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渡米10-11ヶ月 ボストン、ニューヨーク、東京での映画撮影、そして家族で2度目の渡米へ


2024年7月25日(渡米338日目)

今、家族で羽田発ニューヨーク行きの便に乗っている。家族は6月の下旬から1ヶ月近く帰国し、その間、僕はColor Correctionの残りのサマークラスを受講しながら、新作映画「Fading Memories」の撮影を進めてきた。

Fading Memoriesはボストンと東京を舞台に繰り広げられる初のグローバルな短編映画だ。家族が一時帰国期間中にタイミングよく遊びにきてくれることになった役者仲間の芦塚さんと甥っ子のゆうきと一緒に何か一本、映画を撮れないかという話になり、留学先で若年性認知症になった弟を助けるために奮闘する兄、兄弟の絆と再生を描いた物語を思いついた。

渡米前からオンラインで打ち合わせとリハーサルを重ね、彼らが到着後、翌日にはリハーサルを開始、その後、一週間近く連日撮影を続けた。合宿状態で寝食を共にしながら、寝る間も惜しんで30近いシーンをなんとか撮り終えることができた。

その後、ふたりを連れて独立記念日翌日の7月5日からニューヨークへ赴き、MJ、グレートギャッツビーと2本のミュージカルを堪能した後、7月8日にほぼ11ヶ月ぶりに日本に一時帰国した。

今回、帰国中には主にやりたいことが3つあった。それはFading Memoriesの回想シーンを撮影すること、虫歯の治療をすること、そしてビザの更新をすることだ。そのうち最初の二つは叶えることができたが、残念ながらビザの更新に必要な書類(DS2019)が米国のIIEからギリギリまで届かず、(届いたらすぐに米国大使館での面接ができるように手筈を整えていたものの徒労に終わり、)ビザの更新ができなかった。どうして数ヶ月前から申請していたのにこんなに時間がかかるのか、全く腑に落ちず、その対応をとても残念に感じた。まだビザの有効期限は来月末まであるので、アメリカに再入国するのには問題がないが、今後、何かの緊急事態が発生し一時帰国する際には、大使館でのビザの更新が必要なってしまう。

【渡米10ヶ月の振り返り】
6月18日に子ども達の通う学校も春学期が修了し、いよいよ夏休みに突入した。同日、長男の脊髄炎の再発予防に向けて、長男を伴いボストン子供病院へ向かった。神経内科の担当医のフォローアップ検診を受け、同時に退院後3度目となる免疫グロブリンIVIGの投与を行なった。長男は担当医から英語で問診を受けたが、かなり聴き取れるようになってきた様子で、その際、僕の通訳のサポートは特に必要なかった。

後日、血液検査の結果、免疫力を高めるビタミンDが不足していることなどがわかり、担当の先生が電話をしてきてくれて、サプリを飲むように勧められた。そもそもボストンのあるニューイングランド地方は日照時間が少ないため、ビタミンD不足の人が多いのだという。加えて長男は普段学校が2時半に終わるとすぐに帰宅して、その後、遊びに出かけることもない。こちらの学校に来て中学一年生に相当する第7学年の一年間が修了したが、親友と呼べるような親しい友達もできず、学校にはまだ馴染めなていないのが現状だ。

子ども達が夏休みに入り、大学院の授業も夏学期は2クラスと比較的落ち着いているので、家族で近郊のケープコッドの海辺に行き、海遊びや地ビールを楽しんだり、友達の家にバーベキューに呼ばれたりと、振り返ってみると昨年夏にボストンに来て以来、少し落ち着いた時間を過ごすことができている。長男が学校に馴染まないことや今後の高校受験のこともあり、家族とこの先どこまでボストンに一緒にいられるか、まだ不透明な状況もあるが、少しでも素敵な思い出をたくさん作れたらいいなと思う。

大学院では、5月後半から夏学期が始まり、引き続き「Color Correction」のクラスを受講中だ。これまでCinematography(映画撮影)のクラスなどを通じて、いかに撮影の段階で照明やスタジオワークを駆使して物語を伝えるのに欠かせない独自の映像を作り出すかを学んできたが、今回のColor Correction のクラスを通じて撮影後のポストプロダクションの段階でも、さらにその映像の世界観を補強したり、またはどれだけ新たなものに作り替えることができるのかを学び、新たな可能性に大きく目が見開かれるような思いがしている。このクラスではDaVinci Resolveを使って色補正を行うが、授業も後半に差し掛かったあたりから内容も難しくなり、次の授業までの間に大学の編集室に入り浸り、経験値の高いクラスメイトのサポートも受けながら、なんとか課題をこなしている。

またこの期間、引き続きこれまで制作した作品をバークリー音大のサウンドエンジニアとコラボして仕上げたり、新たな作品の制作準備や撮影期間にも入り、日々課題や〆切に追われている。

