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大内転筋(Adductor Magnus)

今週のmuscleマガジンは大内転筋について!

内転筋群の中でも臨床ではあまり意識していない方が多い印象です。

『大』という名の通り大きな筋肉なので、実は運動への影響もかなり大きいです。

これまであまり意識したことがなかったな~、という方は今回の記事で改めて整理するきっかけになると思います!

それではさっそくいきましょう!

大内転筋の起始停止

画像3


(Visible bodyから引用)

起始:
 深層:恥骨下枝、坐骨枝  表層:坐骨結節
停止:
 深層:大腿骨後面(粗線)  表層:内転筋結節
支配神経:L3~4
 深層:閉鎖神経      表層:坐骨神経
作用:
 深層:股関節内転     表層:股関節伸展
(基礎運動学第6版)
起始:恥骨下枝(短内転筋と一部重なる)、坐骨枝、坐骨結節
停止:大腿骨粗線内側唇、内側上顆
支配神経:閉鎖神経後枝(L2~4)、坐骨神経(L4~5)
作用:股関節内転、前上部は屈曲、下部は伸展
(分担解剖学1総説・骨学・靱帯学・筋学)
起始:恥骨下枝、坐骨枝、坐骨結節
停止:内転筋結節、粗線内側唇
支配神経:坐骨神経、閉鎖神経(L2~4)
作用:股関節伸展 (内転・外旋・内旋は諸説あり)
(オーチスのキネシオロジー第2版)

画像を見てもわかる通り、非常に大きな筋肉です。

書籍によって深層と表層、前部や後部といった分け方もされており、その作用も意見が様々です。

また、坐骨神経と閉鎖神経の二重神経支配であることも大きな特徴です。

画像4


(Visible bodyから引用)

内転筋という名前の通り内転作用はあるのですが、実は股関節伸展作用も非常に大きいことがわかっており、ハムストリングスと共同で働いています。

筋機能

大内転筋の内転作用は、前部線維が全屈曲可動域において大きなモーメントアームを持っています。

中部・後部線維は屈曲角度によってモーメントアームが変化していくことも報告されています。


また大内転筋の重要な作用の1つとして、股関節伸展作用があります。

文献によって大内転筋はハムストリングスの一種として捉えられています。

股関節伸展位の場合、後部線維は大殿筋やハムストリングスよりも長いモーメントアームを持ちます。


大内転筋だけでなく、内転筋群の機能的な役割として身近なものは、荷重位での骨盤の安定化です。

歩行や走行では立脚と遊脚の切り替えのタイミングで活動が高まることが報告されています。

スクワット動作でも床反力によって股関節外転モーメントが産生されるので、それに拮抗する形で内転筋が働きます。

図1

また、股関節の安定化作用も見逃せないポイントになります。

上の図のように外転筋は大腿骨を上方へ引き上げる作用があり、外転筋のみの過剰な収縮は股関節の適合不全の原因となり得ます。

一方で内転筋のベクトルは大腿骨頭を臼蓋側へ引き込む方向へ作用するため、股関節の安定化に関わると考えられます。

これは外転筋が悪者で内転筋がいい、というわけではなく両者を含めた全体のバランスが大事ということをつけ足しておきます。

筋膜連結

画像2

大内転筋は、ディープ・フロント・ライン(DFL)の下後部に含まれます。

(中略)⇒大内転筋⇒骨盤底筋⇒前仙骨筋膜⇒(中略)

骨盤底筋との連結を考慮すると、腹圧に関係した腰痛や尿漏れとの関連も考慮する必要がありそうです。

もちろんその先の大腰筋や横隔膜とのつながりも大きく影響を与えています。

少し細かな話になりますが、前仙骨筋膜との連結もあるため仙骨の可動性にも影響を与えていることがわかります。

仙腸関節が硬い人ほど内転筋も硬くなります。

選手や選手を指導している方はぜひ内転筋からの仙腸関節のつながりを意識してみてください。

経絡

画像5

経絡としては、大腿の内側を通る肝臓の経絡が最も関係があると考えられます。

肝臓の経絡は母趾の外側から始まり、下腿前面内側から大腿内側を通り腹部の前面まで続きます。

内転筋は恥骨に付着するので、腹筋群との関係があることにもつながっていきますね。

肝臓は食べすぎや飲みすぎ、油のとりすぎなど食習慣の影響が非常に大きい臓器です。

ストレッチやマッサージで改善しにくい場合は、肝臓の働きが弱っている可能性もあります。

そのような場合は、食習慣の見直しや経絡の始まりである母趾の外側をマッサージしてあげることも有効です。

大内転筋の周辺組織

画像6

大内転筋の周囲には非常にたくさんの筋肉や神経、血管があります。

1つは、内側広筋と長内転筋と共同で作っている内転筋管(ハンター管)です。

この膜の中を大腿動静脈と伏在神経が走行します。

伏在神経が筋などによって絞扼されて出現する神経症状をハンター管症候群と呼びます。

ハンター管は大腿骨内側上顆の付近で内転筋腱裂孔まで続きます。

内転筋腱裂孔を動静脈が通り、名前が膝窩動静脈に変わります。

腱裂孔で絞扼が起こることは少ないと言われていますが、その前の内側広筋や長内転筋によって絞扼を受けることがあります。

大腿内側の痛みやしびれをみたときは、この辺りの解剖をイメージして評価してみてください。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

ただ内転作用を持つだけではなく、ハムストリングスの作用を持ち血管や神経ともかかわりが深い大内転筋。

普段意識していなかった方は、ぜひ一度この記事を参考に臨床でみてください。

きっとこれまでとは違うものが見えてくるはずですよ!

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