半纏はしゃべんねえよ(延長戦)

昨夜の0時過ぎ、娘の部屋の扉がガタッと開けられ、ドスドスと廊下に足音が響き渡りました。慌てて居間に向かいます。テーブルに座った娘はだいぶ落ち着いているようです。

それにしても寝癖がひどい。薬が効いたのでしょう、かなり深く眠っていたのだと思われます。

「なんか食べたい」

そうか、それで起きてきたのか。

「なんか用意するから待ってて」

「コンビニの揚げ物が食べたい」

「あ、そう。じゃ、買ってこようか」

「うん、買ってきて」

「わかった、買ってくるよ」

私が買い物に行こうとすると、あつ森を中断して部屋から出てきた妻が止めます。

「プリンあるけど食べる?」

「プリン?」

プリン用の型が欲しいけど久しぶりにモロゾフのプリン買って型にするかと妻と話していたのは先日です。その時に頼んだのが届いたのですが、妻が頼むのを間違えたようで、箱から出てきたのはガラスの型に入っていないプリンでした。ひどく落ち込んだ妻でしたが、しょうがないのでどこか近場で買えるところを探して直接買ってくるということで落着しました。そのプリン、娘は喜ぶはずですが、甘いのを食べて血糖値の上がり下がりが激しいと不穏な状態になりかねません。なので、残念ではありますが、プリンは私がこっそり全部食べ尽くすことで妻とは話がつきました。

それなのに、プリンを娘に勧めるとは。

「甘いのはダメだよ」

妻にやんわりと正しい判断を促しつつ、娘の気をそらさなければなりません。

「アジフライか白身魚のフライかポテトならすぐに揚げられるけどどうする?」

こういう時は別の提案をすることでそっちに関心を移すのがベターです。

「うーん……、やっぱり買ってきて」

「わかった。買ってくるよ。でも、この時間、揚げ物ないかもよ」

「揚げ物なかったら肉まんで」

「肉まんはこの時期やってないよ」

「じゃあ、おでん」

「おでんはコロナのどうこうの頃からどこのコンビニでも置くの止めてるよ」

「えー、そうなんだ」

驚いたのは妻でした。

「そう、コロナのせいで、おでんは無いよ」

「そうだったんだ」

そういえば娘だけでなく妻もしばらくスーパーにもドラッグストアにもコンビニにも買い物に出かけていません。知らなくても不思議ではないです。

「じゃさ、揚げ物なかったら、焼鳥か肉の串焼き買ってくるよ」

「串焼き?」

娘は怪訝な表情。

「そんなのあるんだ」

妻はまた驚いています。

「しばらく前から扱ってるけど、この時間だとそっちもないかも知れないから、どっちも無かったら冷凍食品の焼き肉かなんか買ってくるよ」

「うん。わかった」

慌てて向かったコンビニではラストのピリ辛に味付けられた鶏唐揚げと豚肉の串焼きを買うことが出来ました。開いててよかった。

唐揚げをひとくち食べて、「美味しい」という感想が出てきました。ピリ辛は昔から嫌いではないようですが、妻が苦手なので家では滅多にそういう味付けはしません。続いて食べた豚肉の串焼きですが、これも美味しかったようで、「また買ってきて」と言っていました。

ダイエットのこともあるので深夜の揚げ物はいかがなものかと思いましたが、これぐらいなら影響もなさそうです。

一緒に買ってきた黒酢のドリンクも飲み干し、今度こそ娘は眠りにつきました。

今日は暴れませんでした。独り言も少なめです。期せずして多めに追加してしまった頓服の薬が効いたのかも知れません。そう思うと、やはり減薬の道は遠いと言わざるを得ません。難しいです。

ダイエットの効果ですが、今日も体重は減っていました。もしかすると食べさせる量を急に減らしすぎたせいで飢餓状態から不穏になってしまったのかも知れません。そのあたり、私も妻も、ちょっと反省しています。

いただいたサポートは娘との暮らしに使わせていただきます。ありがとうございます。