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楽器のお値段〜私のバイオリン🎻②

こんにちは。高月香里です。

前回の続きです。

ウィーン製のバイオリン、マンモス牙をあしらった弓で練習するようになり、滞りかけていた何かがまた歩みを始めたような気がしていました。

数ヶ月後の発表会では、同じ門徒の方から「楽器を替えられたのですね。よかったですね」と言われました。と言うことは、私が以前使っていた楽器はそんなに良くないとわかってらしたのか?と思いましたね。

買換えた数ヶ月後の発表会

この門徒の方は70過ぎのかたで、先生から100万円の楽器を使っていると聞かされていました。「凄いなぁそんなにお金をかけるなんて、私には無理」と思っていましたが、私もそこそこの楽器を手に入れたんだなと思えました。

上には上があるように、別の門徒のかたも、60代のかたですが100万円の弓を2本持っていると聞かされたことがありました。先生曰く、「プロならともかくアマチュアにはそんな必要はない」とのことでしたが、まあお金に余裕があるひとは何を買おうが勝手ですよね。

もうひとり、先生の地元宝塚の生徒さんで、お父様の後を継いで病院の医院長をされている女性がおられるのですが、彼女は1千万円の楽器を使っているとも聞きました。

ちなみに、100万円の楽器、100万円の弓2本、この方々はとてもお上手で、下手なプロよりもよっぽど良い演奏をされてました。

しかしここだけの話、病院の医院長なる女性は、お世辞にも上手とは言えませんでした。

けれども何度も言いますが、誰が幾らの楽器を使おうと、そんなの人の勝手、好き好きだなと私は思いました。

私は私の楽器で充分に満足しておりました。

それなのに。

フレンチの弓

発表会が終わって間も無くでした。楽器店の社長さんから電話が掛かってきました。社長さんはいつもメールなどではなくいきなり電話を掛けてこられてました。その多くはレッスンの案内でしたので、私はいつものように電話にでました。

そうしましたら「フレンチの弓が入りました!弓はフレンチが一番です!どうか手に入れて頂きたいのでお電話しました」と言われました。

私はもうあの楽器で充分でしたので「せっかくですが結構です」と申し上げたのですが、「弓はフレンチが一番なのです!皆結局フレンチに辿り着くのです。昨今のコロナ禍で、今後いつフレンチが入ってくるかわかりません!もう入って来ないかもしれません!ですのでこうしてお電話でお伝えしているのです!」と強引なことをおっしゃいました。

そこで気になるお値段をうかがったのですが、「下取りをさせていただき、39万円で!」と言われました。

これまで下取りしてもらった弓を合計しますと、70万円にもなります。そんな高額な弓、こんな私に必要か?と思い、少しだけ考えさせて欲しいと言いました。

電話を一旦切り、先生に電話で相談しました。先生はレッスンのこと以外のことになると、日本語の文章が理解できないでいらしたので。

社長さんからフレンチの弓を勧められたことと、そのお値段について伝え、フレンチの弓はそんなに良いものなのかということも尋ねました。

すると先生は意外にも、「39万円?フレンチがそんなに安いなら僕でも欲しい!」と言われました。下取りの意味はすっ飛ばしてのお言葉かと思いました。先生は日本語での会話も、レッスンでは問題ないのですがそれ以外の話になるとちょっと怪しかったのです。

しかし、フレンチの弓はやはり良いのだということは伝わりました。

社長さんが多くの顧客の中から私を選んで、私に使って欲しいと思われて真っ先にお声掛けいただいたのですから、そんな希少なものであるなら受取っておいたほうがよいと判断しました。(ただカモにされただけかもしれませんが)

そうして次のレッスンの際にそのフレンチの弓を購入することにしました。先生もそれを見ておられて、「社長さん、僕も39万円だったらフレンチ欲しいのでよろしく!」と言っておられました。社長さんも「いえ、下取りがあってのお値段ですので」とおっしゃってました。本当に良かったのか?と不安になりました。

兎にも角にも、これで完成!と思いました。

ところが。

『音』への執着?いつの間に?

フレンチの弓で最終的な私の楽器体勢が整ったと思ったのも束の間、それからほんの1ヶ月後でした。

社長さんからレッスン後呼び止められ、またいきなりでしたが「これをちょっと試してみてください」と言われ、強引に顎に楽器を挟まれました。弓も手に持たされました。

わけがわからないまま私は音を出したのですが、びっくりしました。

音がキラキラしていたのです。キンキラでした。

「な、なんですかこれは?!」

思わずそう口にしてしまいました。

「いいでしょう?音だけではないんです。よく見てください」

そう言われて裏面なんかもじっくりと拝見しました。更にびっくりしました。木目がこんな風に見えるなんて!と。ちょっと言葉では言い表せません。見る角度によって濃淡が違って見えるのです。立体感のある木目、とでもいうのでしょうか。

とても美しかったのです。

そこでまた気になるのはやはりお値段です。お幾らなのか尋ねました。

「200万円です。ですが、また下取りさせていただき、120万円で!」

…「いやいや、200万円なんて高価過ぎるのは私には必要ないです。それに120万円も、もうそんなお金ありませんから」

社長さんに正直にそう申し上げました。すると、

「お金はどこかに仕舞ってあるでしょう?」

とまで言われました。「失礼だな、この人」と思いました。

しかし社長さんは、グァダニーニと言われる名器のコピーとのことで、グァダニーニの写真や特徴などを示してくださいました。

1時間ほどやり取りをして帰宅しました。不思議と疲れてはいませんでした。

それから社長さんは諦めたのか1週間が過ぎても何も言ってはこられませんでした。

けれども、私はその間あの音が忘れられずにいました。キラキラの音です。

あのキラキラした音が、時々耳元で私を誘惑するようになりました。

私はそんなに音に敏感なほうではないと思っていました。まだまだ音程を取るのすら危うかったのですから。

なのに、耳からキラキラが離れてくれませんで。

ついに私は社長さんに自分から電話を掛けて言ってしまいました。

「あの楽器、まだありますか?!」

「え?どの楽器ですか?」

私は、しらばっくれないで早く答えて!と言う気持ちになりました。かなり欲しかったのでしょう。

「ああ、グァダニーニですか?まだありますよ」

「明日お支払いに伺います!」

そうして、コピーのグァダニーニを手にすることになりました。ラベルには『1745』と記されていますがなにぶんコピーです。それは嘘だと思います。けれども100年は経っているだろうイタリア製のオールドのバイオリンであることは間違いないようでした。

フレンチの弓とグァダニーニのコピー

この楽器と一緒に、社長さんは私に、ヴィヴァルディのRV522の第二楽章を勧めてくださいました。

先生に新たな私の相棒を紹介しましたら、呆気に取られていらっしゃいました。「半年でまた買い換えるなんてひとは初めてだよ」と。「でもとてもいい楽器。ヴィヴァルディのその曲は僕も弾いたことあるだから、CDプレゼントします」と言っていただき、RV522の練習を始めることになったのでした。

私はただの素人です。でも、気に入った音のおかげで、難しいと思えた曲にもチャレンジし、先生もびっくりするくらいに弾けるようになりました。

楽器のお値段の話は以上ですが、その後のことは以前に投稿しております『私とバイオリン🎻〜『楽器を習うには先生がすべて』』をご覧になってくださいませ。

最後までお読みいただきありがとうごさいました。

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