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90年代の音楽を知らないアナタへ その75 FASTLOVE PT.1 (96)/GEORGE MICHAEL セクシャリティと苦悩に嘆いた哀愁溢れるダンスポップ

パトリースラッシェンの「FORGET ME NOTS」(ウィルスミスの「MEN IN BLACK」でおなじみ)をサンプリングに起用した、クラシックなR&Bのフレイヴァとベースが聞いたクラブサウンドが融合したハードなダンスミュージックで攻めてきたジョージマイケルの96年シングル。

当時すでにスターであった彼を取り巻くのは音楽関係の話題ではなく、ゲイ疑惑の一点集中だった。歴史上に残るといっても過言ではない「アウトサイドトイレ事件」はこの2年後になるので、この頃の彼はまだゲイっぽいストレート、もしくはバイセクシャルという説が濃厚だった気がする。

ミュージックビデオでは、いち早くバーチャルリアリティを取り入れたアイデアビデオで、そこに半裸の男性・女性が曲に乗せて踊りポーズを決めたり踊りまくったりするバイセクシャルを強く印象付ける内容の仕上がりだった。

歌詞の内容はどちらかというとゲイ寄りで、「I aint Mr.right」(一般的な理想の男ではない)とか、「they’ all having babies but I jus wanna have some fun」(周りは皆子供を持ったりしているけど、俺はただ楽しみたいその願望だけなんだ)というジョージの意味深な吐露に終始する。これは強がりや開き直りとも取れるし、生まれ持ったセクシャリティへの疑念や後悔の裏返しかもしれない。真面目に告白することで気まずくなるのを恐れてちょっとジョーダンでも言ってみせることは誰しもあると思うが、それなんじゃないだろうかと、今さら改めて感じている。ジョージはもがき、苦しんでいたのではないだろうかと。

いい加減ゴシップネタになっている自身のセクシャリティについて茶化すようでもあり、皮肉の影に真意を告白したようでもあり。そういうはっきり応えを出さないところがユーモアでエンタテインメントとして面白かったりもするのだが、ファンにしてみれば「え!?え!?どっち!?どっちなの!?」とはっきり応えが出てなかった当時は気になって仕方がなかったんじゃないだろうか。

そして曲名が「FASTLOVE」(手っ取り早い恋)であるから、まぁ決定だな、と当時のわたしは強く信じたものである。

そしてこの曲からはビジュアル面にも大きな変化があったのも印象深い。モジャ毛で女性ウケを狙ったようなヘアスタイルが彼の主流だったが、このアルバム「OLDER」ではバッサリ坊主になって登場。しかもそれがめちゃくちゃカッコいいのだから、余計に世界中のゲイがほっとくわけがないし、ゲイにアピールしてると思われても仕方がない。しかもイカニモウケしそうな路線で、性欲ガンギマリな雄クサさが滲み出ていた。

今思えばワムの頃から性別関係なく、ジョージマイケルにはセックスのニオイはつきものだったし、相手が男だろうが女だろうが、どちらもだろうが正直関係ない。大事なのはスターならではのセックスアピールと、天性の歌のうまさである。と、話を強引にきれいにまとめてみた。

この歌を知らない人、忘れている人がいたら、是非いま聴いてみてほしい。ちょっとでも彼なりの苦悩が共有できるかも。


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