬はなるべく飲まないことにしている。

都合よく群発頭痛の発生が発生する時間帯をコントロールする術はないだろうと、長年考えていたが、あるとき閃いた。ヒントは酒にあった。

群発頭痛の期間中は、飲酒後すぐ発作がでること、1日1回程度の発作なので夜のうちに一度発作を自分で意図的に起こしてしまえばよいのではないか?そもそも、毎日頭痛になる期間なのだから、どっちみち発作は必ずやってくる。飲酒してようが、してまいが、結局猛烈な頭痛は襲ってくるのだから、飲まなきゃソンソンではないか。

意図的に群発頭痛を起こすために酒を飲むというのは覚悟もいる。はやくて数十分後には痛みがくるからだ。ただ、外にいるよりも、家にいるなら安静にできる体勢もとれる。周りに迷惑をかけることもない。よい解決なのかもしれないと思っていた。案の定、飲酒をすれば直後にドーンと発作がはじまる。そして翌日。日中に発作はでないことのほうが多かった。もしかすると、1回だけ夜に飲酒すれば、それで今後のサイクルは原則夜に発作になるのかもしれない。いろいろ理由はつけているが、結局、家飲みも好きなので酒は飲むのだから渡しの場合はこれでよいのだろう。

痛さの説明について、痛みの比較は説明しにくいし、共感得られるかわからないが、わたしは痛風の症状が出たことが2回ある。痛風なら、群発頭痛に比して、経験したことがある人も多いと思う。わたしの場合、最初の痛風は、寝て朝起きたら、足首が骨折したと思ったくらい猛烈に痛かった。なぜかわからないが骨折を疑った。痛いのを我慢して、整形外科に足を引きずりながら歩いていき、診察を受けた。びっくりするくらい真っ赤に腫れていた。靴下を脱ぐだけで相当痛さを感じていた。診察を受けると「あぁ、ひどいね、これは痛風だね。とにかく今は何もできないから今日は家で休んでください」と素っ気なく言われた。これにかなり怒りを感じた。こんなに痛いのに、無理して病院に来たのに、どうにもしてくれないのか・・・。ここまで歩いて来るのは泣くほどシンドかったのに。

2回めの痛風の症状はつい数ヶ月前に発症している。今回は膝に出た。このときも歩けなくなるくらい痛かった。膝が真っ赤に腫れていた。左足に症状が出たのだが、あきらかに、右足と太さが違っていた。これはこれでものすごく痛かった。痛風は発作がでた日に病院にいってもやることがないので冷静に膝を冷やすことにした。数日間、体勢を整えればなんとか我慢することはできた。

結局、痛風と群発頭痛のどっちが痛いかというと、痛みの部位の違いが大きいように思った。わたしの場合は、群発頭痛の方が痛みが強いように感じた。目の周りと、足の痛みの差としか言えない。顔まわりは痛みに弱いのかもしれない。あと痛風は収まることがわかっているからだ。せいぜい1〜2日の間だけやり過ごせば発作自体は収まるのだ。群発頭痛はながい時期だと3ヶ月間も毎日続くのだ。あまりの痛みで、それが執拗に、毎日かならず来るので、悔しくて泣いたこともある。なんでこんなとんでもない痛みに毎日襲われないといけないのか。本当に理不尽である。

【群発頭痛の方が周りいたらどうすべきか】

わたしの場合、頭痛の発作時は、ほっておいてほしいと思っていたが、人によって事情は異なるかもしれない。自分ではどうにもならないので、医務室を手配してほしい人もいるだろうし、その場ですぐに横になりたい人もいるだろう。群発頭痛が原因で死ぬことはないので、群発頭痛持ちだった場合は、見守っていただけるとよいのではないだろうか。

頭痛というのは本当に気をつけたほうが良い。わたしの同僚から奥様の頭痛について軽い相談があった。数日間ずっと後頭部が痛いということで、群発頭痛持ちを周知していたので軽い会話があった。わたしの症状とはまるで違うので、わたしの頭痛は命に問題はないが、病院で精密に確認すべきではないだろうか、という会話をした。その後精密検査をしたところ、結果的には、命に関わる頭痛だった。即入院していまは問題ないそうだが、こういう事例もあるので頭痛だからとやり過ごすのも怖い。