【渡米11ヶ月の振り返り】
長男の毎月の IVIG の点滴投与の合間を縫って6月27日(水)から約4週間、家族が日本に一時帰国した。次男はそのうち3週間、長男も1週間だけ地元の学校に通い、その後はオンラインや近くの塾で夏期講習などを受けた。やはり日本の方が友達も多く楽しい様子だ。妻も僕も人間ドックや歯科検診などを受け、先週ボストンに戻ってきた。 その後長男が 5度目の IVIG の点滴投与と MRI の検査を受けた。次回は 誕生日の前日となる8月12日 に最後の IVIG の投与を受ける予定だ。今回7月26日はパリオリンピックの開会式を見ながらの投与となった。

長男がこちらの学校に馴染まないことや今後の受験のこともあり、
家族がこの先どこまで一緒にボストンにいられるかはまだ不透明な状況だ未。そのため、これまで入居していたブルックラインのマンションは色々と大家に掛け合ってみたものの最終的に一年契約の更新を見送り、子供達が通う同じ学区内にある少し手狭な物件に引っ越すことになった。

幸い、大学の親友の母親がその物件のオーナーで新規契約にまつわる様々な手数料をゼロにしてくれたばかりか、我が家の状況も鑑みて、2ヶ月前に告知すれば途中解約できる契約内容にしてくれた。子供達の通う学校へは徒歩 20 分と遠くなったもの、 これまで月 3100 ドルかかっていた家賃も 500 ドル以上安くなった。1ドル 160 円を 38 年ぶりに突破するような歴史的円安傾向が続く中で、我が家の家計にとってはとてもありがたいことだ。

ここ最近、ふとした幸運に出会うたびにどこかで神様が力を貸してくれているような感覚を覚えることがある。その一方で視力は確実に低下していて、矯正視力も0.7が上限値になってしまったし、手の前にあっても見えていないものが多い。一時帰国の際に持って帰るはずだった貴重品一式や、帰国時には財布を紛失したと勘違いしたものの、最終的には室内の別の場所に置き忘れていたという事案が立て続けにあり、記憶と視力の双方が弱ってきているのを感じる。

何かがないと感じた瞬間に、視力が良ければ、すぐにその場所にあることに気がついてすぐにリカバーすることもできるのだろう。だが、視力が著しく低下してきた今、どこに何を置いたか、記憶しておかないと視力を頼りにそれを探すことができない。とても不甲斐なく、こうした変化に生きていることを辛く感じる瞬間もここ最近、確実に増えたと認めざるを得ない。

今回はヒヤリハットで済んだが、きをつけなければ今後も同じことは何度でも起こるだろう。一時記憶が曖昧なのには、忙しすぎることも原因していると思う。あまり物事を抱え込みすぎず、心の中も身の回りも日々スッキリした状態で過ごせるように心がけたいと思う。

網膜色素変性症と同時進行する白内障の影響もあってか、ここ最近一段と日々の生活の中で見えづらさを感じる。渡米して来月で一年となるが、当初渡米前に思い描いていた遺伝子治療の機会はまだ巡ってこず、忸怩たる思いを抱えている。製薬会社が現在パリでフェーズ2の治験を行なっていると聞いているが、この先、いつになれば米国内でも治療が受けられるようになるのか不透明で、その機会が一日も早くやってくることを願ってやまない。

大学院では、夏学期の前半が今月上旬に終わり、 聴講を続けてきた「Color Correction」 のクラスも終了。ボストン、そして東京を舞台に撮影した新作映画「Fading Memories」の撮影も無事にクランクアップした。その後は東京と大阪と過ごす家族の時間を大切にしながら、映画に第一線で携わる恩人や仲間との時間を過ごした。

そうしたとき、今後の映画制作の突破口になるかもしれないニュースが飛び込んできた。それは、視覚障害のある作家や映画製作者をサポートするために Netflix とあるNPOが立ち上げたフェローシップ特別研究員制度 「Visionary Fellowship」についての情報だった。 この秋学期以降、来年の卒業に向けて卒業制作作品の制作準備が本格化するが、制作費は学生の完全自己負担となる。しかし、もしこのフェローシップを獲得することができれば、55000ドル(900万相当)の制作費の支給が得られるばかりでなく、経験豊富な撮影クルーとともに映画の本場ロサンゼルスで作品制作に臨むこともできる。とても狭き門であることは間違いないが、ここ米国でいかに制作資金やクルーをやりくりして、本当に映画が撮れる環境を作り出せるかは、こうしたファンドが獲得できるかにかかっているとっても過言ではない。応募締切まであと10日ほどしかなく、長編作品を書き上げたり、短編を撮影したりとやるべきことが目白押しだが、この千載一遇のチャンスをなんとかものにすべく、準備を進めていきたい。

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