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#MicroMBA 体験01 経営学ってどんなことを勉強するの?UC San-Diego/早稲田のコースを受講する

全6回の講義はここにまとめました。

僕が非常勤講師をしている早稲田ビジネススクール(以下WBS)の正式名称は、早稲田大学 大学院経営管理研究科だ。経営と管理について研究している。
僕の講義「深センの産業集積とハードウェアのマスイノベーション」はMBAコースに位置づけられている。MBAは経営学修士、つまり修士だ。

僕の講義は、内容のアカデミックな興味深さと実用性で、まあまあ評判がいい。実際に深センのInsta360で働き、今はTicTok Japanで働いているAgathaは受講して感謝してくれた。中国のイノベーティブな会社で働いている本人が、「この授業で自分でも知らなかったことがわかった」と言ってくれているから、授業の内容には自信を持っている。

授業の評判がいいので嬉しいけど、僕自身は人文の学士で、社会人になってからのキャリアはエンジニアが最初、経営企画にいたこともあるしシンガポールで法人立ち上げをやったし、今も香港で自分の個人企業を経営はしてるけど、ぜんぶ自己流でちゃんと習ったことはない。「大学で教える」ということ、たとえば学生からの質問の引き出し方や、評価や成績をどうつけるかなどは、全然自信がないし、実際にプロより経験が少ない分下手だと思う。

UC San-Diego/早稲田のMicroMBAコースで、経営をちゃんと習ってみよう

大学で教えるのは楽しいし、すごく意味があると思っている。大学で教えることに意味があるのなら、大学で習うことにも意味があるだろう。先生の経験がある上で学ぶことは、学習効率を上げてくれる。
「また大学に行く機会を探そう、どうせなら外国の大学に行ってみたいな」と思っていたところに、僕のいる早稲田ビジネススクールとUC-San Diegoの共同でMicroMBAというコースをやっていることを知った。授業は早稲田とUC San Diegoの先生が半々、6回の授業で300USD。僕は早稲田の関係者なので無料だ。
終わるとUC San Diegoと早稲田の連名でMicro MBAの修了証がでる。これは特に公的なものではない(外国でビザの点数が上がったりしない)けど、ちゃんとゴールがあって宿題もあるものをやるほうがテンションあがる。
LinkedinやFacebookのプロフィールに書けばハクもつくだろう。

ぜんぶ英語の講座を受けよう

僕の英語力(TOEIC650点ちょい)は大学の講義についていくにはちょっとつらい。たとえば香港の大学院などが求めるレベルには達していなくて、もっと勉強しないとエントリーの資格そのものがない。
今回のMicroMBAのレベルは700点以上なので未達だけど、公的な資格じゃないので、エントリーはできる。
一方でWBSの学生は、社会人で自分で大学院に来るぐらいなので、一般的に僕より英語のスコアが高いが、僕はそれでも大抵の場所で「半分よりできる方」だった。
経営ならまあまあ馴染みのあるテーマだし、英語の会社案内やIR資料、英語でのビジネスならもう6年もやってるからなんとかなるだろうし、ダメだとわかったら危機感が上がるからどっちにしても損はしない。

第1回の宿題はハーバードの「フードトラック経営チャレンジ」ゲームとニューロサイエンスの資料 ゲームは80人中13位だった。

第1回は、WBSが提携しているハーバードビジネススクールのライブラリから宿題(Pre-assignment)が出る。一つはニューロサイエンスについての資料。

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Wordファイルに変換してサクッとDeepLに食わせようと思ったら、きちんとパスワードが掛かっていて、変換どころかコピペもできない。
さすがハーバード、知財管理がしっかりしている。コピペができないから、面倒な単語を辞書で引くのもめんどうだ。これだからメリケンはムカつく..と思いながらちゃんと読んだ。なかみは脳科学の商用可についてのマトモな文章で、トリッキーな話じゃないから難しくない。EEG(electroencephalography)がどういうものか、とかの話なら少しはわかるし。
一応日本語で出てきた、脳はそのものについてのプロの解説もざっと読んだ。
脳波判読のポイント 九州大学大学院医学研究院脳研臨床神経生理
飛松省三

ハーバードの文章は、最近のテクノロジー(まだ、興味関心をちゃんと取ろうとしたらアイトラッキングのほうがマシ)と、「とはいえなんか潜在的なものが取れるなら面白いのでは?」という市場の期待をシンプルに説明していた。

もう一つの経営シュミレーションは面白かった。街の中にいくつかの条件でフードトラックやスタンドを出して、アイスクリームやスムージーを売る、桃鉄みたいなターン制のシュミレーション。

ググって結果が出ると意味ないので、ゲームの詳細や僕のとった戦略については書けないけど、こういうゲームは好きだ。でも、5週間(5ターン)で終わっちゃうし、レポートを見るにはまた1週間かかるらしい。評価指標は利益額。
トップの34000ドルに対して21500ドル、だいぶ水を開けられているけど、80人中13位だからそこまでわるくもない。これで本番を迎える。

プロデューサーの牧先生は文理融合のドクター

僕をWBSにプロデュースしてくれた先生でもあり、このMicroMBAのプロデューサーでもある牧先生は、SFCの村井純研究室を卒業した後、UC San Diegoで経営のドクターをとった、複数のバックグラウンドを持つ先生で、授業にも技術的なトピックがよく出てくる。早稲田とサンディエゴの両方で同時に先生をしている。
僕も「コンピューテーショナル」みたいな、わかる人にはわかるけど抽象性が高い用語をよく使うので、こういう先生に相手してもらえるのはありがたい。
資料もクリエイティブ・コモンズだ。

