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メタバースが飛躍的に進化するUEFNは革命的なサービス

こんにちは、株式会社リトプラの代表をしている、後藤(takasuke_go)と申します。
3月に開催されたゲーム開発者向けの世界的イベント「GDC(Game Developers Conference)」で、EpicGamesが大きなニュースを3つ発表しました。

今回の発表はとにかく驚きが多く、今後のメタバース領域のビジネスだけでなく、我々のようなリアルな施設を持つビジネスにも影響があると思い、とても強い危機感と、久しぶりのワクワクした感情に気持ちが昂ってます。
うまくまとめきれていないですが、紹介していきます。

Epicが発表した注目のサービス3つ

1. Unreal Editor For Fortnite

※以降「UEFN」と書いていきます。
UEFNは、Epicの提供するゲームエンジン「Unreal Engine」をベースにした、フォートナイト専用の制作ツールです。
元々フォートナイトにはクリエイティブモードがあり、バトルロイヤルとは別で、他のユーザーが作った島で遊んだり、自分で島を自由に作り替えたりして遊べるモードがあります。
私もよく子どもたちや友達とプレイしますが、バトルロイヤルにはない様々なルールの遊びが多数あり、仲の良いメンバーでクローズドに遊ぶにはクリエイティブモードはとても気軽に楽しめます。

UEFNはクリエイティブモードを拡張するためのサービスです。
その特徴はなんといっても「Unreal Engine」がベースになっていること。
公式に発表されているβ版で可能なことは主に以下です。

  • モデリングツールとマテリアルツールを使用したカスタムコンテンツの作成

  • メッシュ、テクスチャ、アニメーション、オーディオのインポート

  • Niagaraを使用したVFX エフェクトの作成

  • コントロールリグとシーケンサーを使用したアニメーション

  • Verseを使用したゲームプレイの設計

  • 環境を作成するためのランドスケープの構築

  • World Partitionを使用したより大規模な体験の作成

  • Fab (アルファ版)でアセットを検索し、インポート

  • ライブ編集を使用して他の人たちとリアルタイムでコラボレート

  • Unreal Revision Controlによるコラボレート

Unreal EngineとUEFNではできることに大きな差があり、またフォートナイトの世界に閉じた制限がありますが、、個人的には、アセットをインポートできるようになったことゲームデザインを細かくできるようになったこと、このあたりは注目すべきアップデートと捉えています。
これまでのクリエイティブモードでは、あらかじめ用意されたアセットしか使えませんでした(それでも数千種類はある)。
今後は、MayaやBlenderといったツールで作り出したアセットを取り込んだり、Sketchfabから検索してきてインポートしたりもできるようになるというのは、いろいろな想像が膨らみますね。

さらに今後のアップデートでも、Unreal Engineの大部分の機能が使えるようになっていくとアナウンスされているので、非常に楽しみです。

2. 専用プログラミング言語「Verse」

VerseはUEFNをさらに拡張する専用のプログラミング言語です。
クリエイティブモードでもかなり多くのことができますが、あくまでも用意された条件に従ってアセットやオブジェクトを動かすことしかできないものです。
より細かい仕掛けを作ったり、ルールを作ったりするには、スクリプトによる記述が必要です。
EpicはUEFNに簡単にスクリプトを埋め込み、より細かなゲームをデザイン可能にするための、独自のプログラミング言語を作りました。
Epicが発表しているドキュメントにはVerseの目指す設計目標が記載されています。

  • プログラミング初心者でも習得できる

  • どのような種類のコードやデータも記述できる

  • チーム作業におけるプロジェクトのビルド、イテレート、シッピング、およびコードとコンテンツの統合

  • コンパイル時にできるだけ多くの種類のランタイムの問題を見つけられるようにする

  • リアルタイム、オープンワールド、およびマルチプレイヤーゲームの作成

  • 言語のすべての機能でプログラマーによるその機能の抽象化をサポート

  • 他の言語の過去のアーティファクトに根差すことなく、現在のニーズと近い将来のニーズに対応する設計

さらに、プログラミング初心者の人へ向けてのオンボーディングがあったり、「Verse Devices Starter」というドキュメントや、豊富なテンプレートまで用意があります。

VerseとUEFNを活用したデモが公開されており、より想像を膨らませてくれます。

3. クリエイター エコノミー 2.0

これまでの収益分配の仕組みは非常に限られたもので、「クリエイターコード」というものをユーザーに入力してもらう必要があったりと少し手間のかかるものでした。
それが今回のアップデート「Creator Economy 2.0」で大きく変わります。
Engagement Payoutsという仕組みで、収益計算の元になる原資は以下です。

  • V-Bucksの購入

  • スターターパック、クエストパック、スキンなどの購入

  • フォートナイトクルーのサブスクリプションの購入

フォートナイトで発生したこの売上のうち、40%をクリエイターへ分配する。という制度にアップデートされました。
また、分配の計算についてもEngagement Metricsという、フォートナイトの健全性に貢献した指標によって分配収益が算出されるようです。

  • プレイヤーの人気度:新しいプレイヤーが島に入った数と率、既存プレイヤーが島に戻ってきた数と率

  • プレイヤーの継続率:プレイヤーが毎日、毎週ログインしている率

制作した島(マップ)のエンゲージメントを高めると収益も増える。ということですね。
具体的な数や率でどんな優先度で分配されていくのか示されていないので、分配ロジックが少しブラックボックスなのが気になりますが、それでも以前の制度よりもはるかに多くの収益を期待できるようになったのではないかと思います。
また、対象者についても少し注意が必要そうです。

