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【短期集中連載】ジャニーズカルテル(1)

割引あり

 【ジャニーズカルテル(1)】
ジャニーズ事務所とテレビ局との戦いに散ったジャーナリストたち

「恐縮です」

 少しも恐縮していない様子でこう言いながらマイクを突き出してくる芸能リポーター、それが梨元勝さんだった。全盛期には何十本ものレギュラー番組を抱え、ちょっとしたタレントよりも売れっ子であった時期もある。昭和・平成時代に席巻した芸能リポーターの草分け的存在で、現在も活躍している「梨元学校」出身のリポーターも少なくない。その梨元さんがテレビ局を干された本当の理由をご存じだろうか?

 約25年前、彼の真の戦いはジャニーズ事務所とそれで始まった。筆者がニューヨークタイムズで働いていた頃、梨元さんに数回インタビューした。画面の中のイケイケの姿と違って、周囲に気配りする繊細な心の持ち主だった。
 
 隔靴掻痒の感のあるテレビ局のジャニーズ報道の中、それでも批判の炎は消えそうにもない。すべてが後手後手、ジャニーズ事務所のみならず、コメンテーターや評論家、ジャーナリストも判断や解説がずれているようだ。いつまでも問題の本質を「性加害」に留め、世界的に問題視されている「児童虐待」には触れてこない。

 10月2日の記者会見でも、「歌舞伎ルール」(日本の記者会見のスタイルを揶揄して海外メディアからはこう言われていた)が適用され、仕込みが散見され、健全なジャーナリストたちを排除する傾向がみられた。

 結局、本当の罪状は隠されるのだろう。かつては、ジャニーズ問題の本質が「児童虐待」であることを早々に見抜いていた者もいた。そのひとりが梨元さんだった。
 
 四半世紀前にこのジャニーズ問題を追及しながら世を去ったジャーナリスト(あえてジャーナリストと呼ぶ)の梨元勝さんの名誉回復の意味もあり、かつて取材した素材を中心に、現状のジャニーズ問題をめぐる報道を確認しながら、情報を加えて短期集中連載としてお届けする(参照ソース:【AI記者®アーカイブ】ジャニー喜多川氏だけが悪いのか?23年前の直接取材とメディアの対応 - YouTube https://www.youtube.com/watch?v=yZXGCWfKAjk)
                     
                 ※

ジャニー喜多川さんによる性加害問題ということでマスコミが大騒ぎしていますが、この時点でフィルターがかかっています。これはセクハラで済むものではなく、暴行傷害事件であり、児童虐待であるのです。ここまで私、上杉が沈黙していたのは、率直に言って、ジャニー喜多川さん本人が亡くなっているし、終わった問題でもあると思ったんですね。しかし、児童虐待に遭った少年たち、元少年たちの当時の傷つけられた心っていうのは、何年経っても、何十年経っても癒されず、人生そのものの重石になっているということに改めて気づきました。

23年前、私自身 がこのジャニーズ問題の取材をしていたことについて、まずはお話をしたいと 思います。

ジャニーズ問題に関しては、当時ニューヨークタイムズにいた私は、もっとも早くこの問題を報じたジャーナリストのうちのひとりだったと思います。ただ、この問題を報じたがために、その後の約20年近く、ジャニーズタレントとの共演禁止という報復を食らい続けることになりました。

それでも、ジャニーズ事務所との共演禁止を食らいながらも16本のテレビレギュラー、8本のラジオレギュラーを得たというのは、なかなかの人気者だったということでしょう。しかし、仮に、共演禁止にならなければ、もっと別のジャーナリズムの道、あるいは人生があったのかなと思うと、やはり少し失望せざるを得ません。

さて、この問題は、ジャニーズ事務所の問題というよりも、共犯者であるメディア、つまりテレビ・ラジオ・新聞・雑誌・ネット・通信社の問題であり、彼らによる長期間の犯罪を知らないと本質を見間違えると思います。いかんせん、まだネットがそれほど普及していない23年前のこと、取材メモの一部も散逸してしまっていますが、それでも、多くの証拠や証言を保持していました。今回のリポートではそのあたりの情報も加えています。

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