見た目では群発頭痛持ちかどうか、だれにもわからないので、わたしは近しい人には周知していたが、「わたしは群発頭痛といま戦ってます。しばらくお待ち下さい」ということが、誰が見てもわかるような、群発頭痛「グンツーマーク」を作っても良いかもしれない。グンツーとは、群発頭痛に苦しむわたしを見て、ナツキさんが群発頭痛の愛称として「グンツー」と名前を付けてくれた。群発頭痛という名前そのものが恐ろしいイメージがある。群発頭痛のことを説明するとき、「痛みで自殺してしまうほど痛い頭痛」という説明をするときがあるが、あまりの重々しさにわたしも相手も困ってしまうこともある。呼び方次第で心持ちが少し変わったように思う。人に理解をしてもらえている安心感もあった。

群発頭痛の方は、なかなか周りの人に言えない環境の人もいるだろう。わたしも若い頃は自分の事情をうまく説明ができずに、理解もなかなかされなくて孤独に戦っていたときもある。そういう人も多いのではないかと思っている。頭痛が原因で自分のビジネスを続けられなくなる方もいる。群発頭痛について世間の認知が向上するだけでも、世の中の群発頭痛持ちの方が救われる可能性はあると思う。

【群発頭痛のしのぎ方】

群発頭痛の発作中は、わたしの場合、基本的にやるべきことがない。20年以上の付き合いだが、残念ながら有効な対策がなかった。打つ手なしなのだ。ただ、いくつかの情報共有によって、効果があったときもあるし、効果がないときもある、確実ではないが、藁を掴むようなしのぎ方ならいくつかある。

・外にでて深呼吸を繰り返す

発作の前に30分くらいから頭痛の予感がある。この猶予期間中に外に出て呼吸を整える。もしできるのであれば全集中の呼吸がおすすめだ。呼吸によって波紋を練り上げるイメージもよい。深呼吸を繰り返すと緩和された場合がある。頭痛がこれからくることがわかると、その不安から、わたしの場合は呼吸が浅くなっていることが多い。気分の転換とこれからおこる頭痛との戦いに備えて覚悟を決める上でも良いと思う。

・顔、手、首、足を冷水で洗う

わたしの場合、頭から水をかけて首、手も肘まで、足は可能な範囲を冷やす程度に水をかける。自分でもなんの意味があるかわからないが、こうすると気分的にも少し楽になる気がするからだ。群発期はタオルを持ち歩いている。タオルは発作がでたときに涙がでることがある。痛みで泣いているのか、症状としてそうなのかは微妙なところだが、タオルで顔を抑えたりするとよいだろう。

・鼻炎用スプレーを使う(点鼻薬)

これは効くときは一瞬で効く。なぜだかわからないが発作前に一吹きするだけで痛みがマックスまで至らずに瞬間的に消えることがまれにある。魔法のスプレーだ。残念ながら効かないことも多い。わたしは群発期間中は必ず持つことにしている。効かないことも多いが、痛みが消えたときの多幸感が物凄いのだ。ありがとう、鼻炎用スプレー!とかなり大げさに感謝している。本当になんで消えるのかが、よくわからない。鼻の奥と目がつながっているからだろうか。用法は守ったほうが良いのでおすすめはしない。

・発作中にいたい方の目で遠くに焦点をあわせる

これも謎の対処法だが、発作中に遠くの1点にピントをあわせるようにしていると、痛みと気が紛れるような気がする。痛みの収まりやすさが、ほんの少し早まるように思うが、実際のところ、それどころではないことが多い。

残念ながら20年以上、群発頭痛と対戦しても勝敗でいったら、圧倒的に負けまくりだ。もっとよい戦い方があったのかもしれないが、わたしは早く収まることを祈って、安全なところでやり過ごすしかなかった。これといった攻略法もないのが現実なのだ。群発頭痛に効果がある飲み薬もあるらしい。皮下注射もあるそうだ。皮下注射で群発頭痛の痛みは収まるらしいが、副作用なのか、別な痛みが出ることもあるそうだ。費用対効果も微妙なのと、注射がそもそも苦手なので、自分に注射ができるわけがないのだ。わたしの場合は、おそろしくて試したこともないが、注射を最終手段として持ち歩く方もいる。これからも群発頭痛の対処法、選択肢がもっと増えるとよいと思う。











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