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あなたの人生を、1秒でも長く笑顔で過ごせるように

突然だが、僕が派遣会社のキャリアカウンセラーとして働いていた時代の1日を綴ってみようと思う。

始業は午前9時からだったにも関わらず、僕は毎日午前8時前には出社していた。ゴミ出しや掃除、各種雑用をやる必要があったからだ。

ちなみにこの行いに給金は発生しない。入社時に「毎朝必ずやること」と教わったので、それって仕事の1つなのでは?と思うのだが、どうやら会社としては仕事とは認めていないようだった。

そうして雑用を終えた辺りで、先輩社員や上司、最後に部長や社長が出社してくる。

社長が出勤した時、僕は必ず挨拶とともに社長の顔を密かに注意深く観察していた。

今日の社長の機嫌はどうか。この機嫌次第で、その日がやりやすくなるかとてつもなくやりづらくなるかが決定する。


それは午前9時になって、朝礼が行われる際に最初に顕著に出る。

機嫌が良い日は社長は特に何も言わない。「じゃあ皆さん今日もよろしく。」くらいだ。

機嫌が悪い日は、まず課長に「今週の課の営業成績はどうなってる?」といきなり質問し、課長がそれに回答すると、「そんなんでええと思ってんのか。お前等の仕事は何なんや。」というお説教から始まる。

ちなみにこの時は成績がどれだけ良くても関係ない。単に説教の内容が変わるだけで、このイベント自体は必ず発生する。エンカウント率100%だ。


そうして朝礼を終え、各々仕事を開始。僕はこの時点で疲れているのだが、会社としてはここからを仕事として見ている。

午前中に行うことは、取引先や求職者、既に就業しているスタッフからのメールチェックや電話対応、新規開拓のための営業電話やアポ取り、各種書類作成などなど。

社長の機嫌が悪い日は、この時間帯が最も地獄となる。

僕達社員はいつもの通り仕事しているのだが、何かにつけて「おい、○○」と誰かを呼びつけては「お前、これは何なんや。」という風に謎のお説教が始まる。

内容は多種多様。書類の内容や営業成績のことはまだいいのだが、やる気が無いとか覇気を感じないとかまで入ってくる。

普段は気にも留めてないことを、機嫌の悪い日はものすごい勢いで怒鳴り散らしてくる。

しかし、社長なので誰も歯向かおうとしないし、意見をすることもない。

とにかくこの時間をやり過ごすことをみんなひたすらに考えていたように思う。

なので、時折取引先に直行したり、始業開始早々に外出する時は本当に天国だった。社長と同じ空間にいなくて良い、あの淀んだ空気の漂う社内にいなくていいのは、それだけで気持ちが落ちついた。


午後に差し掛かると、社員はほぼ全員が外出する。

取引先を回ったり、派遣スタッフや求職者と面談したり、派遣先と求職者の顔合わせなどなど。

この時間は気がラクと言うと語弊があるかもしれないが、社長もいないし1人で気兼ねなく行動出来るのでやりやすいことこの上なかった。

それでも求職者が連絡も無しに面談に来なかったり顔合わせに来なかったり、派遣スタッフが辞めたいと申し出てきたり取引先から「おたくの○○さんが~」というクレームに対処していると、ものすごく精神をすり減らす。

そして、会社の終業時間は18時なのだが、17時半とか18時に会社に戻ると社長から「就業時間内に会社に戻ってくるヤツがあるか!」と怒鳴られるので、たとえ何もなくても最低でも18時半には会社に戻るようにしなくてはならない。

そこから報告書類の作成や各種資料の整理、明日の準備など諸々あるためそのままでは退社出来るのがものすごく遅くなる。

少しでも早く帰るために、カフェや駅構内の椅子に座り、社内携帯で可能な限り報告書を作り、資料をまとめていた。

ちなみに、18時半に会社に戻るとまだ社長がいる可能性が高く、機嫌が悪いと帰社早々に呼びつけられて「お前今日何件回ってどれくらい成果得たんや。」という詰問と説教が始まり帰れなくなるので、19時~19時半に帰社するようにしていた。


そうしてようやく会社に戻り、ここでもゴミ捨てなどの雑用もあわせて進め、気付けば時間は21時頃。

みなし残業制の会社なので、どれだけ残業となろうとも給料は変わらない。

疲れ切った心と身体を引きずり、1時間かけて自宅に帰る。

何も考えないまま食事を済ませ、シャワーを浴び、床につく。

そうして眠ると、また朝が始まる。

これが当時の僕の1日だ。

この1日の間で、僕が笑顔になれる瞬間はなかった。

いつも社長の顔色を窺い、周囲から浮かないように気を遣い、今日は何のトラブルも起きないでくれと願いながら仕事をする。

この時代、自分は何のために生きているのかを毎日1度は考えていた。

この生活を8か月間過ごしたところで僕は限界を迎えたわけだが、8か月という人生の中で見ればとても短い期間だったにも関わらず、僕は未だにこの時のことを夢に見る。

そして目が覚めて、夢だったと分かってひどく安堵する。

トラウマだとか心の傷が出来るのに、時間は関係ないと言うが、まさにその通りだと実感している。


いま毎日を苦しく過ごしている人がいたら、どうか今すぐ抜け出す準備を始めてほしい。

当たり前のことを言うが、あなたの人生はあなたのものだ。

1秒でも長く、笑顔で幸せに過ごす権利があなたにはある。

それを認めない場所があるのなら、そんなところからはすぐに離れていい。

踏み出すことは勇気のいること。

でもその先で、希望の光があなたを待っている。早くおいでと、あなたをきっと待っている。

「今ここから出ることは逃げなんじゃないか」という気持ちを抱くことは、それだけあなたが責任感が強く立派な人であるという証拠だ。もうそれだけで十分だ。

そこから離れて、今度は自分のために生きていってほしい。




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