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#MicroMBA 体験02 脳科学とマーケティング 「どう感じるか」とマーケティングの関係を理解して、「本能的にほしい」を目指す

脳科学を使って、「同じワインを、$10と$90と別の価格を伝えてランダム化比較試験をし、脳波を確認してどう感じるか計測しながら飲ませる」みたいなメチャメチャ面白い実験データがでる。好ましいと感じているときと嫌悪感を感じているときで、脳の活動する場所は違うらしい。


課題はサンディエゴ大のDr.Umaの資料

今日の講義は、アメリカからつなぎに来るDr.Uma。
脳科学と経営どっちも博士号を持っている面白そうな人だ。
資料は2つ。1つは前回のブログでも紹介した、脳科学とマーケティングについての一般的な記事。

ハーバードビジネスパブリッシングの記事は共有禁止だけど、ここの話とそんなに大きくは違わない。

脳波判読のポイント 九州大学大学院医学研究院脳研臨床神経生理
飛松省三

最近のテクノロジー(まだ、興味関心をちゃんと取ろうとしたらアイトラッキングのほうがマシ)と、「とはいえなんか潜在的なものが取れるなら面白いのでは?」という市場の期待をシンプルに説明するものだ。

脳波を調べる2つの方法 EEGとfMRI

もう一つは、脳波(脳電図)を調べる2つの方法、EEGとfMRIの2つの記事を、
1.方法  2.良いところ 3.限界 4.代表的な使い方 の4点で説明した記事だ。
基本的な理解として、脳には電流が流れている。その流れ方は様々に変化する。その変化を読み取り、分析して「a派(と呼ばれる脳波)が出てますね」みたいな判断になり、「リラックスできてますね」みたいな判断になるわけだ。
EEG(Electroencephalogram)は、電極を頭にあてて電流を測る。テスターみたいなシンプルな仕組みだ。

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電極が当たる点を増やさないと限られたところしか取れないし、たくさん電極を置いても深くは取れない。
でも、手軽だし、つけてうごいたりすることもできる。装置そのものが大きくもない。

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この「いらすとや」の脳波検査もEEGの、電極が多いやつっぽい。この絵だとうごけなさそうにみえるけど、要はたくさんの電極にin/outつければいいだけだから、スマホぐらいのサイズ(あるいはもっと小さい)にしてwifiで飛ばすとかも可能だ。(うごくとズレまくるけど、あとで紹介するfMRIより手軽ということ)
比較的手軽なものなので、いくつか商用事例がある。僕のNecomimiもそうだ。(授業ではつけておこう)
手軽な分サービスにつなげたりもしやすい。

もう一つのfMRIのfはFunctional、つまり磁気共鳴装置MRIの、脳に特化させたものだ。これはでっかい機械の中に入っていくものなので、原理的に小さくするのが難しい。頭の深いところまで取れるけど、計測中は動けない。
脳波は刻々と変わるので、静止しておちついて大層な機械でしか取れないというのは、これはこれで問題だ。

でも、数値としてはこっちのほうがちゃんと取れるし、何より高い機械なので、こっちもビジネスチャンスがいろいろある。

授業のメインテーマはマーケティング

脳科学の話がバリバリ出るかと思ったら、授業のテーマはマーケティングだった。宿題がそうだっただけで、事前説明でもそう書いてある。

今回のDr.Umaの資料は、前回の牧先生と違ってクリエイティブ・コモンズではないので、タイトルとかを除いて基本的にはキャプチャしない。

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Dr.Umaの話は、「マーケティングとはなにか」という紹介から始まった。顧客との関係づくりであり、コロナ後にオンラインに移行して、マーケティングの力点がさらに重要になったという点であり、ポイントポイントは彼女しか話せないであろうすごい良いものだけど、要約すると常識になるようなものだ。

面白いのは、マーケティングでのデータに対する考え方で、第1回の牧先生にも共通する、「正確な現状の理解はものすごく大事だけど、未来予測はそれとイコールではない」というメッセージが何度も出てくる。