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今回みたいな試みも、
ー経営学の範囲を広げて他と融合させる
ー大学の範囲を広げて他と融合させる
という試みである。
通常の講義は90分だが、今日は30分のイントロダクションが含まれて2時間のレクチャーになっている。
学生の多くは早稲田から来ている(タイムゾーンもこちら向きだ)ので、イントロダクションではUC San DiegoとRady School of Managementの紹介に重点をおいて行われた。国籍でいうと留学生はかなり多い。サンディエゴの人も含めると、日本人以外が40%ぐらいいるんじゃないか。

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先生も半分UC San Diego, 半分早稲田。Uma Karmkar(今日の資料のニューロサイエンスの資料書いた人)は次回の先生。彼女は脳科学とマーケティングの2のドクターをとっている。面白そうだ。

経営学:フードトラックゲームを考える

80人が5人ずつのグループに分かれて、ゲームでの戦略について話す。
僕らのチームのディスカッションではあまり出なかったけど、街の性質についてデータから読み取れそうなことは結構たくさんある。

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マーケットリサーチの功罪

僕らのチームでは高得点者はマーケティング・リサーチをやってなかった(1週間を捨てることになるし)けど、それがいいのかどうか。2つ目のトピックは「マーケットリサーチは効果あるのか?」だった

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1週間を失うし、researchをやってみないとどういう結果が来るのかがわからない。
でも、5週間しかないというのはrecoveryの時間が少ないということでもある。
最初に1回やるのはいいのかもしれない。

経営学とは選択肢、経営とは選択

プッシュカート(ランニングコストは安いけどあまりたくさん売れない)か車か、選択は2つ(research含めて3つ)だけど、理由はいろいろつけられる。経営で大事なのは決定で、リサーチは決定のために役立つなら大事だけど、リサーチした結果が決定につながらないならあんまり意味がない。

また、もちろんリサーチ結果はリアルタイムではない。
MBAコースに来るような学生はリサーチが大好きだけど、リサーチの功罪についてちゃんと意識することは大事だ

アイスクリーム屋とリーンスタートアップ

僕はいきなり投資の大きい選択肢を一点張りで持っていった。5週間と時間が短かったからだったけど、ゲームにはもっと小さい選択肢ではじめる方法も用意されていた。そのほうがリーンスタートアップ的かもしれない。
授業のディスカッションではそういう話も出た。
ゲームの結果や勝ちパターンは公開禁止(ググって出てくると意味ない)ので書かないけど、学びは大きい。

2回目のシミュレーション。結果はTop5!

ディスカッションで学んだことを生かして、授業の後半ではもう一回挑戦。
ぼくの結果はトップ5。(駆け込みでもう少し人が増えて最終的には8位になった)全員同じ授業をきいてやってるので、他人より上なのはうれしい。

今から思い返すと、微妙な差で最善手を打てたかもしれない。僕と上位はそういう微妙な差だ。

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上位の中では要素をスコア化して最善手を見つけようとした人もいた。決定につながらないリサーチは意味ないけど、こういうきっちりとした調査と断固とした実行のコンビは強い。

 僕の場合は、二回目のチャレンジでは1回目より試行錯誤を多めにしたけど、どこからギアを踏むかはまた難しい選択肢だ。なるはやでギアを踏むのが正しいのは間違いないが、スカな目標で踏むのは意味がない。

2回めの僕のスコアは、ゲームでのベストシナリオにまあまあ近似していた。

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コストとそこから得られるもののバランスは、経営そのものといってもいい。そして、最善手は最初から最後までわからないのも経営そのものだ。
実際の経営は時代の変化や競合もあるから、もっと複雑で予測不可能になる。

そのなかで、シンプルにした状況のシュミレーションで、リーンスタートアップ戦略の正しさやスケールアップの重要さなどを学習できるのは大事だし、マシュマロタワーを建てるコンテストで、MBAは幼稚園児に劣るという調査結果をだして、

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それは、先に議論して後でタワーを建てるアプローチだと良いタワーを建てるのはとても難しく、先に手を動かしながら学ぶことがだいじだという、牧先生と僕に共通するメッセージでもある。

とはいえ、教えるのと習うのは大違いだ。習ってみて改めて分かることは多い。

今日の2時間は、かなりあっという間に終わったし、特に授業本番が始まってからの90分はとてもエキサイティングだった。途中でシュミレーションもう一回とか、ディスカッションのタイミングとかを挟むのをふくめて、こういう授業が自分にできるかどうかと言われると、現時点では難しい。

プロフェッショナル研究者から学ぶ価値

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牧先生は、プロトタイプシティやメイカーズのエコシステムなど、ニコ技深センでやってるものからエッセンスを抽出して、「失敗が前提のイノベーションマネージメント」という考え方を布教している。

こうした体系化がプロの価値だ。
分野の境を飛び越えるのが得意のアマチュアと、分野をしっかりと作るのがプロ。そして、どっちもお互いの得意分野にくわしくなったほうがいい。サッカーで、パスの出し手はいい受け手でもあるように。

次回の授業も楽しみだ。
(受けてみて、英語はもっと上達する必要を感じたけど、授業受ける上での不安はなかったです)





全6回の講義はここにまとめました。

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