  • 企業などの法人、及び18 歳以上でアカウント制作から 90 日以上が経過している島のクリエイターであること

という条件になっていました。

個人的に注目した点

私個人が何に注目しているのか、ワクワクしているのか。
それはフォートナイトがSwitchやPlayStationといったゲームデバイスを含め、非常に多くの対応デバイスを有していることです。
これまでメタバースといった仮想世界を構築する時に、我々のような子どもたちや家族でも楽しんでいただきたい。と考える企業では非常に参入が難しかった理由があります。
日本の子どもたちがPCでゲームをしたり遊んだり、PCを学習環境として使うケースはまだまだ限られているのが現状です。
このような背景があり、子どもたちへ安心安全にサービスを届ける。というのが非常に難しいものでした。
ファミリーアカウント、ペアレントコントロール、マルチプレイ、課金制御、、あげればキリがないですが、子ども向けサービスで注意しなければいけない部分はかなり多く、それをサービスとして1から実装するのには巨大なコストがかかります。
リトプラ社では、「シャリング」という別のデバイスを用意することで、この課題への解決の1つとしていたりもします。
シャリングについては以前のnoteにも書かせていただきましたので、ご覧いただけると幸いです。

今後のメタバースへの影響

今回のEpicの発表は、ゲーム業界、メタバース領域でビジネスをしている企業へ与える影響は大きなものになると考えています。
フォートナイトは最盛期に比べるとMAUは減っているとはいえ、月間1億人近くがプレイしているゲームであり、対応デバイスの種類も非常に多いサービスです。

メタバースに関しては、日本では国産のプラットフォームを使ってイベント的にワールドを作るケースや、独自のメタバースを目指すケースも多いと思います。
イベントでは瞬間風速的になりがちな課題があり、特定のワールドに常に人がいる状態を維持することは難しかったと思います。
目的をどこに置いてどんなロードマップで進めるか、という課題はありますが、これだけ大きなプラットフォームである程度自由に開発できることが可能になったため、メタバースを検討している方は選択肢を増やす意味で今後の戦略や開発の方向性を見直しても良いのではないかと考えています。

また、子どもやファミリー向けサービスという範囲では、「Roblox」も選択肢に入ります。
最近のRobloxではGenerative AIを実装しており、クリエイター向けツール「Roblox Studio」も進化しています。

一方で、RobloxのゲームプレイはPCとスマホを中心としており、日本の子どもたちの環境下ではなかなかプレイヤー人口を増やしづらい状況ではあります。今後、対応デバイスが増えていくことを期待していますし、フォートナイトとともに素晴らしいメタバース空間のプラットフォームになっていくのではないかと考えています。

リトプラ社の取り組み

リトプラ社では体験型テーマパーク「リトルプラネット」を全国で運営していますが、来場しない時でも子どもたちや家族で日常的に体験できるサービスを作れないか。と模索し続けてきました。
簡易的なアプリやサービスであればそれほどコストをかけずに作れますが、マルチプレイ機能を入れたり、長時間サービスに滞在を前提とするようなサービスはソフトだけでなく、対応させるデバイスの問題もあり、なかなか前に進めてこれず悶々としていたりもしました。
今回のEpicの発表は私たちが考えていたことを飛躍的に進めてくれる大きな発表だったのです。

リトルプラネットでは、アトラクションの大半はUnityとUnreal Engineによって開発を行なっています。
また、施設を建築設計する際に、BIMのワークフロー上にUnreal Engineを組み込んでおり、プロジェクション空間を細かく調整したりする最先端の取り組みをしてきました。
今年に入ってからはGenerative AIのR&Dを行なっており、GPTをベースにした対話型のコンシェルジュキャラクターの開発にも着手しています。

リアルとデジタル空間をより融合させた展開も考えられます。
デジタル空間上のキャラクターは、リアルな施設のスタッフが演じることもできますし、場合によってはAIと切り替えながら対応することもできるかもしれません。

リアルな場所と空間を運営し、遊具やアトラクション開発でここまでゲームエンジンを使っているケースは多くないと思いますので、それが当社の強みでもあると考えています。
今後は、デジタル領域でも新たな取り組みを進めていきます。
まずは簡易的なアプリサービスで、表情トラッキングとAIを組み合わせたリズムゲームをリリース予定です。
子どもたちもマスクを外せるようになってくると思いますので、ぜひ表情豊かな姿で遊んでもらえると嬉しいです。

今回のEpicの発表をメタバースやデジタル空間の切り口でnoteに書かせていただきましたが、私自身も趣味の1つでフォートナイトをよくプレイするため(3年で800時間ほど)、これからの展開でも想像できることが多くあり、とてもワクワクしています。
今後、リアルとデジタルを融合させていく取り組みの中で、リトプラ社のプロダクトでもある「シャリング」のさらなるアップデートと、デジタル空間における新たなサービスを作るべく準備を進めています。
子ども・ファミリーというキーワードで、この領域でご一緒できる方や、興味のある企業の方は、お気軽に私のTwitterやリトプラ社へご連絡いただければ幸いです。


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