あくまでマーケティングがテーマで、「コンシューマとニューロサイエンス」を考えていく。

真面目なニューロサイエンスと市場:人の考えの調査

脳波から人の表に出ない考えを読む というのはよく言われる話だが、プロはほとんどは否定している。もしも「棚の中で注目している製品」をとりたいなら、アイトレッキングが一番マシな手段だし、感情を撮りたいなら表情をカメラで撮って分析するのが一番マシな手段だ。そういうのも脳科学に含まれる。
(たぶんだけど、脳科学の中に、"脳科学に期待される役割を最速で叶える"という方向の研究と、"目的とかどうでもよくて、脳の働きを分析する"という方向の研究があるのだと思う。アイトラッキングや表情分析が脳科学に含まれるのは、そう考えると違和感がない)

NecomimiでつかみはOK

今回は先生も英語ネイティブだし、初対面だ。なんかインパクトだしたほうが授業が楽しくなるだろうと思って、Necomimiをつけて授業をうけるようにした。脳科学の研究者ならゼッタイ知ってるはずだ。これはEEGセンサを使ったプロダクトだし、発案者の加賀谷さん、発売したユカイ工学の社長青木さん、プロダクトの設計をした石渡さんはそれぞれ友達なのでプロダクトの説明もそれなりにできる。

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もちろんDr.Umaはプロダクトを知っていて、とはいえ現物見たことはないらしくて、授業前にひとしきり盛り上がった。もともとの僕のオピニオンである、「今のコンピュータは人間が情報を受ける/出すことを助けているけど、将来は情報じゃなくて感情もサポートするはずで、感情を受ける方は統計とAIでかなり良くなってるけど、次は感情を出す方のサポートをするようになる。Necomimiはその第一歩だよ」みたいな話も興味深く聞いてくれた。
授業後、関係者をtwitterで紹介した。

脳科学とブランドとマーケティング

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たとえば、このAppleのキャンペーン、I`m PC I`m MACみたいな、感情に訴えるキャンペーンなんかはまさにブランドに作用するもので、それは脳の働きと関係がある。ブランドは、機能と別に働くものだ。

同時に、あらゆるものがブランドに影響する。たとえば価格をいくらにするかはブランドに強く影響する。それは、品質とか色んなものを表すサインでもあるからだ。

ここから脳科学を使って、「同じワインを、$10と$90と別の価格を伝えてランダム化比較試験をし、脳波を確認してどう感じるか計測しながら飲ませる」みたいなメチャメチャ面白い実験データがでる。好ましいと感じているときと嫌悪感を感じているときで、脳の活動する場所は違うらしい。
amazonで売ってる「高い定価をすごい安く見せて高級に見せる中華イヤホン」なんかはそういう戦術だ。

人がモノを買うときに、値段と価格どっちをさきに見るのか、みたいなのはまさにフィーリングの問題なので、脳科学との相性は、たしかによさそうだ。行動経済学にもちょっと通じるところがある。

脳科学の得意技とマーケティングの相性

今の脳科学は、「何を感じてる」かの測定では十分に実用的だ。現代社会の製品は、どんどん「良いものをより安く」という世界から、良さを言葉で説明できないけどほしいという方向に進化している。英語圏で本能的に欲しがる、Sexyという用語が頻繁に使われるようになってからもう20年ぐらいたつ。シンガポールでは首相が「エンジニアという仕事がシンガポールでもっとセクシーになるように頑張る」と発言していた。脳科学はそういうセクシーを判定できる。

イーロン・マスク的な突拍子もない脳科学スタートアップがたくさん出てくるんじゃないか、という僕のステレオタイプな予想はいい意味で裏切られて、「うっすらとはわかってるけどちゃんとはわかってないことをきっちりと噛み砕いて、具体的にブロックを積み上げるように教えてくれる」授業で、その間に目からウロコが何枚も落ちた。こういうのは大好きだ。突拍子もないのは、今はむしろスタートアップのほうが突拍子もなく言語化が難しいことを商売にしている。
サイエンスはむしろこういう具体的できちんと体系を組み上げ、僕が聞いたら、難しくても簡単でも努力によって完全に理解できて、他人にきちんと説明できるものであってほしい。

来週水曜日の第3回も楽しみだ。

全6回の講義についてはここにまとめた。


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